秋山善吉工務店

▼秋山善吉工務店 / 中山七里(Kindle版)

中山七里作品。
これまでの氏の作品と大きく違うのは、まず表紙のデザイン(^^;)。
いかにも頑固そうな大工然とした爺さんイラスト一発。こういう雰囲気、
他の作家の作品ではよく見られる気がするのだが、コレはどんでん返しの
帝王である中山七里の仕事。内容が全く予想できないまま読み始めた。

突然の火災で家と世帯主を失った母1人・男子2人秋山親子。残された
妻子は夫の実家である秋山善吉工務店に仕方なく身を寄せる。全てを失っ
てしまったにも関わらず、親子それぞれに降りかかる厄災。そんなピンチ
を救ってくれるのは、“昔気質の職人・法被を着た不言実行”こと秋山善吉
一方、警視庁捜査一課敏腕刑事は、火災の原因を放火と疑い始め、秋山
家を追い詰めていくが・・・という内容。

・・・いやぁ、爽快
人間味溢れるヒューマンミステリーといった具合で、人間の弱さ脆さ
そして東京下町の人情味溢れる絆が丁寧に描かれている。特に登場から
衝撃とも言えるラストまで、一貫してヒーローで在り続ける秋山善吉
格好良さ粋さは凄まじいまでの人間力。我々世代の「理想の祖父」像
が、きっちり表現されているのがニクい。

これは是非とも続編を、と期待してしまうのだが、この構成でそれを望む
のはちょっと無理があるかも(^^;)。いや、なんならいろいろ無かった事に
してくれても構わないから、シリーズにして欲しいくらい。

一風変わった感じの中山七里を読みたい人はぜひ。
もちろん代名詞である「どんでん返し」、今回も冴え渡っているので。