ママの友達

▼ママの友達 / 新津きよみ(Kindle版)

かなりお久しぶりの新津きよみ作品。
ある種“意味深”なタイトルに惹かれて購入したのだが、結論から言えば間違い
これ、内容がかなりストレートに表現されているタイトルでございました・・・。

30年前の中学生時代に交換日記などという小っ恥ずかしいことを行っていた
中年女性4人のうち3人が主人公。ちなみに1人は最初から死んでおります(^^;)。

そのメンバーの一人に差出人不明で届いた中学時代の交換日記。直後に当時の
リーダー格だった女性が絞殺された、というニュースが入り、その事件がきっ
かけで物語が動き出す、というサスペンス。ただ、事件はあくまできっかけ
しか無く、基本は現在生活に問題を抱える3名それぞれが過去を振り返りながら
自分の置かれた問題を解決して行く、というある程度前向きな内容。

導入から最後の章の前までの流れは非常にすばらしい
中年女性にありがちなパターンを全て用意し、全員に意味を持たせる手法は
感心するし、3名の心情描写をキッチリ書き分けるテクニックもお見事。
自分と全く関係の無い世界なのに、最後まで興味が途切れなかったのだから、
作品としての惹きには凄いモノがあると思う。でも・・・。

ちょっとラストね、かんたんにまとめ過ぎ(^^;)。
9割近くを読んだところで、残りページ数の少なさに気づいて心配してたの
だが、こうもバッサリ終わらされると感動もへったくれも無い気が(^^;)。
とにかく最後に「残念・・・」と思っちゃったんだよなぁ・・・。

いや、マジで残念
ドロドロで終わってもいいから、もう少しクライマックスに余韻を付けて欲
しかったところ。ページ数の縛りでもあったのかなぁ・・・。

無事これ貴人

▼無事これ貴人 / 伊坂幸太郎(Kindle版)

伊坂幸太郎短編
小説新潮の3月号で発表された作品で、今のところ単行本系には未収録
そろそろ伊坂幸太郎が恋しいなぁ、と感じていたところでのリリースはちょっ
と嬉しい。いいね、Kindle Singleって。

そして内容は期待に違わぬ伊坂ワールド
ちょっとしたエピソードが連鎖し続け、最後はかなり幸せな感じで着地する。
この連鎖の中には伊坂ファンにはお馴染みのあの”スタイリッシュ空き巣”(^^;)
もしっかり登場する。どんな時でも読者のニーズを忘れない、伊坂幸太郎の
一流の手法。なんなら、ちょっとした接待を受けている気分になるのだから、
本当に恐れ入る。

紙の本にして29ページ179円という価格が高く感じるか安く感じるかは
人それぞれだと思うのだが、僕にとってはこの上なく安い。なんなら毎月シン
グルをリリースしてくれても全く問題無いのだが(^^)。

とにかく良作。
早いところまとまってくれないかな、単行本に。

犬にきいてみろ

▼犬にきいてみろ / 池井戸潤(Kindle版)

大人気の池井戸潤花咲舞シリーズ一節
Kindle Singleと銘打たれたラインナップの一つで、人気作家短編を切り売り
する形態。おそらく数年後にはまとまって単行本になったりすると思うのだが、
人気シリーズをつまみ食い出来る感覚はちょっと嬉しい。

ドラマで大人気になった花咲舞シリーズだが、実はシリーズと言いながらこれ
までリリースされているのは「不祥事」一冊のみ(^^;)。ドラマはシーズン2
で制作されてるのにもかかわらずネタ枯れしないのは、全然違う主人公が活躍
する「銀行総務特命」からもエピソードを引っ張っているから。さすがにこれ
だけ人気が出てしまうと新エピソードを執筆せざるを得なくなったんだろうな、
池井戸センセ(^^;)。いや、個人的には非常に良い傾向です。

内容はある意味で“タイトル通り”(^^;)。
すっかりのイメージが定着した花咲女史が、相変わらず気持ち良い花咲節
聞かせてくれる、痛快経済モノ。なんだかんだでこの分野、完全に池井戸潤の
天下だな・・・。

199円のシングル盤としての役目は充分に果たしている。
願わくば、コレと他のエピソードをまとめた単行本を早めに出して欲しい。
でないと、ドラマのシーズン3が制作出来ない気がするので♪

水族館ガール3

▼水族館ガール3 / 木宮条太郎(Kindle版)

さて「水族館ガール」第三巻。
出向が突然長期化し、アクアパーク由香はいきなり多忙となる。
それにはしっかりワケがあって・・・という感じの内容。

由香水族館業務はさらにバリエーションが増し、内容も専門度が高くなって
いくのが興味深い。これまで真の主役であった筈のイルカたちはすっかり出番
が減り、代わりにサンゴ・ラッコ・マンボウという連中が幅を効かせてくる。
マンボウやサンゴはまだ想像出来る内容なのだが、ラッコやたら飼育が難し
い動物だ、というのが衝撃。僕にとってラッコは見るモノであり、決して飼う
モノでは無い。そういう考えてみれば当たり前の事実が、イヤに重くのしかか
ってくる感じが非常に切ない。

前二作で問題にしたラブコメ部分だが、今回はわりと鼻に付かないレベル
木宮条太郎、今作でようやく分配の適度さに気付いたらしい(^^;)。
おかげで特殊業務小説としてのまとまりは格段に上がっており、シリーズ3作
の中ではいちばん読み応えがあった。

巻を重ねる毎に精度が上がるのは非常に良いこと。おそらくこの後もシリーズ
は続きそうな気配が濃厚なので、次作のリリースを楽しみにしておきます。
・・・できればニッコリーの出番をちょっと多めで♪

水族館ガール2

▼水族館ガール2 / 木宮条太郎(Kindle版)

いきなりマイブームの「水族館ガール」、勢いに乗って第二巻
前作のラストで恋人同士になった由香だが、梶の大阪出向によりいきなり
遠距離恋愛、というシチュエーションから始まる。

この二人の関係、誤解があったり大喧嘩があったり行き違いがあったりと相変わ
らず波乱万丈なのだが、正直この恋愛小説の部分は“邪魔”ですよ、ええ(^^;)。
おそらく物語にバリエーションを付けるためにラブコメ要素が欲しかったんだろ
うけど、ならばもう少し状況を精査すべき。どうも無理矢理な感があるんだよな
ぁ、ちょっと(^^;)。

ただ、水族館業務の描写はを付けたいくらいすばらしかった。
特にラスト、創意工夫の末に行われた“実験”イルカライブ部分は、読んでいて
涙が出てくる程の感動劇“必死に「仕事」をすること”がどれだけすばらしいこ
とか、改めて思い出させてくれる、秀逸なエピソードだと思います!

このシリーズも残るところあと1作。
出来れば恋愛要素少なめ・仕事要素多め大団円を期待します。
・・・ドラマの展開も楽しみだ♪