リリースされた時からちょっと気になっていたアンソロジー。
短編小説が5篇、短編マンガが4篇の変則形態で、テーマはもちろん「猫」。
この世には猫バカと呼ばれる人たちが多数存在するワケだが、もちろん
僕もその一人。街中で猫を見掛けたらもう黙ってられないし、猫を飼って
いる人の家に行けばどうにかして好かれようとする努力を怠らない。餌や
おもちゃで手なづけられるのであれば、その場で買い物に行くことすら全
く躊躇しない。にもかかわらず猫を飼わないのは、お別れに耐えられない
から。猫に関わらず、一生動物は飼えないだろうなぁ、と。
そんな猫バカなら間違い無く手を出しそうな本。
そして作家のチョイスもなかなかのラインナップなので、今回は目次を見
て読む順番をしっかり考慮してから読み始めてみた。
まず、4篇のマンガをざぁ〜っと流し読み。
失礼を承知で言えば、益田ミリ・ねこまき・北道正幸・ちっぴ の4名は
全く知らない漫画家であり、8ページ程度の短編で評価は出来ない。ただ、
どれもいわゆるほのぼの系の絵で、正直この画風は苦手(^^;)。他の作品
を読むことは無いと思うな、コレらは・・・。
そして小説。
町田康→小松エメル→蛭田亜紗子→有川浩→真梨幸子、という順番にて。
まず、町蔵こと町田康の作品は、実に彼らしい感じのシニカルなファンタ
ジー。昔イヤってほど聴いた町蔵の歌と殆ど変わらない世界観を保持し続
けているのが凄い。「INU」というバンドの人が猫について書いてる、と
いうのが面白いところ。
そして、小松エメルの作品は新撰組を題材とした時代小説風。この手の
小説は苦手なのだが、物語の流れが非常に良く、思ったよりもスッと入っ
て来たから不思議。ただ、アイテムとしての「猫」があまり重要でないモ
ノになってしまったのがちょっと残念。
蛭田亜紗子作品は短いながらもしっかりとしたヒューマンドラマ。こちら
はアイテムとしての「猫」が非常に重要な位置づけで機能しており、短い
ながらも考えさせられる内容。この人の他の作品、ちょっと読んでみたい
気がする。
で、このアンソロジーの目玉とも言える有川浩の作品は、「アンマーと僕
ら」のキャストによるスピンオフストーリー。アンマーは決して好きな作
品では無いのだが、この短編のストーリーの組み方は全く無駄が無く、下
手すれば本編よりも面白かったかも。最近新作の噂が全く聞かれないけど、
そろそろ動き出して欲しいなぁ、この人には。
意図的に最後に持ってきたのは、我が教祖こと真梨幸子の作品。
イヤミスの神様がどんな猫ストーリーを書くのか、かなり期待して読んだ
のだが、コレが期待を全く裏切らない真梨幸子ワールド。全体的に漂う気
怠い雰囲気はゾクゾクするし、意外性という部分でも満点に近い。後日談
を気にさせちゃうんだから、この人の実力を侮るべからず。満足です!
・・・取り敢えず、小説部分だけで判断すれば非常に良く出来たアンソロジー。
各作家のファンの人は、押さえておいて損は無いと思います。無論、猫好き
も是非!