鍵のことなら、何でもお任せ

▼鍵のことなら、何でもお任せ / 黒野伸一(Kindle版)

こないだの仕事中、あまりにヒマな時間に耐えられずに思わず現場購入
した黒野伸一作品。以前から気になっていた作品なのだが、これまで何
故かタイミングが合わず。良い機会だったかも。

高校でイジメにあい、引き籠もりとなった青年が仕方無く選んだ職業
家業「鍵屋」。この仕事が何故か性に合い、流されながらも鍵屋とし
て生きて行くことになる青年。しかし父親が亡くなり、そのまま家業を
継いだところ、自家にはかなりの借金があることが発覚。さらに街には
大手の同業他社が進出し、経営が苦しくなったところで降りかかるトラ
ブル。さて青年は・・・という内容。

鍵屋を扱った作品としては、貴志祐介「鍵のかかった部屋」が有名だが、
こちらは全く違うアプローチ。貴志作品が複雑なロジックのミステリー
であったのに対し、こちらはミステリーの要素こそあるものの、どちら
かと言えばヒューマンドラマに偏った内容。オタクで引き籠もりだった
青年が事業をどう回して行くのか?というのが最大のテーマ。

そして、ある意味謎の職業である「市井の鍵屋」というのが、どういう
商売なのかがかなりしっかり解説されているのがポイント。読んでいる
うちに鍵屋という職業にかなり興味が出てきちゃったのだから、かなり
すばらしいスモールビジネス小説でもあると思う。

達観した若年寄りが、自分の「熱さ」に気付いていく行程は非常にすば
らしい。このへんは黒野伸一作品に共通する要素なのだが、ちょっと変
わった仕事の世界でソレを見せてくれるのは嬉しい。続編が出たら買っ
ちゃうな、きっと。

・・・というか、黒野先生大丈夫なのかなぁ(^^;)。ちょっと心配なんで
すけど(^^;)。