売春島

#タイトル


▼売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ / 高木瑞穂(Kindle版)

Kindle Unlimitedで適当に選んだノンフィクション
高木瑞穂という作家はもちろん初めてで、コレをチョイスしたキッカケ
ストレートなタイトルにあったのだが・・・。

三重県志摩市に実在し、かつては街を挙げた「売春」行為で潤っていた
渡鹿野島に関するルポ。島のルーツや関連する人々に対する取材綿密
で、隆盛期から衰退した現在までをしっかりフォローしている。が・・・。

ちょっと前に数作一気に読んだ國友公司作品と比較すると、臨場感に欠
ける感否めず。緊迫感を煽る書き方をしているところが正直あざとく
今ひとつ盛り上がりに欠ける。タイトルがタイトルだけに、もう少し
っぽい話を混ぜることも出来た気がするが、もしかしたらそういう描写
が苦手なのでは?と勘ぐってしまう。

一応読破したが、後半はちょっと苦痛(^^;)。
他著作を調べたところ、それなりに興味を惹くモノはあるのだが、また
タイトル詐欺だったらイヤだなぁ、と。う〜ん・・・。

ホワイ・ダニット

#エンマ様


▼ホワイ・ダニット / 佐藤青南(Kindle版)

佐藤青南行動心理捜査官・楯岡絵麻シリーズ第9弾
前にレビューした『楯岡絵麻vs佐藤青南』はどうやらシリーズ外の扱い
だったらしく、本作から2Wordsのタイトルが復活。今回も定番連作
短編の体を取っている。

シリーズがここまで長くなったおかげか、かつては組織内敵対してい
同じ捜査一課のメンバーとの関係性が微妙に変化。エンマ様こと、
岡絵麻とその部下・西野が主導権を取っているのは間違い無いが、以前
は難癖を付けることしかしなかった筒井・綿貫コンビとの間に“絆”が生
まれているところが非常に微笑ましい。

ただ、ちょっと残念なのは若干のネタ切れを感じること。
連作短編ではもう出し尽くした感があるので、前作から貼られている
を生かした長編で、そろそろ決着を付けるタイミングだと思う。次は
第十弾。丁度いいよね、きっと。

ちなみに今回の旅の往路で一気に読ませていただきました!
・・・読書するには良いよな、長時間フライトって。

777

#運


▼777 / 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の新作は、待望の殺し屋シリーズ
しかも、このシリーズの中でも屈指の人気を誇る『天道虫』を主役に
据え、更に新たなキャスト(?)を多々配置した、ファンなら間違い
無く狂喜してしまう構成。

キーワードはやはり「運」。とにかく運がいいんだか悪いんだか解ら
ないテントウムシが、その特製を思いっきり生かして大活躍。ネタバ
レは避けたいので詳しくは説明しないが、物語の全てが展開している
場所が“一カ所”である、という事実にクラクラしてしまう。

・・・いやぁ、すばらしい!
読み始めたらもう本当にあっという間で、終盤には読み終えるのが惜
しくて残りの束を何度も確認してしまったほど。とにかくテンポが凄
まじい程によく、状況が容易に想像出来る上に共感度がやたら高い。
まぁ、実際にあんな場面に放り込まれたら、間違い無くパニックを起
こしてしまうんだろうけど。

そして殺し屋シリーズの次回作には、是非またモウフマクラを!
ちょっとアイドル感(^^;)があるんだよなぁ、あのコンビ。

湊かなえのことば結び

#ゴキゲンRADIO


▼湊かなえのことば結び / 湊かなえ

コレはどうなんだろう、一応エッセイでいいのかな?
2020年から2023年までの約1年半、この本の著者である湊かなえ
パーソナリティを務めた、FM大阪「湊かなえのことば結び」
この番組の95回に渡るオンエアの内容が詳細に記録されている作品。

このラジオ番組が非常におもしろかったであろうことは凄く理解出
来る。幸か不幸か、番組開始から程なくでコロナ禍となってしまい、
そこで生まれた「おうち活動」の選択肢の一つとして、この番組が
活用されたのは非常に意義深いこと。もしあの頃にこの番組の存在
を知っていれば、僕も定期的に聴いていたかもしれない。いや、な
んなら投稿とかしていたかも(^^;)。

であるからこそ、コレは「音」として聴くべきだった気が。
湊かなえの文章力は相変わらず見事ではあるのだが、やっぱりラジ
オで聴いた方がより大きなインパクトがあった、と思う。

番組のリスナーさんたちにとっては非常にありがたい記録なんだろ
うなぁ、きっと。今からでも聴く方法ってあるのかなぁ、この番組。

ルポ西成

#大阪アンダーグラウンド


▼ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活 / 國友公司(Kindle版)

「ルポ歌舞伎町」に衝撃を受け、さっそくデビュー作をチェック。
時系列で言えばこちらを先に読むべきだったのだけど・・・。

大学卒業後、就職活動を途中で放棄した作者・國友公司(^^;)。
フリーのルポライターとして生きて行くことを選択し、ほぼそのまま
大阪・西成ドヤ街への長期潜入取材を敢行。やっぱりこの人、どこ
かのネジが一本ハズレている気がする(^^;)。

西成、取り敢えずのイメージは『絶対に近づいてはならない場所』
この作品で解説される西成は正にそんな場所で、とにかく後ろ暗い
人間しか登場しない。さらに言うのなら、その殆どがいわゆる「ダ
メ人間」であり、完全に人生から転落した人間たちの吹きだまりで
ある、ということが非常によく解る。

國友氏の凄いところは、そんな西成の中で「飯場で働く」等の最低ラ
インをしっかり実践し、その経験を元にリアルな文章を書くこと。
このデビュー作を読むだけで彼が気合いの入ったルポライターである
ことが解るし、ノンフィクション作家に必須なスキル「優秀な観察者」
を、生まれながらにして持っている人だ、ということも理解出来る。

結果的に言えば、こちらを後に読んで良かったな、と。
西成で「流されない」ことを学んだおかげで、歌舞伎町住まいも問題
が無かった、と腑に落ちた。

とにかく注目の若手ノンフィクションライター
もう一つ著作があるようなので、早いうちにそちらも。