クーデター

#新日本プロレス #金曜夜8時 #ゴールデンタイム


▼クーデター 80年代新日本プロレス秘史  /大塚直樹

最近読み漁っている80〜90年代プロレス検証本
今回の作品は新日本プロレス団体的にも世間的にもいちばん元気だった時代に
営業本部長を務め、その後に長州・マサ斉藤らの維新軍を大量に引き抜いた上に
「ジャパンプロレス」を設立し、全日本プロレスと提携する、という離れ業をや
ってのけた辣腕フロント大塚直樹氏の作品。

かつて少年ファンとして新日本の会場に足を運んでいた僕にとって、大塚さんは
「新日本のやたら怖いオジさん」として印象に残っていた人。昭和後期の新日本
はどの会場も連日満員を記録したのだが、その頃に精力的にチケットを売ってい
たのが大塚さん率いる営業部。この本を読むと大塚さんはあの頃まだ20台だった
らしいのだが、失礼ながらそうは見えない程の貫禄迫力があった。

そんな大塚さんが、当時付けていた日記を元に振り返る80年代のプロレス界。
この手の本をいささか読みすぎており、正直あまり期待していなかったのだけど、
まさかここまでのめり込むとは思わなかった。とにかく動いた「カネ」の話があ
まりにリアルだし、関わった選手・関係者の心の揺れ様の書き方も見事。ノンフ
ィクションとして非常に秀逸、と評価する。

大塚直樹という人、最終的には失敗しているハズの維新軍クーデターでも、各所
不義理をしているワケでもなく、大損しているワケでもない。よ〜く考えてみ
ると、そんな関係者はこの人しか居ない気がする。

ゴールデンタイムの新日本で育った世代なら、間違い無く興味深く読めるハズ。
プロレスにどっぷり浸かりながら、破滅しなかった偉人のご高説は、プロレスフ
ァンなら読んでおくべき。面白かった!

ノーサイド・ゲーム

#ラグビーワールドカップ #TBS日9


▼ノーサイド・ゲーム / 池井戸潤(Kindle版)

池井戸潤の新作。
大手自動車メーカー経営戦略室のエースとして活躍していた男が、企業買収を
巡り役員と対立し左遷。異動先の工場にて同社の“お荷物”とされるラグビー部の
ゼネラルマネージャーを押しつけられる。観客動員は悪く、経費は膨大。彼は
営の
プロフェッショナルとして、この部をあらゆる面で建て直していく、という
お話。

パッとみると氏の同種の傑作「ルーズベルト・ゲーム」と似たような作品な気が
するが、モチーフが野球ではなくラグビーな分、一般の人は少し感情移入がし辛
い可能性あり(^^;)。ただし、展開はかなりスピーディー。おかげで解らない世界
でもそれなりにノリに付いて行けちゃうところが凄い。

そして、池井戸潤のビジネス小説ではお馴染みの勧善懲悪とスカッとした爽快感
ももちろん健在。思った通り夢中になり、たった半日ほどで全てを読み切ってし
まった。これはもう、さすがと言うしかない。

・・・洋ちゃん、コレかなり重要な仕事だよ、と。
この作品、TBS日曜9時枠でのドラマ化が決まっており、主演は我らが大泉洋
あの枠での池井戸作品は正しく鉄板であり、高視聴率は間違い無い。問題無いと
は思うけど、コケないように頑張って欲しい。

そういえば9月にはラグビーワールドカップが我が国で行われるのだが、今現
在でなんの話題にもなっていない感アリ。この作品はビジネス小説ファンを、そ
してドラマは一般層「ラグビー」の世界に連れて来るハズ。全く盛り上がって
いないラグビーW杯だが、この作品が最強のPRツールになる気がする。

日本ラグビーフットボール協会大手広告代理店は池井戸潤に感謝すべき。
・・・もしコレが代理店の仕掛けだとしたら、かなり見直すんだけどなぁ(^^;)。

5分で読める! 怖いはなし

#ショートショート #恐怖


▼5分で読める! 怖いはなし / V.A

Amazonで“真梨幸子”ないしは“柚月裕子”、もしかしたら“中山七里”で検索を
かけた時に引っかかったアンソロジー。上記の3人に加え、井上雅彦・倉狩聡
・岩井志麻子・小路幸也・戸梶圭太・林由美子・平山夢明全10名が参加した
作品。この人選なら間違い無し、ということで購入してみた。

いわゆる「ショートショート」に分類される作品集で、合計26篇
どの作家も独特な世界観があり、手法や内容は様々なのだが、統一されている
のは「恐怖」ホラー・オカルト的な話が多いが、日常生活上の恐怖を題材に
した作品も。タイトル通りどれも5分もあれば読めるので、ちょっとした移動時
などに最適。

印象に残ったのはやっぱり真梨幸子作品。この本では連作となる2作が読める
のだが、どちらもまぁ、相変わらず悪意の香りがプンプン漂う快作。短い中で
もしっかりとミスリードを誘ってくる構成も秀逸で、読み終わりで盛大にニヤ
ニヤさせていただいた。

そして、意外だったのはエッセイ的な文体で攻める岩井志麻子の作品。
ノンフィクションなのかフィクションなのか、今も釈然としないのだが、淡々
とした文章の中になんとも言えない薄気味悪さが漂ってるところが凄い。テレ
ビで見る限りはかなりいっちゃってるオバさん(^^;)なのだが、この人もまた
大作家の一人である、ということを改めて認識させて貰った。

非常に良い本なのだが、こういうのこそ出来れば電子書籍で読みたいところ。
宝島さん、なんとかしてくれないかなぁ・・・。

証言 長州力

#ど真ん中 #目ん玉飛び出るストロングスタイル #WJ


▼証言 長州力「革命戦士」の虚と実 / V.A

宝島「証言」シリーズの最新作は、予想通り長州力
何度も書いているように、僕はもう心の底から長州がキライ(^^;)なのだ
が、この手の本が出ると思わず手を延ばしてしまう。要は、長州に対する
「悪口」が読みたい、という感じ。

他の証言シリーズと同じく、19名ものプロレスラーや関係者が長州を語
っているのだが、まぁ出てくること出てくること(^^;)。特に谷津嘉章や
キラー・カーンといったジャパンプロレス関係者WJに関わってしまっ
た人たちの談話が面白く、失礼を承知で言うのなら実にニヤニヤしながら
読めた。ただ、非常に意外なことに「長州も大変だったんだろうなぁ・・・」
と思ってしまったのが本当に不思議。

しかし、この本を読んで気付いたのは、もしかすると長州よりも断罪され
るべき人間がいる、ということ。そう、地獄のアングルこと永島勝司氏。
WJ旗揚げ前から借金をしていた、というのは初耳であり、この段階でソ
レを一銭も返していない、という談話には正直驚いた。この人にはまだま
ネタがありそうな気がする。

こうなってくると次に読みたいのは「証言 WJ」かなぁ(^^;)。
僕の中では今のところ世界で一番小っ恥ずかしい団体であるWJを、証言
シリーズの切り口で一冊にしてくれたら、また違った事実が見えるかも。

長州関連の書籍の中ではいちばん面白かった。
GKの逆襲にも大いに期待しています!

罪の声

#グリコ・森永事件 #たべたらしぬで


▼罪の声 / 塩田武士(Kindle版)

「騙し絵の牙」で唸りまくった塩田武士だが、ようやく個人的に2冊目となる
作品にチャレンジ。これがまた、とんでもなく読み応え抜群の逸品だった。

モチーフは今から35年前の1984年に起こった「グリコ・森永事件」
この作品はコレを「ギン萬事件」という架空の事件に置き換え、在阪の新聞社
が発生から30年後特集記事としてこの事件を掘り起こす、という設定。
この特集に何故か抜擢された畑違いの文化部記者と、当時各マスコミに送りつ
けられた脅迫テープの声の主「自分」だと気付いた2人の男が主人公。両者
が独自のルートで真相に迫り、やがて融合する・・・という内容。

もちろんこちらはフィクションであり、会社名や団体名は完全に変えてあるの
だが、話題になった脅迫状挑戦状の文面や事件の時系列、マスコミや警察の
動き等は事実のママ。僕自身も覚えのある昭和最大の「劇場型犯罪」の真相を
読んでいるかのような気分になったのだから凄い。

更に凄いのは、行間に垣間見える作者の思い
愉快犯を気取っていながらも、その内容は「市販の食物に青酸ソーダを混ぜる」
という、一歩間違えれば無差別殺人に発展しかねない、サイアクの犯罪。そして
あの脅迫テープは間違い無く「子どもの声」であり、知らずに関わってしまった
子どもたちの未来をも潰す行為である、という強い意志が如実に理解出来る。
こういう「芯」がハッキリした作品は久しぶりに読んだ。

リアリティは抜群であり、常に問題提起を続ける最高のミステリー。
これは絶対読んでおいた方がいい、と太鼓判を押しておきます。凄かった・・・。