吉田豪の”最狂”全女伝説

#理に叶う理不尽


吉田豪の”最狂”全女伝説 / 吉田豪(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著者はプロインタビュアー&プロ書評家吉田豪
“トチ狂った団体”として世界でも有名な『全日本女子プロレス』関係者
総勢18名へのインタビューが掲載された作品。2017年発行のモノで、
当時から「いつかは読もう!」と思っていたが、なかなか機会は訪れず。
コレがUnlimitedとなったので、ようやく読んでみた次第。

このインタビュー集に登場する関係者は以下。
ブル中野、長与千種、ダンプ松本、マキ上田、神取忍、赤城マリ子、
クレーン・ユウ、立野記代、ナンシー久美、大森ゆかり、ロッシー小川、
井上京子、影かほる、志生野温夫、堀田祐美子、ボブ矢沢、ミミ萩原、
そして松永高司

おもしろいのはこの中にジャガー横田ライオネス飛鳥デビル雅美
アジャ・コング、そして何よりも北斗晶がラインナップされていない、
という事実。これは間違い無く意図的であり、読み終わってみるとその
人選がベストだ、ということが解る。何故ならば・・・。

・・・いやもう、クソヤバい(^^;)。
ヤバいのは『全日本女子プロレス』というプロレス団体ではなく、
『全日本女子プロレス興業株式会社』という企業体質。いや、企業と
表現するのもちょっとアレ(^^;)で、現在のコンプライアンスに当ては
めたら、存在すら許されないであろう極ブラック(^^;)な集団。
まぁ、ファンなら全女がそういうモノである、ということは知っている
のだが、ソレを改めて思い知らされるのは結構な快感(^^;)だった。

おそらくこの本で、吉田豪の表現したかった部分はこのクソヤバさかと。
だとするならソレは大成功、結果的に女子プロレス書籍史上でも圧倒的
におもしろい作品となっている。

皆にオススメ!・・・したいのだけど、ちょっとカルトすぎる(^^;)かな?
あ、新興宗教の本では無いので念の為(^^;)。

あいつらの末路

#高級限界集落


あいつらの末路 / 真梨幸子(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


真梨幸子
新作。とは言いつつ、今年の1月にリリースされた作品で、あ
まりタイムリーでは無かった。最近、書籍関連のリリース見逃しちゃう
なぁ、どうしてだか(^^;)。

バブル期“ギリギリ通勤圏内”の場所に造成された一戸建て中心のニュー
タウン「ハワーズの丘」を舞台に繰り広げられるミステリー。主役を張る
のは3名アラフィフ女性で、それぞれ全盛期を過ぎた小説家フリー編
集者web雑誌のやとわれ編集長、という絶妙(^^;)なキャスティング
もちろん、この3名が相互作用しながらドロドロの人間ドラマを構築する。

さてタイトルから来る印象は「完璧なイヤミス」。しかし、読んでみると
イヤミスな部分はそれ程でもなく、どちらかと言えば叙述トリックがメイ
ンのわりと本格的なミステリー。まぁ、幸子サマの作品なので、どうして
その部分を期待してしまうのだが、僕を始めとする同好の輩からすると
ちょっとだけ肩透かし感はあるのかも。とはいえ、個人的には見事な伏線
回収の様を楽しませていただけました!

この作品は読後おもしろいモノを発見した。
機会があればこの作品のAmazonレビューをご一読いただきたいのだが、
その中の一篇にやたら否定的なモノが。まだイヤミスという概念が定着す
る前の真梨幸子作品では、この手のレビューが多々あったのだが、最近は
減少傾向で寂しい限り。他の作家なら話は別だが、真梨幸子作品に関して
狙い通りな感があって凄く腑に落ちる感。やっぱりハマっちゃってるん
だよなぁ、幸子サマには(^^;)。

そういう理由でこのレビューには好意的なのだが、作家本人がかなりボカ
している“モデルになった実在するニュータウン”について、しっかり名称
まで書いてしまうのはいかがなモノかと。
イヤミス愛好家としては、暗黙の了解だけは守ろう、これからも(^^;)。

10.9

#ドームを押さえろ!


10.9 プロレスのいちばん熱い日 / 瑞佐富郎(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

随分久しぶりにレビューする「愛のプロレス作家」こと瑞佐富郎作品。
コチラでのログを確認すると、5年前のさよなら、プロレスが最後な
のだが、実際はこの5年で瑞氏の著作を数冊読んでいる。レビューが無い
理由は・・・まぁ、察してください。いや、けして悪い意味では無いので、
その辺りは誤解の無いように・・・。

1995年10月9日東京ドームで行われた『新日本プロレスvsUWFインタ
ーナショナル全面戦争』。この真に“伝説”興行に関するあらゆる要素を、
様々な角度から深掘りし尽くしたノンフィクション

相変わらず瑞氏の分析・考察は凄まじく、時代背景からこのイベントが実
現した経緯、そして今に至るまでの影響など、重要な事象を完全に網羅
いわゆるケーフェイに触れている部分もあるのだが、瑞氏のリスペクタ
ブルな文体はソレすら「イヤなモノ」と感じさせない。このある種特殊
な才能は、瑞佐富郎独自のモノ。さすが、である。

当然、僕もこの日の東京ドームの観客席に居た。
試合内容はもちろんのこと、会場全体を包んでいた異様な空気と高揚感、
そして何よりも「本当に」立錐の余地も無いくらいの人・人・人・・・。
東京ドームがリアルに超満員になった様子を、僕は2度観ているのだが、
その1度目がこの日。試合前・試合中・試合後の全てで、観客全員が完全
に出来上がっている、という現象は、一生のうち一度あるか無いか。
そこに参加していた事実を幸福だと思うと共に、その時の感覚をリアル
に思い出させてくれたこの作品に、心から感謝したい。

天心と武尊が雌雄を決したTHE MATCH棚橋弘至引退興行、そしてつい
この前の井上vs中谷は、同じ景色だったのかな?確認しておけば良かっ
たのかなぁ・・・。

52ヘルツのクジラたち

#52Hz Whale


52ヘルツのクジラたち / 町田そのこ(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年本屋大賞を受賞した町田そのこ出世作
未だ昨日のことのように感じる(^^;)のだが、今年の1月の緊急入院時、まと
めて購入した電子書籍の中の1冊。言ってしまえば「読み忘れ」。どうして
コレだけ忘れていたのか、全く原因が解らないのだが・・・。

もの凄くザックリ言うと「虐待」、そしてそこから立ち直る人たち物語
ハッピーエンドにこそなっているが、正直内容はやたら重く、読むのがかな
苦痛な部分も多々ある。しかし、文体に良い意味での軽妙さがあり、その
重さが丁度良く緩和。当然、虐待に関する描写がメインとなるのだが、スパ
イスとしてトランスジェンダー認知症などの近年型社会問題がさりげなく
入っているところが凄まじい。そんな最悪とも言える状況の中で「確かな友
情」もしっかり表現。緩急の付け方は満点、と言って良い。

そして、印象的なタイトルがしっかりと伏線になっており、かなり意外な形
回収されるのも見事。初めての町田そのこ作品だが、「読ませる」技術
長けた作家であるのは間違い無い。そりゃあ本屋大賞取るよな、と素直に感
じた。

もしこの作品を読んで感じるところがあれば、今もどこかで実在する「世界
でもっとも孤独な鯨」を聴いてみることをお勧めする。
機会があれば他の作品も読んでみたいなぁ、この作家さんは。

汚れた手をそこで拭かない

#ヒューマンミステリー


汚れた手をそこで拭かない / 芦沢央(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Kindle Unlimited
を徘徊中に発見した、僕にとって久々の芦沢央作品。
5篇からなる短編集であり、第164回(2021年)の直木賞を惜しくも次点
逃した作品。傑作ミステリーとして評判だったのだが・・・。

・・・なるほど、確かにミステリー
短編ながらしっかり伏線が貼られ、ソレがキッチリ回収される、というちゃん
としたミステリーなのだが、読後感ヒューマン系のソレ。各篇全てがリアリ
ティ満点のエピソードであり、この作品の中で起こる全ては自分にも起こりう
ること、と余裕で錯覚。自分がそうなってしまった時のシミュレーションまで
初めてしまうのだから凄い。

特にシンクロ率が高かったのが3篇目の「忘却」
人生の晩年期に差し掛かった老夫婦の物語だが、ここで起こった事件があまり
にも恐ろしい。もし自分がコレをやってしまったら、と考えると、胸が潰れそ
うになるくらい苦しくなるし、耐えられる気がしない。そこまで人の心をコン
トロールした上で、しっかり意外なオチを付けてくる。これはもう、「傑作」
というレベルに達している気がする。

これまでも見事な叙述トリックを楽しませてくれた芦沢央だが、ここでまた
新たな『魅せ方』を持ってくるところが非常にニクい風変わりなミステリ
を探している人がいれば、もう是非に。またハマりそうだな、この作家。