那須川天心vs藤田大和

昨夜オンエアの「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017」
何度も言うように僕はこのプロモーションが全く好きになれないのだけど、
生中継枠の最初に飛び込んできたこの闘いは掛け値なしに凄かった

那須川天心vs藤田大和
57kg契約のMMA特別ルールで闘うのは、当代随一のキックボクサーと、
アマチュアボクシング五冠王。最初は天心の楽勝だと思っていたのだけど、
展開は完全に予想を上回った。なぜなら、大和が強かったからである。

あまりにスリリングな「間合い」の取り合い。
さすがにボクシングの間合いでは藤田が有利かと思ったが、天心がそれを
上回るボクシングテクニックを魅せるのだから驚き。逆に大和も付け焼き
刃とは思えない見事なミドルキックを魅せ、場内を沸かせる。グラウンド
の攻防を含め、全く目が離せない15分。RIZIN全体のベストバウトである。

判定は3者共に天心を支持。もちろん、文句は全く無い。
しかし、もう一度このカードが行われたら、今度は違う結果が出るかも・・・。

天心はもちろん、藤田大和の今後にも期待。両者に大きな拍手を!

「神様」の貴重な映像

▼G SPIRITS Vol.45

本日発売のG SPIRITS 45号、特集はなんと「カール・ゴッチ」
我々の年代のプロレスファンはほぼ全員がゴッチを「神様」として認識し、崇拝
の対象とする人。ここ最近、UWF回顧書籍を多々読んでいるのだけど、どうやら
このMOOKがトドメになりそうな気配。

まずは初来日時のエピソードを読みつつ、伝説となっているvs吉村道明のビデオ
をYouTubeで検索。↑↑が本当にアップされており、その試合内容に驚愕する。
こういう映像の存在をさりげなく教えてくれるのがG SPIRITSという雑誌の真骨頂
ではないかと。

・・・いやぁ、すばらしい。
初来日時の詳細なエピソードに加え、アントニオ猪木を始めとする関係者への
インタビュー。圧巻なのは、13ページに渡ってビッシリと書き込まれた「カレ
ル・イスターツ全試合記録」。これはもう、本気の永久保存版である。

とにかく、全盛期と目されるゴッチの試合映像を目撃できたことが嬉しい。
G SPIRITSを読んでなかったら、全く気付かずに終わるところ。本当に感謝だ!

フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで

▼フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで
/ ケンドー・カシン(Kindle版)

“悪魔仮面”こと、ケンドー・カシンの半生記。
カシン自身が執筆したワケでは無く、インタビュー集。幼少期→アマレス
時代→プロレス・格闘技時代→慶応大学非常勤講師時代(プロレスラー兼
務)までを、本人が丁寧に、そしてシニカルに語っている。

そもそもカシンのプロレスは完全に予測不能であり、すれっからしのファ
ンであることを自認している僕でさえ、いつも意表を突かれてしまう
IWGPジュニア王座を戴冠した時には勝手に自前のチャンピオンベルト
造ってしまったし、最近では意味なくパンダ(FMW参戦のパンディータ
という着ぐるみ系プロレスラー)を襲いワンマッチ興行までやってしま
う、という、理解不能ながら爆笑せざるを得ない行動を取ってしまう。

・・・無論この本も、まぁ、面白い(^^;)。
皆はカシンを「へそ曲がり」とするが、事実はきっと。あまりに自分に
正直に生きているが故に、その様がへそ曲がりに見えているだけかと。
そしてカシンが“発想の天才”であることがすぐさま解る、「カシン解読マ
ニュアル」的な非常に興味深い一冊になっちゃてるから、それがもう痛快

しかし、ニッチだなぁ、この本(^^;)。
さすがにカシンを知らない人は、読んでも意味が解らない可能性アリ。
もしかしたら、爆笑するかもしれないけど。

MONEY vs NOTORIOUS

8月27日(現地時間)、ラスベガスで行われる「メガファイト」
ルールボクシング・3分12R、スーパーウェルター級契約、8オンスグローブ。
カードはフロイド・メイウェザー・ジュニアvsコナー・マクレガー

メイウェザー5階級制覇パウンドフォーパウンド歴代最強とされるプロ
ボクサーで、マクレガーUFC唯一2階級を同時に制覇した総合格闘家
ボクシングの試合をするのだから、普通に考えればメイウェザーの勝利は動か
ない。しかしこの試合、妙な期待感がある。

UFCでのマクレガーを知っている人なら、彼が殆どの試合をパンチ→パウンド
でカタを付けていることもご存じなハズ。MMAとはいえ、あのパンチの決まり
方は凄まじく、もしマクレガーのパンチが先に当たったら、と考えると・・・。

この試合が決まってから瞬間的に思い出した試合がある。
何年か前の大晦日、魔裟斗山本KID徳史K-1ルールでの一戦がソレ。
KIDがまさかの開幕ダウンを奪い、本職であるハズの魔裟斗がタジタジ。
最終的には逆転で魔裟斗が勝利したのだが、この試合がそういう展開になる
可能性は充分にある、と思う。

DAZNで生中継かぁ・・・。
コレはライブで観ておいた方が良い試合かも。2日前にお試し契約かな?

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1984年のUWF

▼1984年のUWF  / 柳澤健

プロレス関連のノンフィクション作家としては、個人的に「最高」と評価する
柳澤健「XXXX年の○○」シリーズ。今回のテーマは・・・「UWF」である。

UWFとは、1984年に旗揚げしたプロレス団体が元。その3文字はいつしか我々
にとって「概念」となり、未だにソレを引き摺りながらプロレスを観ている
人間も居る。おそらく僕も、その一人だ。

かなり束のある本で手に取った時は正直たじろいだ。今さらUWFを追求して
どうなるのか?という思いも残念ながらあった。しかし、読み始めてしまった
らもう止められない。相変わらず“凄い文章”を書く作家である。

柳澤作品にしては珍しく、“信者”と形容されたUWFファンの心情が多々描かれ
るているのが大きなポイント。ここに書いてある「ファン」とは間違い無く
僕自身のことであり、読んでいて少し心が痛くなるほど。おそらくは作者自身
そのカテゴリに居た、と自覚しているハズ。そうでなければ、こういう文章
は書けない。

「・・・結局のところ、新生UWFで新しかったのはフロントのアイデアや企画力
だけで、レスラーの技術的進歩はまったくなかった。」(本文より引用)

・・・そう言い切らなければ、我々をずっと翻弄してきたUWFという三文字
ケリが付けられない。そう感じたのではないか?と思う。この一文に、僕は
アタマをガツンと殴られた気がした。そして、その「夢」がもうとうの昔に
終わっていたことに、改めて気付いた気がする。

いわゆる暴露的な要素も含まれるが、それも含めて重要な素材。もちろん反論
する選手や関係者も居ると思うし、この本が正解かどうかを断言することは誰
も出来ない。しかし、僕の中ではちゃんと「UWF」ケリが付いた。それは凄
く悲しくて、寂しくもあったが、何十年もずっと漂っていた霧が一瞬にして晴
れていくような爽快感も共にあった。これでやっと、僕はUWFを卒業できる

UWFに何かを貰った人は、一度この本で確認すべき。自分のを。