生殖記

#妙な語り部


生殖記 / 朝井リョウ(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしき螺旋プロジェクト以来、久々に読む朝井リョウ作品。
2025年の本屋大賞にノミネートされていた作品らしいのだけど、どうやら受賞は
取り逃した模様。・・・うんまぁ、それもちょっと納得出来るかも(^^;)。

語り部“ある男”“日常生活”分析しつつ描写する、という一人称視点構成
おもしろいのが「語り部」が、”ある男”の生殖器である、という設定。”ある男”は
一見普通のサラリーマンだが、自分が性同一性障害者であることを自覚し、長期に
渡ってソレをひた隠しにしている状況。そのことに注力するが故に、普通の人間が
持っているハズの感情を次々に排除して自分に都合の良いように生きている、ぽい。

そういうワケでココで登場する生殖器に「本来の活躍の場」はほぼ無い(^^;)。
その反動でペラペラ喋りだしたのでは?と思えるくらいこの生殖器は饒舌で、男の
細かな心情見事なアレンジを入れて喋りまくる。コレがイチイチ的を得ており
説得力に溢れている。のだが・・・。

・・・ハッキリ言うと、内容がかなり重い
文体ポップで読みやすいのだけど、ちょっと深く考えると恐ろしくなったり
持ちが悪くなったりする。それだけ深いところまで“人間を抉っている”、と評価す
ることも出来るのだが、そう考えながら読むとドッと疲れる。なんとか最後まで耐
えきったが、これはもう読書ではなくて修行(^^;)。読後感もけして良くなかった。

朝井リョウって結構アレな作家だなぁ、と改めて。
才能に関しては思いっきり認めるけど、僕との相性は良く無いかもしれない(^^;)。
殺傷能力の高い毒を持った作品は、本屋大賞にも向かないだろうなぁ、きっと。

イノセンス

#GUITAR


イノセンス / 誉田哲也(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誉田哲也の新作。とは言っても8月にリリースされたモノで、単純に見落として
いた模様。久しぶりの“音楽モノ”で、僕の記憶に間違いが無ければ、2011年
『ガール・ミーツ・ガール』以来かと。・・・もっと出ていた気がするのだが。

スランプに陥った女性シンガーソングライター・立石梨紅と、数年前に失踪し
消息不明となっている天才ギタリスト・伊丹孔善の二人が交互に語り部を務め
る構成。

アルバム制作に行き詰まった梨紅は、偶然耳にした孔善の楽曲に衝撃を受ける。
アルバムの完成に孔善のアドバイスは必要不可欠、と考えた梨紅は、消息不明
の孔善を探し出すことを決意。そのころ孔善は、東北のとある場所で世捨て人
のような生活を送っていて・・・という感じ。

・・・なんというか、凄く“優しい”作品。
登場人物に悪人は殆ど存在せず、全員が自分以外の誰かを慮る、という世界。
その中でややマニアック音楽楽器蘊蓄が踊るのだから、音楽好きにはた
まらない。そして最後にはちょっとした恋が生まれそうな予感が・・・。

・・・うん、問題は二つ(^^;)。
一つは、音楽系の話題の中にあまりに難易度の高そうな話があること。もちろ
ん解る人には解るし、かなり響くとは思うのだが、知らない人だと何も理解出
来ない可能性が。実際、僕もかなりギリギリだった(^^;)。
もう一つ、この優しすぎる作品“誉田哲也の作品”である、ということ。いつ
もはハードで、下手すればグロい作品を提供し続けている作家であるからこそ、
この普通さ違和感を持つファンがたくさん居そうな気がする。

とはいえ、僕はかなり気に入った
読了後、何年かご無沙汰だったMr.BIGを久々に聴いたし、最近弾き続けている
ウクレレの代わりにギターを引っ張り出しもした(^^;)。あと、GMGのキャラ
がサラッと登場しているのもちょっとニヤッと出来たかも。

読む人を選ぶ作品かもしれないが、こういうのが売れてくれると非常に嬉しい。
・・・難しいかもしれないけど。

楽園の楽園

#ちょこっと西遊記


楽園の楽園 / 伊坂幸太郎(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前伊坂幸太郎作品。
実はコレ、「新作」と呼ばれた頃(1月くらい?)に紙の本を購入していたの
だが、そちらはまたもや読まないまま放置状態に。で、現時点でこなしている
現場の少ない空き時間で読書がしたくなり、電子書籍版も購入してしまった。
伊坂作品は『777』に続いての“二重買い”。あんまりよろしくない(^^;)。

西遊記キャラクターモチーフにしたダーク寄りファンタジー
そういえば伊坂幸太郎、15〜6年前にも西遊記をモチーフにした『SOSの猿』
という作品を書いていたのだが、アチラよりもう少し現実的・・・なのかも。

舞台はおそらく終末感の漂う近未来
この時代に起こった現象を解決するために政府から秘密裏に選ばれた3名が、
“先生”(お師匠様?)なる人物の救出に向かうお話。3名はもちろん孫悟空
・沙悟浄・猪八戒をモデルにしたある意味での“能力者”。”先生”の気配が残
る場所で彼らが発見したものは・・・という感じ。

大地震コロナ禍など、最近起こった災害を上手く絡め、一本の線で繋げた
ようなストーリー。氏独特の描写方は相変わらず流麗カッコ良いのだが、改
めて考えるとゾッとする、という伊坂幸太郎らしい作品。なかなかの読み応え
で、作中に唸ってしまう場面が多々あった。しかし・・・。

短い(^^;)。いや、短すぎるでしょ、コレ(^^;)。
まぁ、紙の本の方も購入しており、そのから短いことは想像出来たのだが、
起承転結の“転”の部分でぶった切って来るとは思わなかった。いや、けして
不快な終わり方では無いので念のため(^^;)。

コレは装丁挿絵も含めた「一冊の絵本」として楽しむべきかも。だとする
と、電子書籍よりも紙の本の方が宝物感が出るから、そちらをオススメ。
両方買っちゃった僕が言うから間違い無いと思うな、うん。

この音とまれ!- Home -

#熱血琴マンガ


ジャンプSQ・2025年12月号

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンプSQ・12月号本日発売
お目当てはもちろんアミュー『この音とまれ!』。というか、正直この作品
のためだけに電子書籍版を購入しているワケなのだが(^^;)。ちなみに1ヶ月の
休載を挟んでいるので、先月号は購入しておりません!

総文祭で見事全国1位に輝いた時瀬高校箏曲部の面々。
休載前のエピソードで、長く続いた北海道総文祭の描写は終了となり、地元に
帰還した時瀬箏曲部員たちを描く、ほっこりエピソードの会。

この後は、全国上位4校による東京公演の模様が描かれるハズ。
きっとコレは読者に対するボーナストラックで、ある意味で悔いを残している
堺くんへ与えられたリベンジの機会。この段階で既に最強なのに、完全体とな
「和」の演奏シーンを以て、おそらくこの作品は終了する気がする。

今回のエピソードでは、全部員の幸せな様子を観ることが出来た。
真っ暗闇から始まった青春群像劇最期は、最高の光に溢れた幸せな結末であ
りますように。そして最後の演奏も、期待してるぞ!!

電通マンぼろぼろ日記

#アレの祖(^^;)


電通マンぼろぼろ日記 / 福永耕太郎(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メガバンク銀行員ぐだぐだ日記」のレビューの時にちょっと書いたのだが、
やっぱり我慢(?)出来ずに購入してしまった作品。今回のターゲットになる
のは、“業種”ではなくイチ企業コミュニケーションエクセレンス大企業
電通である。

著者の福永耕太郎氏は「元」が付く電通マン伏せ字にこそなっているモノの、
担当していた業種クライアント等が解ってしまう(^^;)ため、どのあたりで
働いていた人なのかは容易に想像が付く(^^;)。間違い無く電通がいちばん勢い
があった頃最前線に居た人で、そこから出てくるエピソードは正に魑魅魍魎
知らなかったことも勿論あったのだけど、8割近くが“なんとなく知っている件”
であり、ニヤニヤしながらあっという間に読み終わってしまった。

ただ、この本に書いてあることがほぼ事実なのは間違い無いが、「全て」では
無いのもまた真実。さすがにそこまで踏み込むワケにも行かなかったんだろう
なぁ、と察することは出来る。でももし可能なら、第二弾とかでもう少しだけ
ディープな部分を暴露して欲しい・・・かな(^^;)。無理することは無いけど。

・・・最初はもっと突っ込んだレビューを書いたのだが、やっぱりちょっと抵抗
があって書き直した(^^;)。忖度したつもりは無いが、僕は電通でなければ出
来ない仕事、というのが今も絶対にある、と思っている。でも・・・。

働き方改革とは、電通的ワークスタイルの否定に端を発しているような気が。
そうなると、電通が昔のようなパワーを発揮する機会は激減するんだろうなぁ、
きっと・・・。