すずかけ通り三丁目

#教科書きっかけ


車のいろは空のいろ 白いぼうし / あまんきみこ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白いぼうし」は、小学校国語教科書に載っていた物語。
短編集『車のいろは空のいろ』の一遍で、個人的には“子どもが最初に触れる
ファンタジー作品”だと思う。

ご多分に漏れず、僕もこの本をわりと早い段階で手に入れた。
一冊を通して読んでみると、「白いぼうし」と同じテイストのホンワカする
短編が多々。この世界観が大好きで、今に至るまで何度か買い直しをしてい
るくらい。

ねこの森には帰れない / 谷山浩子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてもう一人、歌手の谷山浩子
↑↑のアルバムのB面は『車のいろは空のいろ』に掲載されていた作品をモチ
ーフにしたもので、本の世界観を全く壊さない、すばらしいサントラ。その
中で、特にグッとくるのが↓↓この歌。

「すずかけ通り三丁目」は、本で読んだ時も胸がキュッと苦しくなった。
この曲はそんな感情がより鮮明になる。この曲を聴きながら本を読むと、妙
切なくなって来るのだから凄い。

本もCDも、今でももちろん入手可能。
出来ればセットで手に入れて、この世界観に浸って欲しい。

・・・ちなみに、この本の作者・あまんきみこ先生は今もご健在らしい。
出来るだけ長生きして欲しいなぁ、先生には。

1954

#プロシタン通信


1954 史論-日出ずる国のプロレス / 小泉悦次(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロレス史探求家小泉悦次氏による著作。
初出の無い書き下ろし作品であり、テーマは日本でプロレスが始まった年、
とされる1954(昭和29)年黎明期日本マット界その周辺

力道山に関しては、関連書籍や文献が山のように見つかる。そして近年では
増田俊也氏の著作を中心に木村政彦に関する情報もかなり目にするようにな
ったのだが、この時代のもう一人のキーマンである山口利夫に関する情報は
非常に少ない。この作品でも多くのページを割いているワケでは無いのだが、
興味深い記述が多々ある。やはりこの人の目の付け所鋭い

そして、これまで謎に満ちていた初期「女子プロレス」に関する記述を、
もの凄いボリュームで展開。日本女子プロレスのルーツである猪狩定子氏に
インタビューを敢行している、という事実だけで驚愕モノなのだが、その発
言の“重要さ”感嘆してしまう。彼女に力道山との繋がりがあった、なんて、
これまで殆どの人が知らなかった、と思う。

そして、後半で大きく採り上げられている“昭和巌流島の闘い”力道山
木村政彦による伝説のセメントマッチに関する小泉氏のコメントに、完全に
心を打たれた。下記、失礼を承知で一部引用させていただく。
—–
力道山vs木村戦をリアルタイムで見て、今も存命の方は少なくなった。では、
なぜ語られるのか。今日に至るまでファンに対して、「プロレスとは何か?」
を考える格好の素材を提供したからなのか。
いや、この試合がプロレスを語る文化を作ったからだと思う。
(中略)
木村は、かつて彼の父エリオを破っている。結果としてそのエピソードはヒ
クソンのプロフィールを語る背景にもなった。
これも木村が忘れられた存在ではなかったからだ。なぜか。日本にプロレス
を語る文化があったからこそ、木村は残ったのだ。
では、なぜ残ったのか。力道山vs木村戦が語り継がれたからである。
—–
この「プロレスを語る文化」のおかげで、僕はこれまで生きて来られた、と
言って過言は無い。もしこの文化が発生しなければ、ここまでプロレスや格
闘技に強い思い入れを持たなかった気がする。この記述は、僕に取って真の
“金言”。正直、ちょっとが出た。ただただ、すばらしい作品である。

プロレス史に興味のある人以外は手を出しにくい作品だし、価格もかなり高
いのだが、終戦直後日本カルチャー興行の仕組みに興味がある人が読ん
でも、資料的な価値は充分にあると思う。

・・・いろんな人たちに読んで欲しいなぁ、これ。

死にゆく者の祈り

#教誨師


死にゆく者の祈り / 中山七里(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読むべき本に困っていたところ、中山七里未読作品Kindle Unlimitedにあっ
たので、迷わずチョイス。タイトルからしてちょっとヤバい気がしたのだが・・・。

主人公は浄土真宗僧侶。単なる坊さんではなく、拘置所『教誨師』を勤め
ている特殊な坊さんで、仕事の内容をざっくり言うと「死刑囚に仏の道を説き、
安らかな死を迎えさせる」という感じ。

この教誨師が拘置所で出会った死刑囚が、なんとかつての親友。しかも、大学
山岳部時代遭難しかけた自分のを助けてくれた恩人であり、彼が死刑囚
であることを俄に信じられない。彼の犯罪に疑問を持った教誨師は、今一度彼
が犯したという「殺人事件」を洗い直すのだが・・・。

探偵役僧侶、という設定が非常におもしろい。
まぁ、罪人に過度な思い入れを持つ、というのは坊主としてどうかと思わなく
も無い(^^;)のだが、聖職者であってもやっぱり人間、という現実をイチイチ
再認識させられる。コレはけして否定的な意味ではなく、ある意味で清々しく
もある

正直、文体は非常に重い上に、仏教用語お経なども頻繁に登場するため、や
鈍重な展開になるのだが、タイムリミット「死刑執行」であるが故に、全
編に緊張感が漂う。おかげで緊張が切れることなく、最後の最後までドキドキ
しながら読むことが出来た。

お得意の「どんでん返し」もしっかり炸裂するので、ファンの方はご安心を。
なかなか重厚なミステリーなので、Unlimitedなウチに是非!

お電話かわりました名探偵です 復讐のジングル・ベル

#変則安楽椅子探偵


お電話かわりました名探偵です 復讐のジングル・ベル / 佐藤青南(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐藤青南お電話かわりました名探偵ですシリーズ第3弾
このシリーズのことは失礼ながら失念しており、新作が出たことを知らなかっ
たのだが、運の良いことにUnlimitedで登場。しっかり読ませていただいた。

110番通報に対応する通信指令センターオペレーターを担当する“イケボ”
童貞早乙女廉くんが主人公。ミステリーの登場人物を「くん付け」すること
は無いのだが、この人の良い意味での矮小さは、シリーズ3作を通して全く変わ
らず(^^;)。じれったさの極地みたいな性格で、最初は本当に嫌いだった(^^;)。
ただ、ここまで徹底されると一周回って可愛く見えて来ちゃうのだから不思議。

そしてその先輩、“万里眼”こと君野いぶき女史は相変わらずの名探偵
通報電話の応対だけで事件の真相を見抜いてしまう、という能力はかなり凄い
のだが、今回は結果に至るまでのプロセスがやや粗かった気が。それでも納得
は出来るので、大きな問題では無いのだけど。

そして前作から問題になっていた二人の恋愛問題に関しては、一応一歩前進
とはいえ、基本はまだダメダメ(^^;)なので、この件は今後に期待。
シリーズとして充分楽しめるな、この作品。

Borsalino

#今週のワンピ


先週号でエッグヘッドでの伏線がほぼ回収されたジャンプ『ONE PIECE』
ルフィがニカからの復帰で老人状態であったモノの、まで描かれたから、
今回は繋ぎの『世界情勢描写』になるかと思っていた。だが!!!

以下、単行本派・アニメ派の人たちはネタバレ注意!

・・・ちゃんとした『エッグヘッド編・最終回』だった。
言われてみれば闘いが終わった後の宴にルフィがほぼ不参加、というのは
絶対にオカシイし、船に乗せて来たベガパンク・リリスをそのままにして
次に進むことは出来ないに決まっている。この構成は納得しかない。

そして、久々にたった一コマ涙腺が崩壊してしまった海軍大将・黄猿こと、
ボルサリーノ怒りの叫び。どんな場面でも常に飄々とし、心を乱すことの
無かった「最強の敵」の一人だった黄猿が、涙を流しながら叫ぶ姿に、完全
に圧倒されてしまった。

・・・こういうのを見てしまうと、日本のマンガのクオリティを改めて認識して
しまう。こんな「絵」を出されたら、どんなにおもしろい小説でも絶対に叶わ
ない。ワンピース、すげぇよ、やっぱり。