BEST OF THE SUPER Jr. XXIII

新日本プロレス初夏の風物詩、「BEST OF THE SUPER Jr. XXIII」
決勝戦をNJPW WORLDにて観戦。“ジュニア最高峰決定戦”は毎回実力
の拮抗した好勝負が続くのだが、今年は完全にこの男1人が持って行った。

ウィル・オスプレイ
イギリス出身の23歳(!)、細マッチョな均整の取れた身体と、驚異的
ハイフライムーブで世界中から注目を集める新星。初来日でKUSHIDA
の持つIWGPジュニア王座に挑戦し、好勝負を展開。これを受けてBOSJ
に参戦したのだが、結果・内容共に周囲の期待を完全に上回る活躍を魅
せた。


正直飛べるだけの選手だと思っていたのだが、田口隆祐との決勝戦で
驚愕。オスプレイは序盤で着地をミスし、左足を負傷。無論コレを庇
いながらの苦しい展開となったのだが、かなり本格的な欧州式の関節技
を駆使してコレを凌ぐ。この段階で単なるハイフライヤーではなくなっ
ていた。


そして、負傷しながらも絶妙のタイミングで跳び技も仕掛けてくる。
観客が何を観に来ているかをハッキリと把握しており、しなければな
らない場面でしっかり無理が出来る。そのプロ意識、とてもじゃない
が23歳とは思えない程。

終わってみればシリーズ全体でオスプレイのプレゼンテーションが行
われたかのような印象。あえて似ている選手を挙げるなら、やっぱり
飯伏幸太ということになるのだが、年齢的にあと10年はこのスタイル
で試合が出来そうなのがオスプレイ最大の強み。

公式戦で組まれたvsリコシェ戦は世界中に議論を巻き起こす程の問題
試合となったのだが、おそらくこの試合でその評価はガラリと変わる筈。
これは、オスプレイの良さを上手く引き出した田口の功績も大きい。
オスプレイはおそらく次の大阪でKUSHIDAの持つIWGPジュニアに挑戦
することになると思うのだが、いまこの段階でKUSHIDAが勝つイメージ
が全く沸かない・・・。

新日本、また凄い選手を1人手に入れた。
願わくば飯伏とのシングルが観たいのだが、もう無理なのかなぁ(^^;)。
それだけがちょっと残念、マジで。

真説・長州力

▼真説・長州力 1951-2015 / 田崎健太

ど真ん中こと、長州力の半生を居ったノンフィクション。
本人もさることながら、周辺の人物丹念なインタビューを繰り返し仕上げら
れた力作。長州だけに(^^;)。

・・・まぁ、本来の僕ならば間違い無く“買ってはいけない”本であることはまぎれ
もない事実。なんつったってこの本は、あの長州力に関する本なのだから。

ハッキリ言って僕は長州力が嫌いだ。嫌いな理由はここでは書ききれない(^^;)。
長州の試合は生で百回は観ているし、映像であればもう何百試合分観ているか解
らない程。ただし、ある一時期を除いて長州を応援した覚えが無い。この時期と
言うのは全日本プロレス参戦時「お前がダメだと新日本がダメだと思われる」
という感情から、本当に仕方無く応援していただけの話。

そんな長州の本を何故読もうと思ったのかと言うと、先にこの本の取材を受けた
他のレスラーが多媒体で受けたインタビューを何本か読み、興味が沸いたため。
おおよその人たちは辛辣であり、罵詈雑言の嵐。どんな酷い本か確かめてやろう、
という凄く否定的な理由で入手したのだが・・・。

思った以上にちゃんとした本だった。
特に学生時代、オリンピックに出場を果たす程優秀だったアマレス時代の記述は
ある理由からこれまで表に出ることは殆ど無かった。その部分が読めただけで
吉田光雄というアマチュアレスラーとその周辺の名選手たちに興味が沸いたし、
同じくこれまで語られる機会の少なかった最初の海外遠征時のエピソードには
いわゆる“下積み”の苦労が滲み出て、読み応えはかなりあった。

しかし、この内容を「真説」とするのはどうかと思う。コレはマジで。
新日本プロレスをこれまでの新日本では無い組織にしてしまったのは間違い無く
長州であり、全日本時代にジャンボ鶴田ブルーザー・ブロディに完封され、
全日ファンにニヤニヤされたのはトラウマになりそうな屈辱だった。そして何よ
り、大失敗していろいろな選手の将来を変えてしまったあのWJは、長州の我儘
で出来た団体だと言うことに間違いは無い。そういう、圧倒的な罪が明確にある
のに、論調がやや「いい話」になっているのは、ちょっと納得が行かない。

ただ、長州力というプロレスラーのキャリアに基づいた関係者へのインタビュー
には一読の価値あり。残念ながら、僕の長州力というプロレスラーの評価は全く
変わらなかったけど。

Los Ingobernables get the IWGP!

春の定番となった新日本プロレス「INVASION ATTACK」をNJPW Worldにて。
久々に語りどころの多い大会になる、と予測していたのだが、終わってみれば
印象に残っているのは↓↓の試合だけだった。

IWGPヘビー級選手権 オカダ・カズチカ vs 内藤哲也
制御不能キャラになってから初のIWGP王座戦に挑む内藤に注目が集まった試合。

驚いたことに、満員の両国は8割が内藤声援
無論、オカダ相手に真っ向勝負を仕掛ける、などの殊勝さは今の内藤には無い。
ロス・インゴベルナブレスのメンバーはいつものように乱入を繰り返す。
解説者曰わく「10年前の新日本だったら暴動モノ」。しかし、観客はソレも
込みの内藤を強力に支持しするのだから、新日本の風景も本当に変わった。

そして、決着も乱入
恥ずかしいことに、インゴベルナブレスの新メンバーはマスクを取るまで全く
正体が解らず。仮面の下から真田聖也の不貞不貞しい表情を確認した時には、
久々に度肝を抜かれた

内藤は完璧なリベンジを遂行した。
以前自分を口汚く罵った観客をほぼ全員味方に付け、タイトル戦の権威もへっ
たくれもない傍若無人な試合をしながらも、起こるのは拍手、そして大歓声。
IWGPベルトをリング上で投げ捨てたにもかかわらず、である。

コレはちょっと、非常に面白い展開になってきた。
ファンの支持を得、ある意味何をやっても許されるキャラクターを獲得した
内藤哲也の姿が、ヒールのまま圧倒的に観客に支持された全盛期のロック
姿にダブって見えた。こうなるとこのチャンピオンは圧倒的に強い。
もしかしたら、年内いっぱい王者のままで年を越すんじゃないか、と。

中邑・AJ・飯伏不在の不安すら飛んだ。そう、もう過去のことをあれこれ考
えている場合では無い。今年は内藤から目が離せなくなりそうだ。

制御不能、NEW JAPAN CUPを制す!

新日本プロレス・春の本場所「NEW JAPAN CUP 2016」決勝戦を、いつもの
ようにNJPW WORLDにて観戦。昨夜の試合で会場は青森。あれから5年後、
東北でNJC決勝を行うあたり、新日本もかなり

決勝戦は内藤哲也vs後藤洋央樹
ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの内藤は準決勝でCHAOSの矢野通を、
「恥男」にして鋭意無所属中の後藤は異常人気のマイケル・エルガンを下して
の決勝進出。ちなみに内藤vs矢野の曲者同士の一戦は、短い時間ながらも内容
の濃い名勝負だったと思う。

さすがに決勝、力の入った好勝負を展開。
しかし、試合のペースは常に内藤が握っていた感は否めず。正直に言うのなら、
ハッキリと「役者が違う」感じがした。後藤は自らの技を出し切らされ、手詰
まりになったところを完全フォール負け、挙げ句の果てには試合後にオカダの
握手を受けてのCHAOS入り。そもそも後藤は好きな選手では無いのだが、後輩
たちにここまで差を付けられてしまうと、ちょっと気の毒ですら。

つまりは内藤の横綱相撲
終わってから思えば、NJC2016の優勝はコレ以外あり得なかった気がする。
内藤の優勝特典チョイスはIWGPヘビー級王座への挑戦。なんだかんだ言ってた
のだが、結局両国「INVASION ATTACK」で王座戦は行われる模様。

今の内藤哲也、いろんな意味で本当に面白い。
これまでに無かった制御不能というアイデンティティを持つ新種のヒール
ここでIWGPを取るべきだし、王者としての資質も十二分にある。両国に期待!
・・・取れなかったら後藤と同じ道を歩きそう(^^;)。それもあり得るなぁ・・・。

Bye Bye Machine-Gun…

新日本プロレスROH特別興行、「HONOR RISING」2.20後楽園ホール大会
NJPW Worldにてタイムシフト観戦。昨年サンノゼで観戦したROHは噂通り
レベルの高い選手が揃っており、この日本での大会もほぼハズレ無し。
しかし、今回はこの大会で日本を離れるこの選手について。

“ザ・マシンガン”カール・アンダーソン。
新日本・旧LA道場出身。プロレスラーとしてのキャリアはほぼ全てが新日本
のリングであり、ファンから全くガイジン扱いされなかった選手。

相棒のドク・ギャローズと共にこの試合を最後に新日本を離れるアンダーソン。
味のあるバイプレイヤーであり、どんな相手にも、どんな場面にも対応出来る、
すばらしいプロレスラーである。WWEが目を付けるのも当然だろう。

感極まった表情のマシンガンに降り注ぐアンダーソンコール。苦しい時もずっ
と頑張ってくれたカール・アンダーソンを、新日本ファンはきっと忘れない。
この場面、さすがに少し泣きそうになった。

AJアンダーソンギャローズも、そしてもちろん中邑も、新日本が世界に
誇れる名選手。WWEに「新日本」を刻み込んで欲しい。魂込めていけば、
絶対に世界は奪れる!