屍人荘の殺人

▼屍人荘の殺人 / 今村昌弘(Kindle版)

何故だか毎年購入している宝島社「このミステリーがすごい!」
愛称「このミス」2018年度版で、国内作品1位を獲得した新人作家作品
作者の今村昌弘はこの作品でこのミス1位だけでなく、第27回鮎川哲也賞
週刊文春ミステリーベスト第1位を受賞。いわゆる三冠王である。

・・・と言いながら、実はそれほど期待せずに読み始めた。
というのも、歴代のこのミス1位作品はおおよそ読んでいるのだけど、ハマ
るモノとそうでないモノの落差が激しかった所為。まぁ、面白かったら儲け
もの、という感覚にて。

いわゆるネタバレがあると致命傷になる作品なので詳しい説明は敢えて省く
が、ざっくり言うと「本格的な密室ミステリと超B級ホラーの融合」。ちょ
っと間違えるととんでもない内容になりそうな、非常に危険なコラボレーシ
ョンなのだが・・・。

その部分はなかなか見事にまとまっている。ミステリー好きには邪魔になり
そうなホラー要素が、邪魔どころか事件を展開させる重要なアイテムと化し
ているのだから、構成力・筆力はかなりのレベル。しかし・・・。

・・・結果として「つまらなくは無い」(^^;)。
いや、どちらかと言えばかなり面白い内容だとは思うのだけど、肝心の
「密室」の設定がちょっと解り辛いのが難点。綾辻行人作品のように、最初
にしっかりした現場の見取り図こそ付いているが、何かが起こる度にアレ
見返すのは非常に辛い。これは作者の所為では無く、単にKindle版を選んで
しまった僕のミステイク通常の書籍だったら、こういう感想では無かった
かもしれない。

しかし、重要と思われる登場人物があっさり死んだり、思いもよらないトリ
ックで実行される殺人など、評価すべき部分も多々。特にクライマックス
盛り上がりは尋常では無く、後半になればなるほど読む手が止まらない。
今村昌弘、今後が非常に楽しみ。

ちなみにこのミス2018の中には、他にもちょっと興味のある作品が。
やっぱり便利なんだよなぁ、あのムックって・・・。

クリスマスを探偵と

▼クリスマスを探偵と / 伊坂幸太郎&マヌエーレ・フィオール

伊坂幸太郎著作としては初となる「絵本」
小説自体は2010年企画本にて発表されており、Kindleシングルでもリリ
ースされている有名な短編。何故に有名なのかというと、この作品が実質
伊坂幸太郎の初作品であるから。

というわけで、レベルの高いファンタジーであることは最初から知ってい
たのだが、これに差し込まれているマヌエーレ・フィオールイラスト
すばらしい。誤解を恐れずに言うのなら、タッチはゲームのレイトン教授
+寺田克也の良いとこ取り、といった雰囲気。初作から“らしさ”を醸し出
している伊坂幸太郎の文章と絶妙すぎるマッチング。完成度は異様に高い、
と思う。

ただ、問題なのは対象年齢・・・かなぁ(^^;)。
体裁は絵本だしすごく素敵なストーリーだから、子どもたちに是非読んで
欲しい!・・・と言いたいところだが、物語の入り口がちょっとアダルト過ぎ
(^^;)かもしれない。個人的にはR-10かなぁ・・・。

なのでこの絵本、小学校4年生になったら読むべし!
当然オトナの人たち、特に伊坂フリークの皆様は必読にして必携です。
・・・クリスマスにレビューすれば良かったな、コレ(^^;)。

アナログ

▼アナログ / ビートたけし(Kindle版)

発売当初から話題になり、年内に絶対読もうと思っていたビートたけし
書き下ろし小説。な、なんと、純愛路線恋愛小説だったりするから凄い。

インテリアデザイナーの青年が、行きつけの喫茶店で知り合った謎多き女性
に恋をする話。二人は強烈に惹かれ合っているにもかかわらず、名前以外の
お互いのパーソナル情報(メールアドレス、電話番号、LINEのID、そして名
字まで)を全く知らない。いや、敢えて知ろうとしない。毎週木曜日の夕方
に、この店に来れば会える・・・だけを頼りにしたなんとも頼りない恋愛模様
しかしデジタル全盛のこの時代に、あまりにアナログな関係は、逆にしっか
りとしたを作っていく・・・。

・・・なんともまぁ、気恥ずかしいくらいの恋愛小説(^^;)。
普段の僕なら絶対に手を出さないし、読んだとしても途中で止める可能性は
低くないジャンルの読み物なのだが、コレをたけし大先生が書いた、という
事実があまりに面白い

この作品、男女の間柄だけではなく、男同士の友情会社内の人間関係など
もある程度深く掘り下げられているのも凄い。破天荒で波瀾万丈な人生を歩
んで来た筈のたけしさんが、いわゆる市井の人間の内面を(おそらく)想像
だけで書いたモノに鋭く共感してしまうのだから、やっぱり天才。改めてそ
の才能に舌を巻いてしまった。

おそらく、どの世代の男女が読んでもそれなりにグッとくると思う。
こういう人が東京五輪のプロデューサーをやってくれればいいのになぁ・・・。

アマゾン大全2018

▼アマゾン大全2018

コンビニの雑誌棚で見掛け、思わず購入してしまったMOOK
Amazonで評判の良い商品を555種類集め、徹底的にレビュー。カテゴリーは
家電&デジタル・ホーム&キッチン・日用品・ビジネス&トラベル・アウトド
ア&カーグッズの5つに別れ、それぞれに絶妙「ちょっと気になるモノ」
多数掲載されている。

ハッキリと、楽しい(^^;)。
今や完全にAmazon依存症になっている僕には、まるで指南書のような内容。
特に家電&デジタルの分野にはパーソナルDJとか防水スピーカーとか、もう
意味無く欲しくなるものがいくつか発見出来ちゃうんだから凄い。

・・・しかしこの本、絶対に電子書籍には向かない(^^;)。
わりと厚めの束で、パラパラめくっているからこそヘンなモノとの出会いが
ある。さすがにiPadとかで読んでたら、そういう風にはならない気がする。

まぁとにかく、暇つぶしには最適。
特に普段の買い物の殆どをAmazonで済ませてしまう僕のような輩に対して
はちょっとした実用書。オススメです、コレ。で、気になったのは↓↓です!

 

花のさくら通り

▼花のさくら通り / 荻原浩(Kindle版)

萩原浩・ユニバーサル広告社シリーズ第三弾
前回、ヤクザ(がクライアント)仕事をなんとか振り切った零細広告制作
プロダクションユニバーサル広告社だが、秋葉原に事務所を維持すること
が困難となり、一応都内だけど過疎化すら感じられる“さくら通り商店街”
都落ち。家賃は安いが、条件はなんと「住み込み」引っ越しまで余儀なく
されたコピーライター杉山だが、ひょんなことから大家和菓子店3代目
から“さくら祭り”チラシ製作を依頼される。クライアントは同商店会だが、
そこは一癖も二癖もある頑固な爺たちが仕切る閉ざされまくった世界
これをなんとか打破しよう、と、ユニバーサルの個性豊かな面々が意地で
奮闘する・・・という感じ。

いやぁ、いいわ、コレ。
これまで読んだシリーズ3作の中では、とにかくピカイチの内容。
登場人物の悪役→善玉転向への流れ、いわゆるベビーターンの連続が妙に
心地よい。加えて「商店街のシャッター通り化」という問題は都下に限ら
ずどの地方でも悩ましい議題であるが故に、何故だか他人事だと思えない
おかげでリアリティは非常に高く、感じたままを言うのなら“手に汗握る”
展開。クライマックスの会議が決する場面では、思わず快哉を叫んでしま
った。

そして、この作品の舞台とやたら系統の似ている街で、これまた似たよう
な仕事(レベルは更に数段低いけど^^;)に従事する僕としては、個人的
共感度が半端ない高さ。途中から応援団(^^;)になってたかもしれない。

もちろん最後はハッピーエンド。同じような世界で仕事をしている僕から
すると、この部分にリアリティは一切感じない(^^;)のだが、まぁ、ソレは
ソレで良いのかも。非常に清涼感に溢れたお仕事物語だと思います。

年末にこのシリーズを読めて本当に良かった、と心から。
来年は頑張るぞ、オレも!