ONE PIECE magazine vol.1

▼ONE PIECE magazine vol.1

ワンピース20周年を記念し、3ヶ月連続3号出版される予定のムック
コンビニでよくみるような勝手考察系(それはそれで面白いのだが)では
無く、集英社がキッチリ編集したオフィシャルマガジンエンボス加工
表紙、付録の手配書など、まるで豪華本のような造り。

連載小説や著名人へのインタビュー、絵物語や原画など、読みどころ満載
なのだが、いちばんインパクトが強いのは尾田栄一郎自身の書き下ろしと
なるマンガ「Special Episode “Luff”」。物量はたった2ページ、見開きの
み。ただ・・・。愛好家ならこの2ページだけで大泣き出来るハズ。

そしてこの2ページを読んだら、エース右肩のタトゥーについて検索。
アレをずっと刺青失敗番長だと思っていた自分が情けない(^^;)。
とにかく読むべし!

神様の裏の顔

▼神様の裏の顔 / 藤崎翔 (Kindle版)

ちょっと前からKindleストアのリコメンドにやたら出てきた作品。
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作品で、作者の藤崎翔はなんと元芸人
コントのネタを書いてた人らしい。そういうバックボーンのある人は、
おおよそで面白い物語を書くのだけど・・・。

人格者の見本のような元教師が死んだ。
通夜の席は盛(?)況、誰もが涙し、悲しみは最高潮。葬儀屋が太鼓判を
押すほど完璧な葬式で、ある疑惑が持ち上がる。まるで「神様」のような
故人は、実はとんでもない犯罪者だったのではないか?・・・。容姿端麗な
2人の娘、元同僚の教師、教え子で子持ちの男性、近所の主婦、なんかギ
ャル、そして売れないお笑い芸人、といった参列者それぞれが疑念を持ち、
ひょんなことからそれらが一本の線に繋がって・・・という内容。

語り部が次々に変わり、それぞれが自分と故人の関係を思い返し、その中
で小さな綻びを発見することで物語が展開する、という仕組み。言ってし
まえば、典型的「実は何も起こらなかった」系の話と見せかけ、最後に
は驚愕の真実が明らかになる、という王道叙述トリック。そういう意味
ではトリックが若干稚拙で、ミステリーを数多く読んでいる人なら、割と
かんたんに謎が解けてしまうのではないか?という懸念あり。

しかし、ラストに至るまでの間に細々した仕掛け笑いが施され、定番と
解っていても全く退屈しない。コント師らしい言葉の選び方は非常に心地
よく、スピード感も充分。予想通り、読み応えはバッチリであった。

・・・なんで芸人として売れなかったんだろうなぁ、この人(^^;)。
ネタが見てみたかった気がするけど、どうやらそれは叶わぬ模様。なので、
取り敢えず他の作品を読んでみることにします。かなりオススメだ、コレ。

鬼の蔵

▼鬼の蔵 よろず建物因縁帳 / 内藤了(Kindle版)

猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズでお馴染みの内藤了作品。
どうやらこちらもシリーズモノで、現在2作品がリリースされている。藤堂
シリーズにはかなりハマった覚えがあるので、こちらも迷わず2冊とも購入
結構期待して読んだのだけど・・・。

内容はホラーと言うよりも、完全にオカルト
幼き頃に雑誌「ムー」「トワイライトゾーン」を愛読していた僕だから、
それなりに楽しめる世界観は間違いなくあるのだが、どうしたことかちょっ
取っつきづらい物語。後半に入ったところでようやく主要キャラの役割を
掴み、ラストでそれなりの満足感はあったものの、残念ながら藤堂シリーズ
のようにのめり込むことは出来なかった

つまらない、というワケでは決して無いし、キャラを理解した上でもう一度
読めばきっと違った感想が出てくるとは思うのだが、内藤了はもう少しだけ
リアリティスピード感のある作品の方が良いかも。おそらく続編ではその
部分が改善されてると思うので、そちらに期待。なんつったって既に購入し
ちゃってるので(^^;)。

後悔病棟

▼後悔病棟 / 垣谷美雨(Kindle版)

久しぶりに垣谷美雨作品。
末期癌患者を担当する女医早坂ルミ子・33歳独身。周囲の評判は「患者
の気持ちがわからない女医」。空気が読めず、さらに言葉の追い込みが足り
ていないため、まもなく人生を終える患者にとんでもない一言を放ってしま
う、という致命的なクセに悩んでいる。ところがある日、ルミ子は病院の中
庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を使うと、何故か患者の心の“後悔”
が聞こえてきて・・・という内容。

芸能界デビュー出来なかったことを後悔する大女優の娘や、結婚に反対した
ため行かず後家となった娘を持つ母、中学生の頃の罪を友人一人に押しつけ
てしまった男など、そりゃあ人生に「悔い」あるよなぁ、という末期癌患者
が多々登場。ルミ子の聴診器の機能で人生のやり直しを試みるものの、違う
道も決して平坦ではない、ということを皆一様に思い知る、という、かなり
骨太なファンタジー。いやぁ、好きだな、こういうの。

物語の特性上、登場人物は次々に死んで行くし、ドロドロな人間関係も随所
で垣間見える。しかし、読後感は驚くほどさわやかで、「隣の芝生は青い」
とか、「後悔先に立たず」などのが妙にしっくり来る。垣谷美雨はこれま
で何作か読んでいるのだけど、満足度はこれまででいちばん高い。

全体的な完成度はすばらしく、読み応えは充分なのだけど、「もうすぐ死ぬ
自分に対して金の話しかしない妻を持つ男」のエピソードだけはちょっと
が痛くなった(^^;)。あの状況のまま死んだら怨念しか残らねぇな、きっと。

ということで、この作品だけは、登場人物を自分に置き換えるのは止めとい
た方がいいかも。ストレス病気になっちゃうかもしれないので。

増山超能力師大戦争

▼増山超能力師大戦争 / 誉田哲也(Kindle版)

誉田哲也増山超能力師シリーズ第二弾
第一弾を読んだのが2013年だから、実に4年振りの新作。その時のレビュ
ーを読み返すと、「今後に含みを残した・・・」的な記述があったりしたのだ
が、その伏線は完璧に忘れてました(^^;)。さすがに4年空いちゃうとねぇ・・・。

しかし、初作はファンタジックコメディという印象だったのだけど、今作
はソレとは比べものにならないくらい重い展開。体裁も連作短編では無く、
長編の形式で進むため、ファニーな描写も単純に楽しめなくなっているの
がやや。ただ・・・。

読後感は氏の姫川シリーズジウシリーズを読了した後に酷似。
楽しげな台詞回しに加え、「超能力」という破天荒なネタを扱ったファン
タジーである筈なのに、妙なリアリティが全編に漂う。意図的に最後まで
ハッキリさせなかった黒幕の正体があまりに恐ろしく、最後には思わず
震いしてしまった程。

このシリーズ、もしかしたら僕の思っていたモノとは違う展開で、氏の
代表作になっていく可能性アリ。読み応えはタップリでした!

しかし、だ(^^;)。
TVドラマ版で主役の増山を演じたのがココリコ・田中直樹。彼の印象が
思ったより強かったので、今回は増山=田中のイメージで読んでしまった
のだが、今後ハードボイルド化した場合はやや厳しいかも。いや、田中の
ハードボイルドってのもアリなのかなぁ??