夫が邪魔

#怖いはなし


▼夫が邪魔 / 新津きよみ(Kindle版)

お久しぶりの新津きよみ作品。
もちろん、やたらに怖いタイトル表紙デザインに惹かれて購入。しかし、世
に数多居る夫の一人としては、やや身につまされるタイトルではある(^^;)。

いわゆるテーマ短編集
全7篇から成る各話に共通しているのは、「殺したいくらい邪魔なヤツがそば
に居る」人たちが主人公になっていること。もちろんおおよそがワケアリ(^^;)
で、その「邪魔なヤツ」は、おいそれと別れたり離れたりすることが難しい人
が対象。にっちもさっちも行かない究極のシチュエーションに陥った時、人は
どうするのか?という内容。

この作家の心情描写能力叙述トリックの腕前は以前から認めているのだが、
こちらの短編集はその能力がピークにある、と感じさせてくれる作品。オカル
トの要素は全く無いのだが、読後感はミステリーと言うよりもホラー極上
オトナ向けの怖いはなし、と評価する。

残念なのは、これまたいつものように「オチを読者に委ねる」系の作品である
こと。個人的には生殺しにあった気分なのだが、オチを考えることで薄気味悪
さが倍増している、というのは認めざるを得ない。結果的に大成功なんだろう
なぁ、コレ。

おそろしいほどプロレスがわかる本

#昭和プロレス #プロレス検定対策


▼おそろしいほどプロレスがわかる本(1)(2)/ 流智美

「東京12チャンネル時代の国際プロレス」を読み、久しぶりに流道場(^^;)に
入門したくなった。で、思い出したのが↑↑の本、2冊

一問一答のクイズ形式、その間に挟まれたコラムでプロレスの知識が身につく、
という構成の新書。かつて行われたプロレス検定のテスト前、参考書としてこ
の本を熟読していたのだが、実際検定に出た問題はこの本よりはるかに軽かっ
(^^;)。ま、実際のところは苦手な女子プロの問題に手こずったのだけど、
結果は3級・2級ダブル合格。流先生、ありがとうございました!

・・・で、この本、間違い無く所持している筈なのだが、どこに仕舞ったか皆目
見当が付かず。結局アマゾンのマケプレで古本を購入することになった(^^;)。

書かれている時代は1990年代中盤。懐かしい感覚と共に、もうこの世に居な
いプロレスラーのことが書かれている場面で切なくなった。
年取ったなぁ、僕も。

↓↓、興味のある人はぜひマケプレで!

東京12チャンネル時代の国際プロレス

#IWE #月曜夜8時 #東京12チャンネル


▼東京12チャンネル時代の国際プロレス / 流智美

米国のNational Wrestling Hall of Fameにて、ジャーナリスト部門で殿堂入り
流智美氏の作品。昭和プロレスを愛する我々にとっては「神」と表されるライ
ターであり、尊敬すべき人物。そんな流氏が(おそらく)一番思い入れを持って
いる団体、「国際プロレス」を採り上げた、入魂の一冊。

タイトルにあるように、この作品は東京12チャンネル(現テレビ東京)で国際
プロレスが中継されていた時代、具体的には1974年から1981年まで8年間
回顧録。けっして規模の大きくないプロレス団体と、当時は弱小だった関東ロー
カルのテレビ局が織りなす悲喜交々な駆け引きの様子が、克明に記されている。

本書に従って自分の記憶を掘り返してみると、東京12チャンネルの「国際プロ
レスアワー」に関しては1975年くらいからオンエアを観ていたことになる。
この頃、親には絶対に逆らわなかったハズの僕が、週3回テレビで放映されてい
プロレス中継月曜:国際・金曜:新日・土曜:全日)だけはチャンネル権
主張し、絶対に譲らなかった(^^;)。月曜夜8時にブラウン管に登場するキラー・
トーア・カマタは強烈で、小学校低学年の僕は半泣きの状態。ソレをオヤジが呆
れた目で見ていたこと(^^;)を昨日のことのように思い出す。

「洗練」という言葉からいちばん遠い位置にいたこの時期の国際プロレスは、
今でも強烈な印象として残っている。極端な話、この時期の全日本プロレス中継
は殆ど覚えていないが、国際の幾つかの中継は今でも鮮明に思い出せるのだから。

そんな東京12チャンネル時代の国際プロレスに関する書籍を、40年以上経った
令和の時代に読める幸せ。各種ディテールの細かさ・深さはさすが流智美、と言
うべき秀逸さで、資料としての価値もかなり高いと思う。

・・・吉原社長の経営方針を糾弾する場面も多々あるが、それも国際に対する愛故、
と理解する。しかし、グレート草津を良く言う人は全く居ないな、本当に(^^;)。

年を重ねても、やっぱりプロレスなんだな、僕は(^^)。

かげろう日記

#ショートリリーフ #日記


▼かげろう日記 /吉村達也(Kindle版)

3年ぶりとなる吉村達也作品。
きっかけは毎日送られて来るダ・ヴィンチニュースの紹介記事。このオススメに
非常に弱い僕なのだが・・・。

主人公は若手イケメンサラリーマン。大学時代から付き合っていた女性が重荷に
なり、切り捨てるように別れたところ、その女性が不慮の死を遂げる。内心で安
心していた男に、彼女の「日記」が郵送されてきて・・・という内容。

非常にコンパクトにまとまったホラー
以前から感じていたことだが、この作家の構成は「無駄」が殆ど無く、しっかり
したストーリーを一気に読ませるチカラがある。話はちゃんと展開し、起承転結
もしっかりしており、いたずらにストーリーを長引かせることが無い。ちょっと
面白い小説を短い時間で読みたい、という人には最適だと思われる。

現実とファンタジーのボーダーラインを描ききり、最後に空恐ろしさを残して終
わるテクニックは見事。迷った時の吉村達也、健在です!

クーデター

#新日本プロレス #金曜夜8時 #ゴールデンタイム


▼クーデター 80年代新日本プロレス秘史  /大塚直樹

最近読み漁っている80〜90年代プロレス検証本
今回の作品は新日本プロレス団体的にも世間的にもいちばん元気だった時代に
営業本部長を務め、その後に長州・マサ斉藤らの維新軍を大量に引き抜いた上に
「ジャパンプロレス」を設立し、全日本プロレスと提携する、という離れ業をや
ってのけた辣腕フロント大塚直樹氏の作品。

かつて少年ファンとして新日本の会場に足を運んでいた僕にとって、大塚さんは
「新日本のやたら怖いオジさん」として印象に残っていた人。昭和後期の新日本
はどの会場も連日満員を記録したのだが、その頃に精力的にチケットを売ってい
たのが大塚さん率いる営業部。この本を読むと大塚さんはあの頃まだ20台だった
らしいのだが、失礼ながらそうは見えない程の貫禄迫力があった。

そんな大塚さんが、当時付けていた日記を元に振り返る80年代のプロレス界。
この手の本をいささか読みすぎており、正直あまり期待していなかったのだけど、
まさかここまでのめり込むとは思わなかった。とにかく動いた「カネ」の話があ
まりにリアルだし、関わった選手・関係者の心の揺れ様の書き方も見事。ノンフ
ィクションとして非常に秀逸、と評価する。

大塚直樹という人、最終的には失敗しているハズの維新軍クーデターでも、各所
不義理をしているワケでもなく、大損しているワケでもない。よ〜く考えてみ
ると、そんな関係者はこの人しか居ない気がする。

ゴールデンタイムの新日本で育った世代なら、間違い無く興味深く読めるハズ。
プロレスにどっぷり浸かりながら、破滅しなかった偉人のご高説は、プロレスフ
ァンなら読んでおくべき。面白かった!