オロロ畑でつかまえて

▼オロロ畑でつかまえて / 荻原浩(Kindle版)

久しぶりの萩原浩作品。
この作品、どうやら氏のデビュー作らしく、ユニバーサル広告社シリーズ
して全3冊がリリースされている模様。これは丁度良い物量、と判断し、この
シリーズを読破することを決意。まずは第一作目から。

弱小広告代理店、と言うより、広告制作プロダクションを舞台にしたコメディ。
弱小と言いながらも、中堅クラスの企業からプレゼン参加の依頼はあるようだ
し、ある程度定期的な仕事も入っているから、僕らにとっちゃ羨ましい限り
んだけど(^^;)、経営的には断末魔一歩手前の零細企業。そんな会社に突然降っ
て沸いた、超の付くど田舎の山村「村おこし」コピーライター杉山は、
とんでもない方法に手を染めて・・・、という内容。

作者はそもそも元広告マン。しかも独立してフリーのコピーライターとして
活躍していたらしいから、状況設定はかなり真に迫っている。内容はコメディ
で、基本的にかなり笑える内容なのだが、その「笑える」状況も含めて・・・、
あまりにリアル(^^;)なのがちょっとだけ怖かったりもする。

広告の世界に「確定したもの」は殆ど存在しない。これから世に出るモノだか
ら、可能性の大小こそあれ、売れる・売れない、人気が出る・出ないは蓋を開
けてみるまで正しいことは解らない。つまり、全ての仕事は必ず「嘘」から始
まるモノであることを、作者はきっと理解している。その部分を大胆にデフォ
ルメし、誰もが笑える内容に仕上げてしまうセンス。デビュー作でコレをやれ
るのだから、この人の才能は本当に大したモノだと思う。

これがまだあと2冊ある、というのは幸運かも。
年内はユニバーサル広告社シリーズでなんとか乗り越えられるかもしれない。
次はヤクザイメージアップ。かなり楽しみ!

実録・国際プロレス

▼実録・国際プロレス / Gスピリッツ編集部

今や「プロレス史研究家のバイブル」とも言える雑誌・Gスピリッツ
その人気連載「実録・国際プロレス」を一冊にまとめたもの。基本、創刊号
からGスピリッツを愛読している僕であり、バックナンバーも(珍しく)全て
所持している。つまり、本当は必要の無い書籍なのだけど・・・。

↑↑まぁ、このを見て欲しい。
ちょっとした国語辞典を凌ぎ、さながら広辞苑のごとき厚さ。考えてみれば
Gスピリッツの創刊は2007年、連載はほぼ同時に始まった筈だから、物量は
確かにこのくらいは間違い無い。さらに言うのなら、いくつか掲載されてい
ないインタビューもある筈。にも関わらず、ということ。

昭和からのプロレスファンにとって、国際プロレスは忘れ得ぬ存在。
新日本・全日本メジャーとするのなら、国際は間違い無くマイナーであっ
たのだが、であるが故のワクワク感は凄かった。来日する外人のニックネー
ムは「放浪の殺し屋」(ジプシー・ジョー)、「気狂い犬」(マッドドッグ
・バジョン)、「流血大王」(トーア・カマタ)など、ちびっ子ファンを震
え上がらせるものばかり。これを迎え撃つのが我らのラッシャー木村であり、
アニマル浜口マイティ井上猪木鶴田に比べれば華が無く、派手さには
欠けるが、その泥臭い男らしさが我々を魅了。グレート草津のような、若干
思い入れを持ちづらい(^^;)選手も居たが、国際の所属選手は全員が「哀愁」
を漂わせており、そこになんとも言えない愛着を感じていた。

そんな哀愁の第三団体・国際プロレスの元所属選手団体関係者雑誌・新
聞記者カメラマンまで、23名に渡る人物に深く切り込んだ、とにかく濃い
ンタビュー集

内容が内容な上に、価格もかなりのモノなので、プロレス史に興味のある人
にしか勧められない本だが、我々のような輩にはある意味で「聖典」国際
の歴史は、昭和プロレスの歴史そのものだと思う。

・・・ただ一つ。
残念なのは、大エースであり後期国際の象徴であった「金網の鬼」、最後の
IWA王者だったラッシャー木村の「声」が聞けなかったこと。それがあったら
完璧だったなぁ、この本・・・。

怪物狩り

▼怪物狩り-世界”旅的”個人釣行ビジュアルガイドBOOK / 小塚拓矢

ヴィレッジヴァンガードで立ち読みし、ガマンしきれずにAmazonに注文し
てしまった作品。著者の小塚拓矢氏は、大学在学中から「デカい魚」を求め
世界各国を渡り歩いたアングラー。誤解を恐れずに、そして失礼を承知
言うのなら、「ちょっとイッちゃってる釣り人」である。

掲載されている釣魚たちが、まぁ異様にグロテスクなモノばかり(^^;)。
特に世界各国のナマズ系のおサカナたちは迫力満点であり、それでいながら
にしてキモカワイイ感じ(^^;)までするから不思議。とはいえ、僕を含めた
殆どの釣り人の憧れであるピラルクーバラマンディパイクといった海外
のターゲットに加え、イトウという国内最強の獲物も掲載されているのだか
ら、グラフとしては満点。いや、120点を付けてもいいと思う。

難があるとすれば文章だけど、これはハッキリと荒削り。しかし、勢いだけ
は写真と同様恐ろしいモノがあり、溢れる臨場感は本当にすばらしい。ただ、
いわゆる釣行記としては最高だけど、旅行記として読むと決してマネしたい
とは思えない(^^;)。まぁ、それもきっと狙いなんだろうけど。

ともかく、「大物」に一度でも魅了された釣り人なら間違い無くハマる!
一度釣ってみたいなぁ、バラマンディ・・・。

ノーマンズランド

▼ノーマンズランド / 誉田哲也(Kindle版)

誉田哲也・ストロベリーナイトシリーズ、待望の新作
前作、同じく人気のジウシリーズとのコラボ「硝子の太陽」から1年半
ザッツ・クールビューティー姫川玲子は、やや哀愁の漂う年代(^^;)に差し
掛かっており、その部分がやや寂しくもあるのだが・・・。

今回のテーマは、ある意味タイムリーな「北朝鮮による拉致」
そのテーマが見えてくるのは中盤に入ってから、という構成がすばらしい。
物語はもちろん「重い」のだが、お馴染みのストロベリーナイターズオール
スターがほぼ全て登場し、全員がそれなりに活躍するのだから、完全に目が
釘付けの状態に。このシリーズの誉田哲也は百発百中。打ち損じたところを
観た覚えが全く無い。

そして、初期の頃に漂っていた恐ろしいまでのグロさが、なんと復活
久しぶりに読んでいて目を背けたくなるような拷問描写があり、古くからの
ファンなら必見。個人的には、やっぱりちょっと苦手ではあるんだけど(^^;)。

ジェットコースターのような展開に加え、鋭すぎるテーマ選択と魅力的なキ
ャラクター。ストロベリーナイトシリーズは、事実上警察小説の最高峰と言
って問題無い気がする。

この原作をベースにした映像化にも期待。果たして竹内結子は、どんな演技
を魅せてくれるのか? ご時世的には期待薄なんだけど・・・。

正しいストーカー殺人

▼正しいストーカー殺人 警部補 姫川玲子 / 誉田哲也(Kindle版)

みんなが待ってた誉田哲也・ストロベリーナイトシリーズ
「硝子の太陽R」からおよそ1年半ぶりの新作「ノーマンズランド」のリリース
に併せて配信されたシングルがこちらの短編。

こないだ池井戸潤「花咲舞が黙ってない」が出た時も同じように短編が配信さ
れたのだけど、アレは音楽アルバムで言うところのシングルカット。短編集だ
った本編の中の一章をばら売りした状態で、ややがっかりしたのだが、コレは
オリジナル。ノーマンズランドを読む前に、ちょうど良いアイドリングになっ
たと思う。

短編の見本のようなミステリーで、短い中にもキッチリ展開のある内容
もちろん「捜査」ではあるのだけど、いわゆる“仕事人”では無い姫川玲子
人間的な部分が事件解決のキーになっている。サラッとした内容だが、それ
なりに満足度が高いのはさすが。

そして現在、ノーマンズランドを鋭意読書中。
久々のストロベリーナイトの世界、堪能させていただきます!