告白 平成プロレス10大事件 最後の真実

▼告白 平成プロレス10大事件 最後の真実 / V.A

プロレス内幕暴露系ムックでお馴染みの宝島社
ところが、最近発行するプロレス関係の単行本、例えば「証言UWF」など
は、暴露本の色合いが少ないかなり良質なモノ。今回の作品も見事にソレ
に該当する、読み応えバッチリの証言集。

興味深かったのは、この手の企画ではなかなか取り上げられることのない
全日本プロレスの話題がいくつかあること。特に秋山準の語る四天王プロ
レスの話があまりに恐ろしい。エスカレートにエスカレートを重ねた結果
が三沢さんの死だとするなら、その原因の一端は間違い無くファンである
我々にもある。正直、いたたまれなくなってしまった・・・。

コレだけでなく、他のどの話題も目の付け所が良い
元Uインターの幹部3名(宮戸・安生・鈴木健)がまさかの再会を果たし
ているし、故・橋本真也さんの夫人であったかずみさんの談話の赤裸々さ
も凄いインパクト。お世辞抜きに、退屈しないプロレス書籍だと思う。

いいと思うな、宝島。
こういう本ならもう毎月出して貰ってもOK。ファンにはオススメです!

悪いうさぎ

▼悪いうさぎ / 若竹七海(Kindle版)

若竹七海女探偵・葉村晶シリーズ第二弾(なのか?)。
このシリーズでは初の長編であり、“不幸を呼び込む女探偵”葉村晶
20台最後の事件。これまた非常に厄介な事件である。

家出した女子高生ミチルを家に連れ戻す、という、わりと簡単そうな
依頼から全てが始まる。大したことの無い仕事のハズなのに、仲間内で
あるはずの人間から思いも寄らぬ妨害を受け、いきなり死ぬ思いまです
不幸の女王(^^;)。そこまでして助けたミチルとその周辺の大人たちか
ら、ミチルの友人たちが次々に行方不明となっている事実を知る。よせ
ばいいのにそれが仕事となってしまい、クビを突っ込んだらまた・・・と
いう内容。

・・・いやぁ、面白い
冷静に考えると設定にかなり無理があり、リアリティの欠片も無い気が
するのだが、実際に読んでみるととにかく臨場感が凄い。サスペンス風
の描写はもうさすがのレベルであり、冷静になる隙さえ与えてくれない
この作家の筆力、もっともっと評価されていい。

そして、ミステリーとしての完成度も相当なモノ。知らぬ間にいくつも
の伏線がばらまかれ、終盤でそれらが一気に回収されていく、という
つものスタイルは本当に気持ちが良い。そして事件の真相は、正直予想
もつかない恐ろしさ。スタンディングオベーションを送りたいほど。

ストーリーが冗長、という意見が多く見られるけど、それはもう好き嫌
いの問題。ハードなミステリーが好きな人は間違い無くハマると思う。
若竹七海、僕は好きです!

・・・残りは最新作第0作(?)があるんだけど、どっちにすべきか・・・。

暗い越流

▼暗い越流 / 若竹七海(Kindle版)

若竹七海短編集
女探偵・葉村晶シリーズ読破中なのに何故に短編集なのかと言うと、この
中にも葉村さんが登場している、という解説を読んだから(^^;)。まぁ、
中途半端な読書スタイルな気もするけど、なんとコレがなかなかの傑作
巡り会っちゃったかも。

全5篇からなる短編集で、特に連作というワケではない。しかし、どの篇
あまりに捻りの利いた秀作であるため、妙な統一感まで醸し出している
のだから凄い。統一感の理由はそれだけではなく、5篇全てに恐ろしく後
を引くオチが用意され、どれを読んでも読後に「うぇ〜・・・」と思う筈。
テーマがきっちり統一された、理想的な短編集だと思います、ええ。

そして葉村晶エピソード2篇、実はコレが非常に重要な内容だった。
特に「道楽者の金庫」に関しては、探偵を休業した葉村晶が何故にミステ
リ専門書店“MURDER BEAR BOOKSHOP”でアルバイトをするハメになっ
たのかが解る。つまり「さよならの手口」以降の展開のキーとなるエピソ
ードで、これを読んでいる・いないで理解度が格段に違う気がする。

・・・まぁ、つまりまた順番をちょっと間違えたワケだけど(^^;)。
先に予告しとくと、次に読むのは「悪いうさぎ」にするつもり。こうな
っちゃったらもうジグザグに走るので(^^;)。

さよならの手口

▼さよならの手口 / 若竹七海(Kindle版)

若竹七海女探偵・葉村晶シリーズ第三弾
またもや順番を間違えたらしく、第二弾を読む前にコッチを読んじゃった
のはご愛嬌、ということで。

こちらは長編「依頼人」ではギリギリ20代だった主人公・葉村晶も介護
保険の徴収対象に(^^;)。環境も完全に現代になっており、この年代の女性
らしく近代機器(^^;)のスマホ操作に四苦八苦。探偵一時休業しており、
現在の立場はミステリ専門書店のアルバイト。シェアハウス住まい独身
というのが初期設定。

書店でのアルバイト中、文字通り「降ってて沸いたような不幸な事件」
巻き込まれ、入院したのが運の尽き(^^;)。同室の老婆から調査を依頼され、
渋々ソレに首を突っ込んだところ、これがあまりに深い事件で・・・といった
内容。

とにかく感心したのは、ありとあらゆるミステリの手法が百科事典の如く
登場してくること。そして長編らしく伏線も随所に散りばめられ、ラスト
近くでほぼ一気にそれが回収されている、という、ミステリファンにとっ
ての「爽快」を感じさせてくれる物語。決して大ハッピーエンドではなく、
扱われている事件もやや暗めなのだが、前述の通り読後感は決して悪く無
いのだから凄い。

短編で感じた「中途半端さ」は見事に消え、全てがスッキリするミステリ
ーの王道と言って良い内容。このシリーズ、僕にとっては“長編≧連作短編”
なのかもしれない。

こうなったら順番関係無く、しばらく葉村晶にハマってみるつもり。
取り敢えず、次はどれにしようかな?

屍人荘の殺人

▼屍人荘の殺人 / 今村昌弘(Kindle版)

何故だか毎年購入している宝島社「このミステリーがすごい!」
愛称「このミス」2018年度版で、国内作品1位を獲得した新人作家作品
作者の今村昌弘はこの作品でこのミス1位だけでなく、第27回鮎川哲也賞
週刊文春ミステリーベスト第1位を受賞。いわゆる三冠王である。

・・・と言いながら、実はそれほど期待せずに読み始めた。
というのも、歴代のこのミス1位作品はおおよそ読んでいるのだけど、ハマ
るモノとそうでないモノの落差が激しかった所為。まぁ、面白かったら儲け
もの、という感覚にて。

いわゆるネタバレがあると致命傷になる作品なので詳しい説明は敢えて省く
が、ざっくり言うと「本格的な密室ミステリと超B級ホラーの融合」。ちょ
っと間違えるととんでもない内容になりそうな、非常に危険なコラボレーシ
ョンなのだが・・・。

その部分はなかなか見事にまとまっている。ミステリー好きには邪魔になり
そうなホラー要素が、邪魔どころか事件を展開させる重要なアイテムと化し
ているのだから、構成力・筆力はかなりのレベル。しかし・・・。

・・・結果として「つまらなくは無い」(^^;)。
いや、どちらかと言えばかなり面白い内容だとは思うのだけど、肝心の
「密室」の設定がちょっと解り辛いのが難点。綾辻行人作品のように、最初
にしっかりした現場の見取り図こそ付いているが、何かが起こる度にアレ
見返すのは非常に辛い。これは作者の所為では無く、単にKindle版を選んで
しまった僕のミステイク通常の書籍だったら、こういう感想では無かった
かもしれない。

しかし、重要と思われる登場人物があっさり死んだり、思いもよらないトリ
ックで実行される殺人など、評価すべき部分も多々。特にクライマックス
盛り上がりは尋常では無く、後半になればなるほど読む手が止まらない。
今村昌弘、今後が非常に楽しみ。

ちなみにこのミス2018の中には、他にもちょっと興味のある作品が。
やっぱり便利なんだよなぁ、あのムックって・・・。