護られなかった者たちへ

▼護られなかった者たちへ / 中山七里(Kindle版)

続けて中山七里作品。
この作家の作品、わりと良いペースで読んでいる筈なのだけど、まだまだ読
んでない作品多々。そんな中から、かなり新しめの作品をチョイスしてみた。

今回のキーワードは「生活保護」。最近では複数の芸人の身内不正受給
していたことで話題になった社会保障の一つで、この作品にも一瞬そのネタ
が登場する。だからと言って、笑うに笑えない。そういう種類の本である。

・・・この作品で描かれているような事態が今現在の日本の生活保護の実態だと
するのなら、もう本当にやり切れない。中山七里が想像だけで作品を構築す
るタイプの作家だとは思えないし、このネタを作品にする、ということは、
おそらく綿密な取材の上に成り立っているモノな気がする。だとするならば、
今の日本の何を信頼すればいいのか? そういうことを随時考えてしまうくら
いの問題提起作であることは間違い無い。

久しぶりに、本を読んであまりのやるせなさ涙した。フィクションとは言
え、こんなワケの解らない不幸はやっぱり許せない。ここまで犯人に肩入れ
して読んだミステリー、最近では無かった。

そして、この作品では中山七里の「どんでん返しの帝王」たる由縁が顕著。
終わってみればスッキリ納得出来るのだが、読んでいる途中では全く予想出
来ない結末を思いつくところがただただ凄い。

いわゆる「役人」。特に根性まで役人に染まってしまうような浅い連中には、
必ず読め、と過激に強制したくなる。役人が100人居たとして、その100人
を悪人と言う気は無いが、とにかく役人を攻撃したくなる。役人でなくとも、
暴力衝動を抑えられる人は読んでみて欲しい。是非。

月光のスティグマ

▼月光のスティグマ / 中山七里(Kindle版)

中山七里の作品は、読み始めるとハマりそうなドビュッシーシリーズを除い
あらかた読破したのだが、それでも残している作品がいくつかはある。
参考にするのはAmazon★の数で、評価が高いモノから読んでいたのだが、
何故かたまには「評判の良くない作品」に手を出してみよう、という気に。
で、チョイスしたのがコレなワケだが・・・。

・・・いや、普通に面白いですよ、コレ(^^;)。
確かに「帝王」とまで称される終盤のどんでん返しに関してはいつもより
い足りない感こそあるものの、スピード感の溢れる心情描写はやっぱりスリ
リング。ネタになっている2つの震災は実際に起こったモノで、その辺りは
多少心に引っかかるモノがあるのだが、決してソレを無駄にせず、キッチリ
したドラマを構築してくるのはさすが。

そして、かなりビックリしたのがいわゆる「濡れ場」の生々しさ。
ちょっとした官能小説よりもリアル淫靡なのは、元々この作家が持ってい
た資質なのだろうか? 少なくとも僕は初めてだったので、少々面食らいなが
ドキドキした(^^;)。他にもあるのかなぁ、こういうの。

結局、「人の評価」というのはつまり「他人の評価」
レビューに振り回されるのは良くないな、やっぱり(^^;)。

4ページミステリー

▼4ページミステリー / 蒼井上鷹

「出られない5人」が面白かったので、蒼井上鷹の他作品をあたったところ、
まぁ面白そうなタイトルの作品が目白押し。ミステリーユーモアも両方好
きな僕としては、選び甲斐のあるラインナップ。しかし、何故かチョイスし
たのがこの作品「4ページミステリー」だった(^^;)。

双葉社の雑誌「小説推理」の人気連載「2000字ミステリー」を集めたモノ。
1篇4ページ相当のミステリーが、なんと60篇も掲載されているから、そうい
う意味でのお得感(^^;)はあると思う。が、いわゆる長編にすっかり慣れた身
としてはさすがにちょっと食い足りない感は否めず。途中で投げ出しちゃう
のかなぁ、とか思っていたのだが・・・。

夢中にこそならないものの、約1週間の間コンスタントに読み続けられちゃっ
のだから不思議。1篇が4ページだから非常にキリが良く、移動中のちょっ
とした時間に1篇読む、というスタイルの読書はなかなか新鮮だった。

・・・ まぁ内容的に無理のあるトリックもあったが、概ね満足出来る内容。
なんならちょっとマネして2000字の短編を書いてみようか、という意欲まで
沸いた。無論、意欲だけで実際に書いてはいないのだが(^^;)。

ちなみにコレ、続編も発売中。取り敢えず何か1作読んだら、引き続き移動の
お供に電子書籍で持っておくのも良いかと思われます。忙しい人にオススメ!

魔力の胎動

▼魔力の胎動 / 東野圭吾

東野圭吾の新作は、間もなく映画が公開される「ラプラスの魔女」前日単
なるエピソードを集めたモノ。これ以上無いタイミングで発売(^^;)。

全5篇からなる連作短編集
ニューカマーの鍼灸師工藤ナユタが語り部となり、「魔女」こと羽原円華
と共に彼の周囲の人物・・・顧客のアスリートやクリエイター、友人、恩師・・・
たちに巻き起こる事件を解決して行く物語。もちろん各篇ごとに事件はしっか
り終結するのだが、全体にキッチリと一本のが通っており、読後はまるで長
編を読み終わったかのような満足度。さすがです、やっぱり。

ただ、ラプラスを読んだのはもう3年前で、内容もハッキリ覚えていない(^^;)。
これ幸いとばかりに、新鮮な気持ちで映画を観ようと思っていたのだが、この
本、正直逆効果(^^;)。結局ガマン出来ずに本棚からラプラスを引っ張り出して
来ることになっちゃったのだから、ラプラス所持者はそこらへん注意(^^;)。
・・・映画の楽しみ減りそうだなぁ、マジで(^^;)。

出られない五人

▼出られない五人 / 蒼井上鷹

有隣堂ヨドバシアキバ店小説コーナーで見つけた作品。
ちなみにこのお店、煽りのPOPが本当に秀逸。POP効果で購入した本が何冊
あるか解らない程(^^;)。金額にして5万以上は軽く行ってる気が・・・。

失礼ながら蒼井上鷹という作家の名前に全く覚えが無く、初めてのつもりで
読み始めたのだが、ちょっと読んだだけで妙な既視感が。文体に非常に覚え
があり、読了前に調べてみたら、ずいぶん前に読んだことのある著作を発見。
そうか、「キリング・タイム」のあの人なのか、と妙に納得した(^^;)。

内容は・・・。
ある作家が急逝し、その作家の馴染みだったバー建物の老朽化閉店する
ことに。これを受けてネット上で募集された「店の跡地での追悼オフ会」
初対面の5人が参加。マニアックで楽しい会の筈だったのに、死体やら侵入者
やらのアクシデント続出。にも関わらず、誰も地下にあるバーの跡地から
ようとしない。いったい何故?・・・という感じ。

密室ミステリーであるのは間違い無いのだが、まぁ・・・爆笑系の作品(^^;)。
登場人物の名前の付け方から、彼ら・彼女らの置かれた状況などに至るまで、
細部にクスっとさせてくれる状況を構築し、笑わせながら話を展開させて行
く。まんまと爆笑しながらも話は随所で意外な方向に向い、最終的には見事
なオチがつく、という鮮やかな構成。いやぁ、見事だと思います、ええ。

雰囲気的には、東川篤哉をさらにブラックにした感じ、と言えば適当かな?
ニヤニヤしながらミステリーを楽しみたい人、ぜひどうぞ!