かがみの孤城

▼かがみの孤城 / 辻村深月(Kindle版)

辻村深月作品で、2018年本屋大賞受賞作品
今や本好きには直木賞以上に価値がある、とされる本屋大賞に於いて、二次
投票の結果が2位にダブルスコア以上の大差。ならばまず読まねば!というこ
とで、電子書籍版を購入してみた。

共通の問題を持つ7人の中学生。ある日、彼ら・彼女らの部屋のが輝き始め、
そこに手をかざした途端、鏡の中に吸い込まれていく。くぐり抜けてみるとそ
こは城の中で、オオカミの面を被った少女・・・オオカミ様・・・が待っていた。
オオカミ様は彼らにある課題を出す。滞在時間は毎日9時〜17時、課題達成の
猶予は1年。あまりに不可思議な状況に戸惑いながらも、7人の中にが生まれ
て・・・という内容。

ジャンルで言うのなら、ファンタジーと言うより他無いのだが、この子たちの
ほぼ共通の問題というのが「不登校」、いわゆる引き籠もり。原因は様々だが、
行きたくても学校に行けない子たちの心模様があまりに切なく、故にファンタ
ジーというジャンルを軽く飛び越す。極上のヒューマン小説、という印象の強
い作品。

全ての場面の全ての台詞がとにかく心に突き刺ささり、随所で心がドラムを鳴
らす。途中、「イジメ」という絶対に無くならない「悪」について、深く考え
込んでしまい、ところどころで読書が止まってしまうほど。それでも約3日で
読破してしまうのだから、この作品の吸引力はやたら凄まじい、ということ。

もちろん、お得意のミステリー要素もあるのだが、その部分は前半でおおよそ
の状況が読めた。しかし、オーラスの部分はコチラの予想の一つ上を行くオチ
が用意されており、読了後は大いに唸った

こりゃあ、文句無く本屋大賞取るよな、と。
ファンタジー・ヒューマン・ミステリーの3要素が絶妙に絡み合い、物語とし
て見事に昇華する。正直、この作品が取らなきゃウソだな、とさえ思う。

しかし・・・。
ある種の・・・いや、ハッキリ言えば現在進行形で不登校の人たち、そしてイジメ
にあっている人たちは、問題が解決するまで読まない方が良い気がする。
登場人物たちには「友だち」が存在するが、下手すれば彼らは仲間理解者
不在を改めて認識し、絶望してしまうかもしれない。そこだけが本当に心配。
そんなことを思うのも、この作品が凄い、ということなのだろうけど・・・。