マスカレード・ナイト

▼マスカレード・ナイト / 東野圭吾

東野圭吾の新作は高級ホテルを舞台とするマスカレード・ホテルシリーズ
前作の「イブ」が2014年だから、どうやらこのシリーズのリリーススケジ
ュールは3年に1度、ということらしい。もちろん発売日に入手したのだけ
ど、別の本が読み終わらず、ようやく一昨日から読書開始。しかし結局、
約2日で一気に読み切った。

大晦日にホテルコルテシア東京で行われる仮装カウントダウンパーティー
「マスカレード・ナイト」を利用した計画犯罪。この情報を察知した警視
庁捜査一課は、刑事・新田浩介をまたもや同ホテルに潜入させ、いまや
コンシェルジュの位置にまで上り詰めた山岸尚美と共に犯罪阻止に動く、
という内容。

・・・すばらしい
やたらに魅力的なキャラクター陣に加え、伏線の張り方とその回収は完璧。
怪しい人物は何人も出てくるのだけど、僕には最後の最後まで全く犯人の
見当が付かなかった東野圭吾の真骨頂とも言える、文句の付けようのな
いミステリー。ただただ脱帽するしか無い。

このシリーズが始まってから、コルテシアのモデルとされる水天宮ロイ
ヤルパークホテルにやたら親近感を持つ始末。そのくらい大好きなシリー
ズなので、3年に1度と言わず、毎年新作を出して欲しい。

ミステリー好きは必読。とにかく面白いので。

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終電の神様

▼終電の神様 / 阿川大樹(Kindle版)

お馴染みKindleストアのリコメンドに出てきた作品。
タイトルに惹かれて購入したのだが、そこに小さな問題が(^^;)。まぁ、
大したことは無いのだけど、理由は後述。

奥付によると、阿川大樹という作家はあの劇団夢の遊眠社旗揚げメンバー
役割はいわゆる音効さんで、舞台で使う曲をほぼ作曲していたらしい。そし
半導体技術者としての顔もあり、さらに小説家。非常にマルチな才能を有
する人であることは間違い無い。

体裁は連作短編
(おそらく)人身事故運転停止した夜の満員電車に偶然乗り合わせた人た
ちの様々な「事情」を、切れ味鋭く描写した“深い”系ヒューマンミステリー

タッチは若干暗めで、かなり重たいエピソードもあるのだが、全体的な印象
は真逆。一遍を読み終わるたびに、じんわりとした感動が浮かんでくる佳作。
電車の遅延は日常的に起こる現象だが、そこにフォーカスして人間ドラマを
いくつも書き上げるセンスは、単純に凄いと思う。

小さな問題とは、この電車がどうやら終電では無い、ということ(^^;)。
Amazonのレビューによると、「人身事故の神様」からの改題らしい。
改題前のタイトルならすごく納得出来る作品集なのだけど、「終電」という
言葉がわりと強力で、ちょっと内容がブレちゃってる感あり。確かにイメー
ジは悪いけど、元のままの方が良かったんじゃないかなぁ・・・。

しかし、あくまで小さな問題。全体的にはじっくり読ませてくれる作品集
ので、タイトルに惑わされずに読むことをオススメしておきます!

花びらめくり

▼花びらめくり / 花房観音(Kindle版)

全5篇から成る短編小説。
いわゆる官能小説なのだけど、全てが「日本文壇名作のパロディ」である。
元ネタは以下の通り。

■藪の中の情事 → 藪の中 / 芥川龍之介
■片腕の恋人 → 片腕 / 川端康成
■卍の女 → 卍 / 谷崎潤一郎
■それからのこと → それから / 夏目漱石
■仮面の記憶 → 仮面の告白 / 三島由紀夫

・・・誰もが一度は読んだことのありそうな名作ばかり(^^;)。
それをモチーフに官能小説を書く、というアイデアがまず秀逸だし、それ
実行に移す行動力にも感服する。「官能」という方向から見ると、やっ
ぱり文学的で比較的おとなしめな印象だが、実はかなりどぎつい描写がキ
ッチリ詰め込まれているから、いろんな目的の人が満足できそう。

さらに、物語の組み立てがハッキリしているため、映像化にも向いてそう。
さすがに地上波は無理だと思うけど、Amazonプライムあたりでオリジナ
ル作品として製作されたら、ちょっとした人気作品になるかもしれない。

あとがきによると、著者の花房観音女流作家にして第1回団鬼六賞大賞
受賞者。そして驚くことに、今も京都で現役のバスガイドとして活躍して
いるらしい。そういうのも、なんかエロくていいなぁ(^^;)。
この作家、ちょっと注目。何かの時に別の作品も読んでみますよ、ええ。

フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで

▼フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで
/ ケンドー・カシン(Kindle版)

“悪魔仮面”こと、ケンドー・カシンの半生記。
カシン自身が執筆したワケでは無く、インタビュー集。幼少期→アマレス
時代→プロレス・格闘技時代→慶応大学非常勤講師時代(プロレスラー兼
務)までを、本人が丁寧に、そしてシニカルに語っている。

そもそもカシンのプロレスは完全に予測不能であり、すれっからしのファ
ンであることを自認している僕でさえ、いつも意表を突かれてしまう
IWGPジュニア王座を戴冠した時には勝手に自前のチャンピオンベルト
造ってしまったし、最近では意味なくパンダ(FMW参戦のパンディータ
という着ぐるみ系プロレスラー)を襲いワンマッチ興行までやってしま
う、という、理解不能ながら爆笑せざるを得ない行動を取ってしまう。

・・・無論この本も、まぁ、面白い(^^;)。
皆はカシンを「へそ曲がり」とするが、事実はきっと。あまりに自分に
正直に生きているが故に、その様がへそ曲がりに見えているだけかと。
そしてカシンが“発想の天才”であることがすぐさま解る、「カシン解読マ
ニュアル」的な非常に興味深い一冊になっちゃてるから、それがもう痛快

しかし、ニッチだなぁ、この本(^^;)。
さすがにカシンを知らない人は、読んでも意味が解らない可能性アリ。
もしかしたら、爆笑するかもしれないけど。

花咲舞が黙ってない

▼花咲舞が黙ってない / 池井戸潤(Kindle版)

池井戸潤人気シリーズが、遂にタイトルロールでリリース。
同名のテレビドラマも続編の待たれる傑作であり、コレはシーズン3
制作も近いか?とか思ったのだけど、ちょっと問題アリ(^^;)。だって・・・。

銀行トラブルシュートモノ連作短編集で、無論いつもの通りメチャクチャ
面白い。全7話、捨てエピソードの類が一切無く、しかも各話を微妙にリンク
させることで、あたかも長編を読了したかのような手応え。池井戸潤の魅力
全開と言って過言の無い作品なのは絶対に間違い無い。しかも映像向き(^^;)。

じゃあ、ドラマ化になんの問題があるのか?と言うとだね・・・。
同じく大人気の銀行ドラマの主人公のあの人が・・・かなり重要な役で出てき
ちゃうのだから、ちょっと映像にするのは無理な気が(^^;)。なんつったて
こちらは日テレ系、向こうはTBSの日曜9時作品。6チャンネル側の偉い人
の大英断があり、尚且つやたらと忙しい昨年の大河主演俳優のスケジュール
が押さえられなければ・・・。やっぱ無理かなぁ(^^;)。

そういうワケである意味残念なのだが、作品にはなぁんの問題も無い(^^;)。
池井戸潤の真骨頂、お楽しみあれ!