▼ドクター・デスの遺産 / 中山七里(Kindle版)
中山七里作品を続けて。
刑事・犬養隼人シリーズの新作だが、今回のテーマがあまりに「重い」。
「安楽死」の是非・・・。問題作と言って良いかもしれない。
警視庁に入った「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」という
少年からの通報。それをイタズラの類で無い、と直感的に悟った捜査一課
の高千穂明日香は、上司の犬養隼人を伴って状況確認へ。少年の父親の通
夜が行われていた現場で関係者に事情を聴くと、日本では未だ認められて
いない「安楽死」を請け負う医師「ドクター・デス」の存在が浮上。そし
て第二・第三の事件が起きて・・・といった内容。
中山作品はおおよそ瞬殺で読んでしまうのだが、今回は少しキツかった。
どうも僕は「安楽死」を全面肯定しているらしく、快楽連続殺人犯として
ドクター・デスを追い詰めようとする警視庁に全く共感できない。
僕の場合、死にたいときに死ぬために、誰かに依頼をかけたい時があると
思う。それをサポートしてくれる存在の何が悪いのか? 読後にも改めて
そう思った。
読み終わってから気付いたのだが、この作品はミステリーとして非常に稀
というべき作品。何が稀なのかと言うと、大きな意味での「被害者」と言
うべき者が一切存在しない。こういう仕上げ方もアリなのか、と感嘆した。
もちろん、中山七里の代名詞である「どんでん返し」もキッチリあるのだ
が、氏の作品をこれだけ読んでいるとさすがに読めるようになって来ちゃ
ったのかも(^^;)。真犯人は、珍しく最初に思った通りの人でした・・・。
・・・これは、オススメしていいのかどうか、正直解らない。
しかし、入魂の力作であることは絶対に間違いないと思う。読中に辛い思
いをする人も多々居ると思うけど、覚悟が出来る人はぜひ。