COVER

#時をかける新人 #東京駅クロニクル


▼COVER 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 / 内藤了(Kindle版)

一昨日第一弾のレビューを書いたばかりの堀北恵平シリーズ、さっそく
第二弾のレビューをば。

新人女性警察官堀北恵平(ケッペー)ちゃん、新たな研修先は「鑑識」
ココで下っ端として捜査のイロハを学ぶ恵平が、またもや「体の一部を切
り取られた女性の遺体がラブホテルで発見される」という猟奇的な犯罪
遭遇。(^^;)の警官、柏村のアドバイスを仰ぎながら、先輩刑事・平野
共に捜査に乗り出すのだが・・・という内容。

犯罪の内容は相変わらずエグく、厳しい捜査現場は容易に想像出来るのだ
が、基軸が「成長する警察官」なため、強い感情移入を以て読むことが出
来る。さらにこのシリーズ、ファンタジーの要素が無理なく効果的に使わ
れているため、物語のエグさを上回るホンワカした感じが全編に溢れ、氏
の一連の作品の中ではいちばん読みやすい作品となっている気が。

正直、ミステリーとしての組み立てはそれ程でもなく、愛好家であればか
なり最初の段階で犯人を特定出来ると思うのだが、コレはそこに至るまで
「行程」を楽しむべき。ケッペーちゃんの更なる成長を、今後も見守り
たいと思います。

そして内藤了、巻末に必ず次作の冒頭をオマケしてくれるのが嬉しい。
次回作もかなりヤバそう。このシリーズ、かなり期待しています!

MASK

#時をかける新人


▼MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 / 内藤了(Kindle版)

藤堂比奈子シリーズに続く内藤了の新しい警察小説シリーズ
最初にお詫びしておくと、コレは完全なるレビュー書き忘れ案件(^^;)。
実際には今年2月で既に読了しており、シリーズ新作を楽しみにしていた、
というのがリアルなステータスなので念のため。

表紙の装丁やデザインは比奈子シリーズを踏襲しており、似たようなテイ
ストのハードな警察小説かと思いきや、全く別の切り口で攻めてくる、と
いう飛び道具。主人公は研修の一環で東京駅前の交番で勤務している堀北
恵平(ほりきたけっぺい)という珍しい名前新人女性警察官。向上心の
高い初々しい新人が、猟奇的な事件に巻き込まれて・・・という内容。

これだけ書くと「あれ?また猟奇?」(^^;)とか思いそうだが、この物語
の本質はソコでは無い。いろいろネタバレになるので詳しく書くことは出
来ないのだが、一言ヒントを言えば「ファンタジー」。扱っている事件は
相変わらず重たいが、雰囲気はもっとアットホームウェット。ある意味、
安心して読めるミステリーだと思う。

現状、この作品の半年後にリリースされた続編を読んでいるのだが、そち
らもかなりエキサイティング。名シリーズ誕生の予感。やるな、内藤了!

天使も怪物も眠る夜

#螺旋プロジェクト


▼天使も怪物も眠る夜 / 吉田篤弘(Kindle版)

螺旋プロジェクト第五弾その2
そしてこのプロジェクトの最終作品でもあるこの物語の舞台は「未来」
この大事なアンカーの役目を引き受けた吉田篤弘の作品はこれまで読ん
だことが無く、少々不安を感じながら読み始めたのだが・・・。

ちょっと驚いた
何に驚いたのかと言うと、この作品に前の7作品全ての要素が少しずつ
採り込まれていること。更にその中でもいちばんクセが強い(^^;)と思
われる伊坂幸太郎の世界観を見事過ぎる手法でパクり(表現悪いけど褒
め言葉のつもり)、しっかりとオリジナルの物語にしてしまっている。

2095年、東京「壁で分断されている世界」、という発想がまず面白
いし、世界中が不眠症になっている、という設定が更に興味をそそる。
主要登場人物がかなり多いにも関わらず、話がとっちらからずに最後ま
で読めてしまったのだから、読後は完全に舌を巻いた。

もちろん、螺旋プロジェクトの主題である「海vs山」にもしっかりケリ
が付いている。曲者揃いの作家たちを向こうに回し、大納得のラスト
魅せてくれたのだから、この作家の実力もまた本物。大団円と言って良
いかと。

・・・いい企画だったなぁ、螺旋プロジェクト
正直、幾つかキツい作品もあった(^^;)が、これまで知らなかったすば
らしい作家さんも出会え、読書の幅も広がった。こういう有意義な企画
なら何度やって貰っても構わない。いや、すぐに第二弾を企画して欲し
いところ。

8組9名作家さん、本当にありがとうございました!
そしてこのプロジェクトを企画した中央公論社・小説BOC編集部にも大
きな感謝を。次の仕掛けを、心より楽しみにしております!

プロレス鎮魂歌

#魂の記述


▼プロレス鎮魂歌 / 瑞佐富郎

「鎮魂歌」「レクイエム」と読む。
サブタイは「リングに生き、散っていった23人のレスラー、その死の真実」
登場するのは既に故人となっているプロレスラーばかり。力道山など、黎明期
の選手のチョイスは無い。つまり、全員が僕にとってある程度思い入れのある
選手たちである。

瑞佐富郎氏、前作の「平成プロレス 30の事件簿」の時にも感じたのだが、か
なりグッと来る文章を書く作家だと思う。大きなブロックでの倒置法の使い方
が絶妙であり、章全体を読むことでイチイチスッキリ出来る。淡々とした文体
なのにもかかわらず、説得力は抜群。そして、プロレス関係の書籍にありがち
“胡散臭さ”を殆ど感じないのは、もう才能と言って良いのかも。

結果、23エピソード中の15エピソード目頭を押さえる始末(^^;)。
特に最近鬼籍に入ったビッグバン・ベイダー、マサ斉藤、輪島大士、ザ・デス
トロイヤーに関する記述には、なんとも言えない寂しさに包まれてしまった。

もう完全に認める。
この作家の描く「プロレス」は、プロレスに対する愛と優しさに溢れた、すば
らしい作品ばかりだと思う。今後もたくさんの作品をリリースして欲しい。
出れば確実に読むので。

二人で少年漫画ばかり描いてきた

#等身大の神様


▼二人で少年漫画ばかり描いてきた / 藤子不二雄

アマゾンで復刊されていることを知り、思わず買い求めた作品。
藤子不二雄のお二人トキワ荘周辺の世界が大好きな僕は、関連書籍を
ほぼほぼ読んでおり、当然その最初期版と思われるこの本も読了済み
思っていた。のだが・・・。

・・・不覚(^^;)。
おおよそこの手の「文章モノ」Ⓐ先生の手によるものが多く、もちろ
んこの作品も8割をⒶ先生が執筆しているのだが、章のアタマにはF先生
文章が! 形は違えど両氏のマンガにおける「合作」と同じ状況で書か
れた本であり、そういう構成なら絶対に覚えている筈。つまり、ずっと
読んだ気になっていただけであった。

メイン担当であろう、Ⓐ先生の文章はこの頃から既にキレており、とに
かくしっかり読ませてくれる。トキワ荘モノの原点として、ファンなら
絶対に読んでおくべき本。まぁ、僕は今まで読んでいなかったのだが。

ちなみに初版の発売は1977年
ドラえもん魔太郎で大人気だった頃であり、すなわち藤子不二雄が
「合作」から「分業」へゆっくり変化していた時期。そんな頃に2人で
協力してエッセイを書いた、という事実が、今頃だが本当に嬉しい。

トキワ荘関係者の多くはもう鬼籍に入っている。
そんな中でただ一人健在なⒶ先生には、出来る限り長生きして欲しい、
と改めて思った。僕の神様の二人に、大いなるリスペクトを!

※復刊版では「藤子不二雄A/藤子・F・不二雄」の名義になっています
が、こちらでは初版発売当時の「藤子不二雄」を著者としました。