#歌舞伎町ウルトラアンダーグラウンド
馳星周・不夜城シリーズの「完結編」とされる第三巻。
「不夜城」と「鎮魂歌」はそれぞれ1996年・1977年にリリースされた
作品だが、こちらの「長恨歌」の発売は2004年。7年の間に他の作品で
腕を磨いた作者が、デビュー作に落とし前を付けるために書いた作品・・・
のような気が。
物語の中でもほぼ同様に時間は進んでおり、歌舞伎町の中国人マフィア
事情も様変わりを見せている。戦後隆盛を極めた台湾系は既に淘汰され、
代わって歌舞伎町を牛耳ろうとした上海・北京の二大勢力も既に倒壊。
この作品での歌舞伎町は、福建や東北出身の中国人が無秩序に暴れ回る
世界となっている。
今回もキーマンは日台ハーフの劉健一だが、その存在が最初から最後ま
でしっかりと「不気味」なモノとして描かれる。おもしろいのは語り部
を務める日本国籍を持つ男の存在。純粋な中国人なのにも関わらず、
中国残留孤児に化けて日本に渡り、全てが上手く行かずに闇に落ちる、
という設定がすばらしい。
前2作と比べると、圧倒的にエログロの要素が少ない。
エログロはこのシリーズの持ち味とも言えるのだが、この部分が抑えら
れているおかげで物語はすんなりと入ってくる。個人的にはこの「マイ
ルドさ」を評価したい。
完結させるには惜しい作品だが、ラストはもう完結せざるを得ない展開。
ここ一週間、極上のノワールを味あわせてくれてありがとう!と言って
おきます。
これで馳星周強化月間はちょっとお休み。来月になったらまた始まりそ
うだけど。