2000年の桜庭和志

#ただ一人期待に応え続けた男


▼2000年の桜庭和志 / 柳澤健(Kindle版)

柳澤健「XXXX年の○○」シリーズ最新作
満を持して登場するのは“世界が恐れるIQレスラー”、もしくは“グレイシー
ハンター”の異名でお馴染み、我らが桜庭和志。黎明期の日本の総合格闘技
界が偶然に産み落とした、歴史に残るプロレスラーである。

いつもはそういうことをしないのだが、今回読む前にAmazonのレビュー
を幾つか読んでしまった。この作者の作品にしては珍しく辛い評価のオン
パレード。引用が多い、桜庭に対する思い入れが無い、などの記述が多く、
ちょっと心配しながら読んだのだが・・・。

・・・いや、全然面白い
昨今の流行でUWFやPRIDEの裏話はもう出尽くした感があるが、この作品
ではその幅を大きく越えた人たちの談話が多々登場してくる。確かにその
中には書き下ろしのインタビューよりも引用が多いのだが、そこにかつて
のNWA世界王者であるダン・スバーンや、Uインターのスタンディングバ
ウトの選手だったボーウィー・チョーワイクンの言葉もある。Uインター
やサクのことを深く知る上で、非常に効果的な人選だと思う。

そして今もファンの間で「暗黒時代」と表現されるゼロ年代に、夢を魅せ
てくれたプロレスラーは桜庭和志ただ一人。格闘技側の人たちはサクをプ
ロレスラーとカテゴライズすることに抵抗があるかもしれないが、我々に
とって本当の意味での「救世主」。高田がヒクソンになすすべも無く敗れ
た時、大袈裟でなく自殺しかねないほどズタズタになった僕の心を大いに
救ってくれたのは、紛れもなく桜庭和志ただ一人だった。

そんな桜庭和志の全盛期、加えて現在・過去・未来
それが見事に一冊にまとまっているのだから、面白く無いワケが無い。

確かにこれまでにあったような「新たな真実」的な記述には乏しいかも
しれないが、不世出のヒーローを客観的にまとめた作品としては最高レ
ベルだと思う。僕の柳澤健の評価は、相変わらず高いままである。

最後に。
冒頭に記載されているUFC代表、デイナ・ホワイトの談話は必見。
あの時僕が感じていたことを、今をときめく世界最大の総合格闘技団体
の代表者が寸分の違いも無く語ってくれている。それが読めただけでも、
僕は本当に満足である。

私説UWF 中野巽耀自伝

#しゃちほこ固め


▼私説UWF 中野巽耀自伝 / 中野巽耀

毎回興味深い書籍を出してくれるG SPIRITS BOOKの新作は、旧UWF
・新生UWF・UWFインターナショナルの「3つのU」に所属し、現在
もフリーとして時折リングに上がる中野巽耀の自伝。

湯水のように出てくるUWF関連の書籍はほぼ読んでいるのだが、ま
さかこの人が本を出すとは思わなかった、というのが正直なところ。

新生UWFの頃、いわゆる「密航者」であった僕は、その頃から中野
の試合を多々観ている。いや、旧UWFの後楽園ホールにも通ってい
たから、デビューの頃から、ということになるのだが、その観戦歴
の長さのワリには印象に残っている試合がそう多くない。しっかり
覚えているのは旧U時代の広松戦とUインター時代のベイダー戦くら
い。中野龍雄(旧リングネーム)というプロレスラーはちゃんと認
識しているのだが、何故かUWFと結びつかない

逆にそんな中野の書いた本だから、ちょっとだけ期待していた。
ところが、あらゆるUWF一匹狼的に活動していた中野には「あの
事件の真相」的な情報が一切無かったのではないか?と。
暴露的な要素は殆ど無く、淡々と自分のプロレスラー人生について
語られる内容は、残念ながら僕には響かなかった。

UWFにはもちろん思い入れはあるが、この手の書籍はもう頭打ちか
な、と感じた。次に読むつもりの柳澤健の作品の内容如何では、僕
U卒業も近いかも・・・。

W-1の緊急発表

#呪われた名称


↓↓、本日WRESTLE-1の公式サイトで発表されたニュース。

旗揚げ以来約7年
この旗揚げですら全日本プロレスのお家騒動の産物であり、その場し
のぎの感アリアリだった。結局7年経過してもその雰囲気は払拭出来
ず、遂に力尽きた、というところだろうか。

象徴である武藤が、長年のダメージにより欠場がちだったのが痛かっ
たかも。さらにどう好意的に考えても、W-1には絶対的なスターがこ
れまで存在しなかった、という事実も。
唯一跳ねたのは黒潮”イケメン”二郎くらい。そのイケメンも退団して
しまったのだから、この結果も仕方無いところ。

所属選手は、どこかの団体に出場できるんだろうか?
カズ・ハヤシ近藤修司、そしてキャラの強い征矢学あたりはオファ
ーがありそうだけど、他の選手は・・・。厳しいなぁ、プロレス界も。

参考:WRESTLE-1活動休止のお知らせ(official)

「野人」ラストダンス

#中西学引退 #上からドン!


新日本プロレス「NEW JAPAN ROAD」最終戦、後楽園ホール大会。
「野人」の異名を取った中西学引退興行である。


中西は「第三世代」と呼ばれた同志の永田裕志天山広吉小島聡
タッグを組み、今現在の新日本4TOPに名を連ねるオカダ・カズチカ
棚橋弘至飯伏幸太後藤洋央紀を加えたチームと8人タッグで対戦。
入場時で既に感極まった表情の中西が印象深い。

普通の人間なら致命的、と称されるケガが無ければ、今の鈴木みのる
と同様の活躍が出来たかもしれない中西。全盛期の迫力に溢れた姿は
正直見る影も無い。でも、中西は最後まで中西らしくあろうとした。




そんな状態で対戦相手全員の必殺技正面から受け玉砕して行った
姿は本当に見事だった。正しく「天晴れ」。男ならこうありたい、と
思うくらい、すばらしい引退試合であった。

正直、第三世代の選手たちにはほぼ思い入れが無い僕なのだが、それ
でもデビュー戦を観ている選手が引退していくのは寂しい。残された
3人も引退はそう遠くない気はするが、その前にもう一花咲かせて欲し
気がする。

好ファイトで最高の引退試合を魅せてくれた中西のためにも。

上村優也

#何かを決意した若者の覚悟


新日本プロレス「NEW JAPAN ROAD」後楽園ホール大会。
今年のROADは中西学引退記念シリーズとして行われているのだが、
後楽園ホール3日目の第2試合で、ひさびさに胸のすく試合が。

主役はキャリア3年のヤングライオン、上村優也
CHAOSvs鈴木軍のタッグマッチに1人だけ若手が入った8人タッグだっ
たのだが、驚いたことに上村はリングインと同時に鈴木みのるを急襲。
あの鈴木に数分間反撃を許さないくらい攻め込んで魅せた。


激高する鈴木に場外でボコボコにされる上村。ここまでは普通だと思う
のだが、驚いたことに上村は鈴木を殴り返す。感覚的には鈴木100に対
して上村は1だが、諦めない姿勢は確実にこちらに伝わった。

試合はもちろん上村のフォール負け。完全に意識が飛んだと思いきや、
鈴木にたたき起こされた時に↓↓こんな表情を・・・。

・・・すばらしい
正直、上村は他のヤングライオンと比較して横並びだと思っていたが、
この1試合だけでかなり突き抜けたかもしれない。なんならもうすぐに
でも、上村と鈴木の絡みが見たくなっているのだから。

ボスはトドメのゴッチ式パイルドライバーを敢行しなかった。
つまりこれは「NEXT」があるということ。上村はなんとか鈴木との
一騎打ちまで辿り着き、ゴッチ式を喰らう必要がある

当分新日本の一人勝ちは続くだろうなぁ・・・。
若手からベテランまで、ほぼ全員がギラギラしてるんだから。