俺たちの箱根駅伝(下)

#正月の当事者たち


俺たちの箱根駅伝(下) / 池井戸潤(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レビューまで少し間が空いてしまったが、実はほぼ半日で完読してしまった下巻
遂に新年恒例箱根駅伝が開幕、「負け犬の集まり」と揶揄される関東学生連合
チームと、大日テレビのクルーたちによる、“オレたちの箱根”が転がり始めた!

まずは学生連合意地と感動の箱根駅伝
心情描写は10人のランナーたち全員をフォローしており、応援せずに居られない
展開が熱く繰り広げられる。実際の箱根駅伝で学生連合が大活躍する、という例
は殆ど無い。僕にとって箱根駅伝とは、正月に横目で観る程度番組であり、そこ
「学生連合って出場する意味あるの?」と思っていたことも事実。しかし、こ
の作品を読んだことにより、来年の箱根は学生連合に注目せざるを得なくなった
まだ編成は決まっていないと思うが、学生連合チームのメンバーはハードルが上
がったことを覚悟して欲しい。そのくらい熱い物語だった。

そして、大日テレビ箱根駅伝中継チーム
仕事柄、箱根駅伝の中継がどれだけ大変なのかはさすがに解る。レース展開や天
候に左右され、思い描いた通りに番組が進行することは絶対に無い。そういった
「生モノ」の大変さとそれに臨む覚悟、そして“プロフェッショナルの格好良さ”
が切々と伝わって来る。唯一人、最後までヒールを演じねばならなかった編成局
にはちょっと同情してしまうのだけど(^^;)。

これはもう、絶対に映像化すべき作品。
半沢直樹・下町ロケットのチームならキッチリ仕事をしてくれそうだが、やっぱ
り権利は日テレにありそう。日テレのドラマ班は今現在ちょっとアレ(^^;)だが、
それを払拭するためにも、「ちゃんとした原作アリドラマ」を制作して欲しい。
・・・さすがに手を挙げない、ってことは無いよね(^^;)。

俺たちの箱根駅伝(上)

#正月の当事者たち


俺たちの箱根駅伝(上) / 池井戸潤(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒットメーカー・池井戸潤、約1年半ぶりの新作
テーマはなんと「箱根駅伝」陸上競技モノとしては、ランニングシュー
ズの開発をテーマとした『陸王』があり、今回も企業再生モノかと思った。
ところが・・・。

物語の軸は明確に二つ
一つは箱根駅伝本戦への出場を逃した各大学の代表者たちによる混成チーム
「関東学生連合」のメンバーの、箱根への“関わり方”“拘り”について、熱く
展開される部分。そして二つ目は、お正月の定番として箱根駅伝を中継する、
テレビ局のクルーたち鬼気迫る仕事ぶりを描く部分である。

これまでの池井戸潤を考えるに、二つ目はあってもおかしくない内容。
しかし、一つ目に関しては完全に虚を突かれた。まさか“箱根駅伝のお荷物”
ないしは“思い出作り”と揶揄されている学生連合チームにスポットを当て、
そこに意味を持たせた上で痛快な展開を構築されるとは・・・。

実際のところ、内容はこれまでにも増してやたら熱い。ランナーたち全員の、
そしてテレビマンたち全員の意地信念には心を打たれたし、なんなら感動
涙も流した。まだ上巻なのに、だ(^^;)。

そしてこの物語、フィクションであるのは間違い無いのだが、実際に存在す
る大学名がバンバン出てくるし、箱根駅伝中継の歴史等に事実が多く含まれ
ている。その辺りを留意しながら読むと、更に楽しさが増す、と思う。

ココに登場するテレビ局は大日テレビ。もちろんN●Vがモデルなのだが、
彼らの箱根に掛ける情熱に感服した。実際の●TVも、ドラマとか作らずに
スポーツ中継だけやってればいいのに、とか思った。ナイショだけど。

教祖の作りかた

#イヤミスの教祖 #ミスリードメーカー


教祖の作りかた / 真梨幸子(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真梨幸子新作
珍しく前作から約1年ぶりという長いインターバルを経て、ようやくリリー
スされた待望の一冊タイトルからしてもう刺激的、読む前から大好物の
予感がヒシヒシあったのだが・・・。

・・・凄い
これはもう、真梨幸子の集大成、という意欲作かと。
お得意のイヤミステイストを全編に溢れさせている上に、都市伝説・新興
宗教・YouTuber・バラバラ殺人・同窓会不倫など、諸々の要素をバランス
良く見事にブレンド。その上で、語り部を複数人用意した上でミスリード
を誘う、という最強の展開。薄気味悪くなるくらいのレベルのイヤミスなの
にも関わらず、メチャクチャ「ミステリーを読んだ!」という気分になる。

「日本人ほど神を信じたがる国民はいません」は、核心を突いた名言
幸子サマの作品で語られることで、説得力さえ増すのだから・・・。

でもまぁ、僕は大丈夫だと思う。
何故って?だってもう、神はこの世に居ないんだから。

Ms.Ruth Stiles Gannett

#エルマー


米国の児童文学作家ルース・スタイルス・ガネットさんが今月11日に
逝去した模様。享年100

名著『エルマーのぼうけん』三部作は、おそらく僕が最初に読んだ本
だから、僕のドラゴンの最初のイメージは、水色と黄色のストライプに、
丸っこい顔赤いツノと手、だった。

もし最初がこの作品でなかったら、今のようなファンタジー好きの僕
居ない、と断言できる。それくらい、エルマーの世界にはワクワクさせ
て貰った。

こんなに長い間、生きていてくれてどうもありがとうございます。
アチラではどうか、唯一無二の素敵なイラストを描いていただいたお母様
にもお礼をお伝えいただければ。

エルマーとりゅうは、きっとこれから先何百年も、たくさんの子どもたち
を魅了すると思います。その様子を、楽しく観ていてください。
また必ず、どこかで。

ストラングラー 死刑囚の逆転

#冤罪証明


ストラングラー 死刑囚の逆転 / 佐藤青南(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐藤青南・ストラングラーシリーズ第四弾
一応こちらがシリーズ最終作であり、これで物語は完結する。4冊、という
のはある意味で丁度良い分量決着の付け方は・・・。

前作のラスト、「幻覚が見える」という精神疾患の中、衝動的に性犯罪者を
殺してしまった刑事・簑島。自らの罪を認め、簑島たちとのコンタクトを絶
っていた死刑囚・明石も、簑島のピンチにチームメンバーとの面会を再開。
罪を犯したまま逃亡中の簑島の居場所を、またもや鋭く推理して魅せる。
一方、オリジナル・ストラングラーの正体を絞り込んだ捜査一課の二人の刑
は、犯人とおぼしき男を追い詰める。とかろが・・・という展開。

さすがに最終巻だけあり、簑島の逃亡劇にのみフォーカスした構成。正義感
の強い簑島が逃亡した理由やその居所を推理する明石の名探偵ぶりは鮮やか
な上に理がかなっており、思わず唸ってしまったほど。

そして、ストラングラー事件の真相についても目からウロコ。どんでん返し
と言うよりも、「何故ソレに気付かなかった?」という悔しさを覚えるトリ
ックで、納得せざるを得ない。ミステリーとしての完成度は高く、シリーズ
としても読み応え満点のすばらしい内容だった。

このシリーズ、オススメ。
ちょっと歯ごたえのある本格ミステリーが好きな人、サクッと4冊読めてし
まうと思うので是非!