柚月裕子作品、今のところ最後の読み残し。
なんだかんだでかなり幅広いジャンルを網羅する作家だが、こちらは以前
レビューした「ウツボカズラの甘い息」と同じく、ワケありの女性(たち)
を主役に据えた、かなりハードなミステリー。
いわゆる「婚活サイトを利用した結婚詐欺」が事の発端であり、それが連
続不審死事件へと繋がって行くのだが、ありがちなよくある犯罪で終わら
ない、トラウマと恩讐が吹き荒れる世界を見事に構築。ミステリーとして
の捻りも充分に効いており、終盤には思わず唸ってしまったほど。
この作品では女史独特のテクニックである「文体の男らしさ」がほぼ確立
されており、前途洋々さが迸っている。以降の骨太な作品群に繋がってい
く、ターニングポイントの作品と言えるかも。柚月裕子初期作品としては、
傑作と言って過言が無い気がする。
残念なのは電子書籍化がなされていないこと。そして現在文庫は再刷され
ていないらしく、現状は古本で手に入れるしか無いのがちょっと・・・。
そういう時に電子書籍って便利だと思うんだけどなぁ・・・。