擬態

▼擬態 / 永嶋恵美(Kindle版)

永嶋恵美、一挙に4作目に突入。タイトルは「擬態」
なぜにコレを選んだのかと言うと、紹介文の中に大好物の“イヤミス”という
ワードを発見したから。ここまで読んだ3作品にはそういう香りはしなかった
のだけど、もしや!と思いつい・・・。

で、結果から言えば決してイヤミスではありませんでしたよ、ええ(^^;)。
どちらかと言えば叙述トリックの使い方が秀逸なドンデン返し系ミステリー
物語の9割は2人の女性の日常描写で埋め尽くされているのだが、最後の最後
で全てが繋がる展開。何を書いてもネタバレしそうなので内容はもう書かな
いことにしときます(^^;)。

つまり、ある程度読み込めば少しオチが読めてくる人が多々居そうな感はある。
しかしこれは僕にとって決して致命的な弱点では無かった。というのも、9割
を費やしたヒューマンドラマの部分が淡々としていながらそそる内容であり、
ストーリーに対する興味が切れなかったから。正直、僕もオチの想像は付いた
のだが、その後の話の仕舞い方の巧妙さに思わず感心してしまった。

これまで読んだ作品の中で敢えて似てるのを選ぶとするのなら、乾くるみ
「イニシエーション・ラブ」あたり。ただ、あちらで感じたあざとさはこの
作品には無く、読み終わった後で怒りを覚える(^^;)ことも無いと思う。

最後にアッと驚くタイプのミステリーが好きな人は是非。
もちろん、タイトルにキチンと意味あり!

別れの夜には猫がいる

▼泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる / 永嶋恵美(Kindle版)

永嶋恵美・泥棒猫ヒナコの事件簿シリーズ第2弾。
・・・徳間書店の担当者はもう少しシリーズタイトルに気を遣った方が良い(^^;)。

今回も連作短編。今回はオフィスCATの周辺人物にスポットが当たっており、
前作よりも各エピソードのが確実に深い。故に全体の印象が若干重たくなっ
ているのだが、読み応えは逆に増している感あり。

考えてみれば、恋愛関連の素材はそのへんに虚実入り乱れていくらでも転がっ
ている。そのあたりをアレンジすれば、この作家ならいくらでも新しいエピソ
ードは創り出せる気がする。といっても、この作品は2011年出版。もしかし
たら第3弾は無いのかもしれないけど(^^;)。

総体的に詳細を書かない・・・解りやすく言うのなら、ラストに筆が若干足りな
いタイプの作家さんなので、好き嫌いはハッキリ分かれると思う。個人的には
かなり波長が合いそうなので、電子書籍版を片っ端から読もうと思う。

良い作家に巡り会えたかも。

「暗殺教室」の見事な終わり方

週刊少年ジャンプで連載していた「暗殺教室」
本日売りの本誌にて4週に渡った追撃戦・スピンオフエピソードも終了の模様。
4年弱に渡った連載は単行本にして20冊分全180話+番外編4話
人気はほぼ絶頂期なのにもかかわらず、ストーリーに歪みが出ないうちに潔く
終了。全く以てすばらしい作品だったと思う。

少年誌なのにも関わらず、テーマは「暗殺」。一歩間違えば危険な領域なのに、
どちらかといえば金八系に近いハートフル学園モノの香りを始終感じさせ続け
松井優征の構成力は見事としか言いようが無い。きっと、この作品に影響を
受けて教師を志す若者も増えるんじゃないだろうか?・・・そういう事例が本当
に出て来そう(^^;)。

そして、またもや“定番”が一つ終わってしまったジャンプ。
ONE PIECEは心配無いにしても、人気作品もしくはかつての人気作品(^^;)に
終了ないしは打ち切りの香りのするものがいくつかあるのが気になる。
個人的には篠原健太の新連載を待っているのだが、果たして?

そして、もちろん松井優征の次回作にも期待。取り敢えずお疲れ様でした!

▼暗殺教室19巻 / 松井優征 ※最終巻の一つ前♪

あなたの恋人、強奪します

▼あなたの恋人、強奪します。泥棒猫ヒナコの事件簿 / 永嶋恵美(Kindle版)

さっそく永嶋恵美作品2作目。
多少予備知識が出来たので、レビューを見て評判のよさそうなシリーズモノ
チョイスしてみた。なんちゃらの事件簿、というサブタイトルは若干寒い(^^;)。

連作短編の体を為した特殊な探偵モノ
怪しげなサイト中心に広告を出すオフィスCATの業務はいわゆる別れさせ屋。
ワケあって彼氏や旦那と別れたい、もしくは誰かを別れさせたい、という種類
の依頼を受ける、ある意味でかなりダークな組織である。

こういう裏系の仕事は、いわゆるその筋の人たちがたくさん登場するヤバめの
物語になる場合が多い。それはそれで決してキライな流れでは無いのだが、こ
の作品のテイストはそういう系統と大きく異なる。

主人公の皆実雛子はどんなタイプの女性にも変身でき、人の行動様式や気持ち
が先読み出来る、いわゆる万能タイプの探偵。こういうヒューマンヒーロー
ヒロインだけど♪)な流れでこの手の題材を料理する、というのが実に痛快
本来題材は基本、オトコとオンナのトラブルだから、実際はかなりドロドロ
た話の筈なのに、さっぱりした爽快青春モノを読んでいるような気分になった
りするのが不思議。

コレはすっごくオモシロイ
既にシリーズ2作目がリリースされているのも頷ける内容だと思う。
ちょっと変わったヒューマンミステリー愛好家にオススメです!

インターフォン

▼インターフォン / 永嶋恵美(Kindle版)

久々にKindleストアのリコメンド購入。
舞台はおそらく首都圏近郊巨大団地。そこに住む様々な人々の様々な「事情」
をミステリータッチで描く全10篇短編集。もちろん、永嶋恵美作品は初。

現在は地名に「団地」が付いている場所が多々あり、その言葉の意味は昔と少し
違って来ていると思うのだが、ここで言う団地のイメージはもうすっごい昔から
ある“ザ・団地”的なもので相違無いと思う。具体的に言えば築30年前後・4階建
エレベーター無し全く同じデザインの建物が8つくらい並んでる感じ。
もう少し膨らませると、中庭には錆びたジャングルジム砂場、1号棟の1Fには
聞いたことの無い名称の小さなスーパーマーケットが細々と営業を続け、店の前
のベンチでは買い物帰りの主婦たちがお喋りに高じている・・・というところか。
こうやって改めて考えると、ちょっと異様な場所だよな、団地って。

この作品はいろんなところの短編を集めて一冊にしたモノ。しかし、全話から
“同じ団地”のイメージを感じさせるテクニックは見事に尽きる。
この作品内で起きる“事件”は、実はどれもなんて事の無い日常な気がするのだが、
団地特有の人間関係をフィルタに入れた瞬間にサイコさが増す。さらに殆どの章
結末を書かず、ラストに含みを持たせる手法が使われており、その先を想像す
ると薄ら寒くなるのだから、コレは効果抜群
この作家さん、個人的にはかなりのテクニシャンだと思います、

欲を言うのなら、各物語に関連性を付けて貰えれば楽しかったな、と。
例えば、ある篇の主人公の親子が違う篇の主婦の井戸端会議で自殺してた、と
言うことが解る、みたいなモノ。それがあれば、もう手放しで褒めた気がする。

サイコ系の作品が好きで、さらに短編がお好みな人はぜひ。
僕は取り敢えず、永嶋恵美他作品を読んでます、現在は(^^;)。