獣神サンダー・ライガー自伝(上)

▼獣神サンダー・ライガー自伝(上) / 獣神サンダー・ライガー

“リビングレジェンド”という言葉が誰よりも相応しいプロレスラー、
獣神サンダー・ライガーの自伝。新日本プロレスのスマートフォンサイト
で連載されていたインタビュー集を加筆・訂正し、さらに素顔の山田惠一
時代を加えたモノ。

ライガーが山田惠一としてデビューしたのは1984年のことだから、その
キャリアは30年を余裕で超えている。同じようなキャリアの選手は他に
も居るが、決定的に違うのはライガーが今も第一線である、ということ。
例えば今、IWGPジュニアヘビー級選手権が他団体に流出するようなこと
があれば、ファンからは絶対にライガー待望論が起こるハズ。本人も認め
ている通り、体力や技術では今の若い選手には及ばないが、そういうもの
を超越した絶大なる「信用」ファンから勝ち取っているところが凄い。
そしてその状況は日本だけでなく、プロレスのある世界のあるゆる国に及
んでいるのだから、これを生ける伝説と呼ばずになんと呼ぶのか・・・。

・・・ライガーのことならもうエンドレスに書き続けることが出来るのだが、
そうなると下巻で書くことが無くなってしまうのでこのあたりで。つまり
この作品はそんなレジェンド、ライガーが語る自らの半生。自身が最高の
プロレスラーなのに、感覚は僕らと同じプロレスファンそのまま。僕らが
想像するだけだしか出来なかった「夢のカード」を、ライガーがどれだけ
実現してくれたか・・・。そんな人の話がつまらないワケが無い。

20年以上前、ある作家がライガーのことを「正しいプロレスラー」と表し
た。“正しい”という言葉の捉え方は人によって違うが、ライガーを正しい
プロレスラーとすることに異論を唱えるプロレスファンはおそらく一人も
居ない。

文字通り、「神」の言葉。読み終わればきっと、誰もが信者になっている。
・・・とにかく早く下巻を! いつなんだ、発売日(^^;)。

プロフェッション

▼ST プロフェッション / 今野敏(Kindle版)

3年前の夏に約1ヶ月シリーズ全12作を読み終えるほどハマった、
今野敏STシリーズ。久々の新作、と言いたいところだけど、実際には
去年の3月にリリースされていた模様(^^;)。Amazonのリコメンドは優秀
なのに、どうしてコレをお知らせしてくれなかったんだろうねぇ(^^;)。

それはともかく、今回フィーチャーされるのはやっぱり「美しきプロファ
イラー」こと青山くせ者揃いのSTメンバーの中でも、突出した個性で
人気の青山が、思わず唸ってしまうほどの超洞察力を披露。それを百合根
赤城と言ったお馴染みのSTメンバーが切れ味鋭くサポートするのだから、
面白く無いワケが無い。

とはいえ、問題が無いワケでも無い(^^;)。
これまでの作品に比べると、ややあっさりしてる気が。もう一捻りしてく
れると“ザ・今野敏”的な世界観が感じられると思うのだけど・・・。

まぁ、それでもエキサイティングな警察小説であることは間違い無い。
これまでSTを読んできた人たち、特に青山ファンは必読!

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水族館ガール4

▼水族館ガール4 / 木宮条太郎(Kindle版)

昨年の今頃、シリーズ3冊一気読みした木宮条太郎「水族館ガール」
シリーズ最新作がリリースされてたようなので、さっそく購入。相変わら
ず表紙のイラストカワイイ

久しぶりなので舞台設定を思い出すのに時間がかかるかと思われたのだが、
数ページ読んだだけですぐに復活。知らぬ間に中堅の位置まで上り詰めた
主人公・由香が、更に飛躍する段階を切り取った物語となっている。

今回の主役はほぼペンギン。いろいろな水族館でアイドルの地位を欲しい
ままにしているペンギンの飼育に関する蘊蓄が凄まじいまでのリアルさ
描かれる。圧倒され続けた挙げ句、篇のラストでは号泣する始末。このシ
リーズってこういう感じだったっけ?とか思わず。

しかし、オーラスあたりに詰め込まれた由香と先輩・梶との恋物語や、お
待たせのニッコリー登場などは、思わずニヤッとしてしまう程の爽やかさ
・・・行きたくなっちゃったよ、水族館に(^^;)。

とにかく、特殊業務モノとしては読み味の良い佳作。来年の今頃には、新
しいエピソードが読めるといいなぁ・・・。

風味さんのカメラ日和

▼風味さんのカメラ日和 / 柴田よしき(Kindle版)

タイトルだけでサクッと購入してしまった小説。
もちろんカメラバカとしてのチョイスで、特に期待してたワケでも無かったの
だけど、これが・・・。

カルチャースクールのカメラ講座を舞台としたヒューマンミステリー。
しかし内容はかなり「撮影術」に偏っており、専門用語もバシバシ飛び出す。
かといって決して難しい内容ではない。どころか、その専門用語が非常に解り
やすく解説されているから、デジタル写真撮影術の指南書としてかなり優秀。
更に言うのなら、「写真を撮る」ことに対する心構え・・・いわゆる精神論・・・の
部分は、これまで読んだどんな写真関係の本よりも心に刺さったのだから、
これから本格的(?)に写真をやろう!と思っている人には最高のガイドブッ
になるかもしれない。

柴田よしきという作家は初めてなのだけど、調べてみると著作は多々。それも
ハードなミステリー系を書いている女流作家さんらしい。
・・・とするなら、この作品はかなり特殊なジャンルに入る気がするなぁ(^^;)。
ただちょっと気になるので、他の作品も読んでみることにします。
そして、この作品の第二弾にも期待。まだエピソードの出てこない人が2〜3人
いるので、是非!

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Private KWAIDAN

▼私的怪談 / 真梨幸子(Kindle版)

突然発売された真梨幸子電子書籍
いわゆる“自費出版”に近いかたちのリリースで、作者本人の体験に基づいた
短編20以上集めたもの。どちらかと言えばエッセイ集なのだが、タイトルに
「怪談」とある通り・・・。

真梨幸子はいまや押しも押されぬ「イヤミス」の第一人者であり、人間の悪意
を描かせたら彼女の右に出る作家は皆無。もはや孤高の存在であり、僕の中で
は既に教祖。新たなリリースが発表される度に、「幸子サマの新作」と崇め、
全てを速攻で購入する始末なのだけど・・・。

ずっと気になっていた彼女のバックボーンが、かなり赤裸々に記載されている
ところが凄い。こんな事実を、かんたんに発表しちゃっていいんだろうか?と
こちらが心配になるくらい生々しい。そして、あれくらい波瀾万丈な幼少期を
過ごしたのであれば、彼女が書く作品に“異様なまでの悪意”が内包されてしま
うのも仕方の無いこと、と納得。というか、これは「必然」だったのだ、とい
う思いを強くした次第。

昔何かの作品のレビューで「この作家の精神状態が本当に心配」と書いた記憶
がある。おそらく今の彼女が出来上がるまで、この作品に書かれたようなある
壮絶な出来事が多々あり、その上で形成された屈強な精神極上の悪意を創
り出している、という気が。こちらが心配しても、それはきっと全くの無駄。
真梨幸子が真梨幸子たる由縁が、この作品の随所に散りばめられている。

いわゆるホラー作品とし見れば、決して怖い話では無いのかもしれない。
しかし、ここに載っている全ての作品があの幸子サマ実体験と考えると、そ
こらへんのホラーが全て吹き飛んでしまう程の怖さを感じる。間違い無く一般
向きの作品では無いが、ファンなら絶対に一読しておくべき。この作家はきっ
と今後も恐ろしいまでの悪意をこちらに提示してくれる、と確信出来るハズ。

この作品、リリースは電子書籍のみで、更にはUnlimited扱い。であるから、
商業的な成果を期待して発売されたモノでは無く、マニアとしては感謝しか無
いのだけど、一点だけ苦言。
・・・できれば、縦組みの構成にして欲しかった。まぁ、大きな問題では無いの
は明らかなんだけど(^^;)。