ナベちゃんのヨメ

▼ナベちゃんのヨメ / 辻村深月(Kindle版)

辻村深月シングルがもう一冊出ていたので、こちらもダウンロード。
Kindle SingleはだいたいUnlimited対象なので、こういう時に得した気分。
さてこの作品は、というと・・・。

「パッとしない子」同様、毒気の強いタイプの作品。
テイストは若干おとなしめで、読中感は「自分の非をやんわり窘められて
いる」感じ。しかし、読後に感じる居たたまれなさは全く同じなのが凄い。

友だちだと思っていた人が、ある日自然とそうではなくなる瞬間が、恐ろ
しいまでにリアルに描かれる。現実の人間関係もきっとコレと同じような
行程で起こるんだろうなぁ、と思うと、やっぱり少しやるせなくなる・・・。

自分でも気付いているのだが、僕には殆ど友だちが居ない。
今となってはその状態が実は非常に居心地が良いのだけど、数十年前は
さすがにその状況を自己嫌悪していた。もしあの時期にコレを読んでい
たら、ちょっと自殺したりしちゃったかも(^^;)。

この作家の人間観察眼は本当に恐ろしい。しかし、それがあるから辻村
深月は面白いんだ、と思う。でも、こういう系統の作品が彼女の中心軸
ではない、ということだけはちゃんと言っとかないと誤解を生みそう(^^;)。
従って、氏のダークサイドを味わいたい人にはオススメです!

MIX

▼MIX 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 / 内藤了(Kindle版)

内藤了藤堂比奈子シリーズ第八弾
前回のBACKでまたもややってくれやがった「続きは次回!」で敷いた伏線
を拾いまくる回、と予測して読書開始。それはまぁ予想通りで、前に感じた
モヤモヤはかなり晴れた。だけど・・・。

今回のキーワードは「人魚」
人魚には以前からそれなりに興味があり、ファンタジー系はもちろんのこと、
「その屍肉を食べると異常に長生きする」的なちょっとオカルトに寄ったも
のまで、あるとあらゆる物語を読んできた僕が、ハッキリこう言わせていた
だきます。
「これまで読んだ人魚モノで、いちばん醜悪で吐き気さえ催す内容」と。

もちろんこれは作品全体の出来についての感想では無い。逆に猟奇犯罪モノ
としての秀逸さは格段にレベルアップしているし、物語もキッチリアタマに
入ってくるすばらしい内容。しかし、これまで僕が人魚について持っていた
イメージが完全に覆されてしまうほど、悪意狂気に満ちた作品であること
も間違いない気がする。

藤堂比奈子シリーズはドラマ化もされているけど、少なくともこのエピソー
ドに関しては映像化は無理。さすがにお茶の間ドン引きしそうだから(^^;)。

ちょっとばかり読むのに覚悟の必要な作品かも。
万人にオススメは出来ないなぁ、さすがに。

パッとしない子

▼パッとしない子 / 辻村深月(Kindle版)

ちょうど読むべき本がなくなり、Kindleストアを徘徊していたら見つけた
辻村深月シングル。一遍の短編だけが収録されており、読書に費やした
時間はたった10分。しかし、これが恐ろしい10分だった。

ここからややネタバレ注意
主人公はある程度の経験を積んだ小学校の女性美術教師。若い頃の教え子
(正確にはそうでは無いらしいが)に今をときめくアイドルグループのメ
ンバーが。彼に創作の機会を与えたことを、ちょっとだけ自慢に思ってい
る、という、実にありがちな教師。そんな彼女の元に、母校訪問のテレビ
番組の収録に件のがやってきて・・・という内容。

「ツナグ」などで一瞬垣間見える辻村深月の「毒」の部分が大きくクロー
ズアップされる物語。文中から感じるのは「怖い」という感情よりも、ど
うしようもない居たたまれなさ。もし自分がこの教師の立場だったら、と
考えると、背筋どころか全身に冷たいモノが流れると思う。

この10分の何が怖いのかというと、自分も彼女と同じことを既にやってし
まっている可能性が高いこと。そして、彼女と同じ職業だった僕の両親が、
やっぱり同じことをしていたんじゃないか?と考えてしまうこと。

僕にとっては問題作。かなり凄い作品であることは諸手を挙げて認めるけ
ど、個人的には10分間喉元にナイフを突きつけられているようなモノ。
長編じゃなくて本当に良かったと思う。

ただ、この作品および同系統の作品を含めた短編集がもし出るというのな
ら、無意識のうちにお金を払ってしまうかも・・・。そういう意味でも恐ろし
いです、コレ。身内に教師が居る人は読まない方が賢明かな?

クジャクを愛した容疑者

▼クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係 / 大倉崇裕(Kindle版)

大倉崇裕・動物シリーズ第四弾
このシリーズ、今クールのフジテレビ・日曜ドラマ枠映像化されており、
おそらくそのオンエアに合わせてリリースされた単行本。もちろん、電子
書籍版も同時に発売!

お馴染みの元捜査一課鬼警部補・須藤総務課動物エキスパート・薄(う
すき)の「まるでイメクラ」(^^;)な凸凹コンビが今回相手にする動物は、
デスマッチアイテム・ピラニア、動物界のジュディ・オングことクジャク
そしてみんな大好きハリネズミの3種。さらに今回より2人の部下らしき
役割を担う珍キャラも登場。物語は更に緊迫していく・・・のだが!

まぁ今回も不可思議な駄洒落の飛び交う最高にファニーな展開。
物語が非常に高等秀逸ミステリーなだけに、そのギャップにクラクラ
するほど。だけど、コレがたまらないんだよなぁ、このシリーズ!

ドラマの方もなかなか良いレベル。なんなこの最新作からも一つくらい
採用して欲しいかも。ドラマを観て興味を持った人は、ぜひ原作もどーぞ。

首洗い滝

▼首洗い滝 よろず建物因縁帳 / 内藤了(Kindle版)

内藤了よろず建物因縁帳シリーズ第二弾
「鬼の蔵」と一緒に購入したのだけど、ちょっと間をおいて読んでみた。

主要キャラの役割がしっかりアタマに入った状態で読んだため、前作で感じ
とっちらかった感じが見事に解消。あまりに不気味な過去の因縁から現代
まで繋がる怪異の解説に淀みがなく、スッキリと物語に入って行ける。

そして前作よりも格段にオカルトのレベルが上がっており、薄ら寒くなるよ
うな描写が多々。このシリーズでようやく「内藤了を読んでいる!」と感じ
られた。藤堂比奈子シリーズ同様、次作が楽しみになってきた。

しかし、主人公の勤務する「広告代理店」というのは、どういう形態なのか
がちょっと気になる(^^;)。守備範囲はゼネコンに近い気がするのだけど、
規模の大きい代理店ならこんな業務もあるのかなぁ・・・。そうだとするのな
ら、ちょっと関わってみたい気がする。同業者はそのへんにも注目!