むすびや

▼むすびや / 穂高明(Kindle版)

何が気になったのか?というと、おそらくひらがな4文字タイトル
穂高明という作家はこれまで全く知らなかったし、事後に著作を調べても
知っている作品はただの一つも無かった。だけど・・・。

今回は自分のインスピレーションに感謝した。
これだけ優しくて暖かい内容の小説は本当にひさしぶり。読中に覚えたフワ
ッとした感動最後まで持続したのだから、これはもう名作なのだと思う。

就職活動に失敗し、仕方なく家業の「おむすび店」で働き始める主人公・
女性のような名前にコンプレックスがあり、自分に全く自信が持てない無駄
に美形なイケメンが、東京の下町(たぶん^^;)の人情に触れ、ゆっくり成長
して行く物語。

事件の類は全く起こらないし、ドロドロした人間関係も一切無い。下手すれ
ば冗長な内容になってもおかしくない設定にもかかわらず、退屈を一切感じ
無い。各章のタイトルがおむすびの具材、というのもすばらしい工夫で、そ
れぞれの具材がエピソードの内容を象徴している。一遍を読み終える度に思
わず唸ってしまうのだから凄い。

当然、読後にはおむすびが食べたくなった(^^;)。
こういう店が近くにあったらいいのになぁ・・・。