怪物狩り

▼怪物狩り-世界”旅的”個人釣行ビジュアルガイドBOOK / 小塚拓矢

ヴィレッジヴァンガードで立ち読みし、ガマンしきれずにAmazonに注文し
てしまった作品。著者の小塚拓矢氏は、大学在学中から「デカい魚」を求め
世界各国を渡り歩いたアングラー。誤解を恐れずに、そして失礼を承知
言うのなら、「ちょっとイッちゃってる釣り人」である。

掲載されている釣魚たちが、まぁ異様にグロテスクなモノばかり(^^;)。
特に世界各国のナマズ系のおサカナたちは迫力満点であり、それでいながら
にしてキモカワイイ感じ(^^;)までするから不思議。とはいえ、僕を含めた
殆どの釣り人の憧れであるピラルクーバラマンディパイクといった海外
のターゲットに加え、イトウという国内最強の獲物も掲載されているのだか
ら、グラフとしては満点。いや、120点を付けてもいいと思う。

難があるとすれば文章だけど、これはハッキリと荒削り。しかし、勢いだけ
は写真と同様恐ろしいモノがあり、溢れる臨場感は本当にすばらしい。ただ、
いわゆる釣行記としては最高だけど、旅行記として読むと決してマネしたい
とは思えない(^^;)。まぁ、それもきっと狙いなんだろうけど。

ともかく、「大物」に一度でも魅了された釣り人なら間違い無くハマる!
一度釣ってみたいなぁ、バラマンディ・・・。

ノーマンズランド

▼ノーマンズランド / 誉田哲也(Kindle版)

誉田哲也・ストロベリーナイトシリーズ、待望の新作
前作、同じく人気のジウシリーズとのコラボ「硝子の太陽」から1年半
ザッツ・クールビューティー姫川玲子は、やや哀愁の漂う年代(^^;)に差し
掛かっており、その部分がやや寂しくもあるのだが・・・。

今回のテーマは、ある意味タイムリーな「北朝鮮による拉致」
そのテーマが見えてくるのは中盤に入ってから、という構成がすばらしい。
物語はもちろん「重い」のだが、お馴染みのストロベリーナイターズオール
スターがほぼ全て登場し、全員がそれなりに活躍するのだから、完全に目が
釘付けの状態に。このシリーズの誉田哲也は百発百中。打ち損じたところを
観た覚えが全く無い。

そして、初期の頃に漂っていた恐ろしいまでのグロさが、なんと復活
久しぶりに読んでいて目を背けたくなるような拷問描写があり、古くからの
ファンなら必見。個人的には、やっぱりちょっと苦手ではあるんだけど(^^;)。

ジェットコースターのような展開に加え、鋭すぎるテーマ選択と魅力的なキ
ャラクター。ストロベリーナイトシリーズは、事実上警察小説の最高峰と言
って問題無い気がする。

この原作をベースにした映像化にも期待。果たして竹内結子は、どんな演技
を魅せてくれるのか? ご時世的には期待薄なんだけど・・・。

正しいストーカー殺人

▼正しいストーカー殺人 警部補 姫川玲子 / 誉田哲也(Kindle版)

みんなが待ってた誉田哲也・ストロベリーナイトシリーズ
「硝子の太陽R」からおよそ1年半ぶりの新作「ノーマンズランド」のリリース
に併せて配信されたシングルがこちらの短編。

こないだ池井戸潤「花咲舞が黙ってない」が出た時も同じように短編が配信さ
れたのだけど、アレは音楽アルバムで言うところのシングルカット。短編集だ
った本編の中の一章をばら売りした状態で、ややがっかりしたのだが、コレは
オリジナル。ノーマンズランドを読む前に、ちょうど良いアイドリングになっ
たと思う。

短編の見本のようなミステリーで、短い中にもキッチリ展開のある内容
もちろん「捜査」ではあるのだけど、いわゆる“仕事人”では無い姫川玲子
人間的な部分が事件解決のキーになっている。サラッとした内容だが、それ
なりに満足度が高いのはさすが。

そして現在、ノーマンズランドを鋭意読書中。
久々のストロベリーナイトの世界、堪能させていただきます!

沈黙する女たち

▼沈黙する女たち / 麻見和史(Kindle版)

麻見和史・重犯罪取材班 早乙女綾香シリーズ第二弾
元々はこちらの作品がAmazonのリコメンドに表示されており、そのタイトル
に興味を持ったのが麻見和史を読むキッカケ。ということで、ようやく本命
を読んだことになる。

前作で基本設定は全て理解出来ており、あっという間に物語に入っていくこと
が出来た。元新聞記者のテレビウーマン、早乙女綾香に早くも部下が出来るの
だが、それがなんと元刑事。しかも、元捜査一課所属という非常に濃いキャラ
クターで、彼の存在がストーリーに殺伐さを醸し出す。それでなくても緊迫感
に溢れるタイプのシリーズが、さらに強力になった、という感じ。

ミステリーとしてのレベルは今回も相当高く、伏線の張り方とその回収、そし
トリックの内容も秀逸。もしかしたら、リアルな完全犯罪のお手本になって
しまう内容かもしれない。ハードなミステリマニアもきっと満足出来る内容だ
と思う。

そして僕が惹かれたタイトル、一応意味はあったのだが、それ程大きなモノ
でもなく(^^;)。その辺りはちょっと肩すかしだったけど、全体的な満足度
はかなり高い。

読み甲斐のある作家をまた一人発見。他の作品を読むのが楽しみだ!!

2011年の棚橋弘至と中邑真輔

▼2011年の棚橋弘至と中邑真輔 / 柳澤健(Kindle版)

柳澤健のプロレスノンフィクション「XXXX年の○○」シリーズ
復活しながらもあっという間に休刊の憂き目にあった雑誌・ゴングに掲載さ
れた同名の連載を大幅加筆(そもそも最終回が掲載されてない筈)、単行本
としてまとめられたモノ。

今や日本のプロレス団体で「一強」と呼ばれる新日本プロレス
しかし、ゼロ年代と呼ばれる2000〜2009年までの暗黒期は、我々の記憶に
新しい。物心ついた頃から人生の一部となっている新日本プロレスが、もう
どうにもならないところまで追い込まれた。僕ですら「消滅」が本当にあり
得ると思っていた。でも・・・。

・・・新日本には、棚橋弘至と中邑真輔が居た
二人とも新日本の歴史をほぼ否定し、新しい時代にマッチする団体にシフト
チェンジしようと懸命にもがいた。その姿勢はいわゆる“すれっからし”と呼
ばれる我々のような世代を盛大にカチンとさせたのだが、彼らは関係無い、
とばかりにブレずに突っ走った。その様をずっと見させられた僕らは・・・。
知らない間に彼らに魅了された。気が付けば、新日本の未来を彼らに託して
いた。なんとか出来るのは、お前ら2人だけだ、と。

その後。
新日本は見事にV字回復を果たし、オカダ・内藤・飯伏という次の世代を担
う選手も登場した。全ては棚橋・中邑のお膳立て。これだけ愛社精神に溢れ、
自分たちが出来ることの全てをやり尽くしたプロレスラーを、僕は彼ら2人
の他には知らない。

キーワードは「ストロングスタイル」
新日本の象徴と言うべきこの言葉に、違う方向から敢然と立ち向かった2人
偉大なプロレスラーの軌跡を、いろいろな人たちに知って欲しい。プロレ
スファンだけでなく、中小企業の社員、経営者なども。最高の人材適所
与え、モチベーションを刺激すれば、最悪の状況からも復活出来るのだから。

驚くべきことに「XXXX年の○○」シリーズでいちばん印象深い作品となった。
柳澤健という希有な作家に感謝すると共に、100年に一人の逸材キング・
オブ・ストロングスタイルに敬意を表したい。最高でした!