闘魂最終章

▼闘魂最終章 アントニオ猪木「罪深き太陽」裏面史 / 井上譲二

プロレス檄活字シリーズ第三弾
このシリーズ、これまで全4冊が刊行されているのだけど、唯一食指が動
かなかったのがコレ。タイトルからすると、いちばん興味を持ってもおか
しくない本なのだけど・・・。

正直言うと、著者がちょっと(^^;)。
井上譲二とは、プロレスファンならお馴染みの元週刊ファイト編集長
あり、ハッキリ言えばファイトを潰した張本人。まぁ、ファイトが潰れ
たのは井上氏だけの所為では無い、というのは良く解っているのだけど・・・。

単純に、この人の文章の組み立てが好きでは無いのかもしれない(^^;)。
いわゆる「猪木本」としてのレベルはいたって普通であり、ファンなら
誰もがなんとなく知っていることしか書かれていない。それでも、資料
的な価値があるのなら特に文句は無いのだが、時系列があやふやになる
書き方をしていて読みづらいことこの上無い感じ。週刊誌(紙?)の
記事ならともかく、一冊の本になるとさすがにキツい。この人の場合は、
いわゆるコラムだけやっていた方が才能を発揮出来る気がするんだけど、
どうなんだろう?

この本よりも読むべき「猪木本」はもっとたくさんあると思う。
新しくファンになった人が最初に読む本がコレだとちょっとキツいかも
しれない。猪木愛に溢れているところだけは認めるけど・・・。

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GOLDEN BLOOD

▼ゴールデン・ブラッド / 内藤了(Kindle版)

猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズでお馴染み、内藤了書き下ろし
この人の作品はおおよそでKindle版を同時にリリースしてくれるのが嬉
しい配慮。思い立ってすぐに買える、というのは非常に便利。

主人公は消防隊に所属する救命士・向井圭吾。自らが勤務した大規模な
マラソン大会で突如勃発した自爆テロに巻き込まれ、たくさんの人が死
んで行く様を目の当たりにする。対処に奔走する最中、最愛の妹・恵利
心筋梗塞で急追の報を聞き、更にショックを受ける。持病など無かっ
た恵利の死を受け止めきれない圭吾は彼女の死因を探る。そのうち“奇跡
の血液”とされるゴールデン・ブラッドの存在を知り、この血液が妹の死
ばかりかテロ事件にも深く関係している事に気付いてしまう・・・、という
内容。

いやぁ、すばらしく気合いの入った医療系ミステリー
この手のストーリーは下手すれば難解になってしまいがちなのだけど、
ギリギリのところでその方向に話を膨らませない手腕は見事と言うほか
無い。藤堂比奈子シリーズでその実力の高さは解っていたつもりだった
が、こちらの方が更に洗練され、リアリティが増している。この作家の
成長、本当に著しい。

ミステリーとしては正直少々稚拙。実際、中盤以降で誰が犯人かはなん
となく解ってしまった(^^;)。しかし、それを補って余りあるのが心情描
写の豊かさ。この作品では複雑すぎる男女の恋も描かれているのだが、
そちらの方のオチは全く予想出来ず、最後に思わず唸ってしまった。

藤堂シリーズも良いけど、この手の書き下ろしならいくつでも欲しい。
内藤了も僕の「新作出たらすぐ買う作家リスト」に入った!
もちろん、次作にも期待!

ブッカーKが見た激動の時代

▼ブッカーKが見た激動の時代 / 川崎浩市

昨日書いたライガーの自伝と一緒に購入したプロレス檄活字シリーズ
第四弾。ちなみに第三弾著者との相性の問題(^^;)でまだ買っていない
のだけど、まぁコレが先でも大丈夫かと。

著者は川崎浩市氏。
90年代後半格闘技ブームの頃、ヘンゾ・ハイアングレイシーチーム
ヴァンダレイ・シウバを擁するシュートボクセ・アカデミーの選手を
PRIDEにブッキングしていたことで有名。異名は「ブッカーK」

新生UWFからK-1・PRIDE全盛期までの舞台裏を至近距離から観ていた人
の回顧録。特にPRIDE創世記のエピソードは凄まじくリアルで生々しく、
あの頃の異様なブームの裏が、やっぱりとんでもなかったこと(^^;)が
非常によく解る。そこに登場する某団体の代表者は、いけしゃあしゃあ
新興格闘技イベントの中枢に居るのだが、本気で潰れりゃいい、と思
ってるな、僕は(^^;)。

しかし、この本の本当の見どころはそこではない!
川崎氏が新生UWF・藤原組(メガネスーパー)・リングスでフロントを
勤めていたことはなんとなく知っていたのだけど、まさか新生Uの後に
社長副社長が興した株式会社スペースプレゼンツに関わり、しばらく
そこで働いていた、という驚愕の事実が。今までずっとだったスペー
ス社怪しい業務内容にまで踏み込んでいるのが凄い。

そういう意味で、すれっからし系のプロレスファンは必読の書。
もちろん、それ以外の人は読んでも少しも面白く無いと思う(^^;)ので、
ご注意を!

獣神サンダー・ライガー自伝(下)

▼獣神サンダー・ライガー自伝(下) / 獣神サンダー・ライガー

ライガー自伝、待望の下巻
前巻は山田惠一としてのデビューからJ-CUP時代の1999年までのエピソ
ードで構成されていたが、今回は2000年から現在までのお話。

個人的に「凄い!」と思ったのは、この中に出てくライガーの話の中に
ピンと来ないモノが一つも無い、ということ。すれっからしのマニアを
自称し、プロレス検定2級を所持する僕ですら、知識がすっぽり抜けてい
る時代があるのだが、ことライガーに関してはその全てを鮮明に思い出
せちゃうのだから凄い。僕の中で獣神サンダー・ライガーがいかに特別
なプロレスラーなのか、改めて確認した次第。

「ライガーの偉大さ」を手っ取り早く体感したいのであれば、一度海外
のリングで闘うライガーを観れば良い。僕は2015年のレッスルマニア
ウィークにサンノゼでライガーの試合を2試合観たのだが、とにかくフ
ァンのライガーに対するリスペクトぶりが異様(^^;)なほど。ROHでの
試合では入場通路の脇を固めたファンのほぼ全員がアラーの神に祈るよ
うなポーズを取っていたし、レッスルコンのスペシャルマッチではショ
ーの開始前から「ジューシンライガー」のチャントが鳴り止まない。
日本のプロレスファンとして、本当に誇らしかった覚えが・・・。

そういうリアルリビングレジェンドの話は本当に面白く、さらに全て
が腑に落ちる。当然、現在宣言している「ライガー最終章」にも触れて
いるのだが、その集結はまだ当分先、と僕は信じている。
ライガーが引退したら、僕の中でもきっと何かが終わる。だからもうち
ょっとだけ、リングで闘うライガーの姿を観ていたい、と感じた。

すばらしい自伝に感謝。
そして巻末のライガー奥様&ご子息の対談、ナイスでした!!
世界の獣神サンダー・ライガーに栄光あれ!

左遷社員池田 リーダーになる

▼左遷社員池田 リーダーになる / 鈴木孝博(Kindle版)

何故だか久しぶりのUnlimited対象作品
著者の鈴木孝博氏は元CSKの幹部で、後にUCOMの社長となり、同社の建
て直しを見事に実行したことで知られる、割と高名なビジネスマン
そんな人がビジネス小説を書いた。しかも読み放題対象。だったら読んで
みよう、ということで取り敢えず。

まず、全体から感じる「熱さ」に関してはかなり悪くない。僕も仕事が楽
しい、と思える瞬間というのは、総じて自分が「燃えている」時。最近は
そういう仕事に殆ど当たっていない(^^;)のだけど、気持ちは非常に良く
解る。故に共感度は非常に高いし、解りやすくて誰でも読めそうな文章
ビジネスの心構えの書としては優秀だと思う。だけど・・・。

「小説」としての構成は・・・ちょっと稚拙な気が(^^;)。
まぁ、僕がこの手の作品の比較対象としてしまう作家が池井戸潤とかだっ
たりするからかもしれないけど、やっぱりストーリー展開都合が良すぎ
残念ながらリアリティが全く感じられない。舞台として中堅のドレッシン
グメーカーをチョイスしたりするセンスや、そこで開発される魅力的な商
などの素材が良いだけに、その部分が本当に惜しい気が。

やっぱり小説ではなくて、「ビジネス書」として読むべきかも。
それなら少なくとも、ドラッカー「マネジメント」よりは良い気がする。
・・・まぁ、あっちが僕には解んないだけ、というのも否定しないけど(^^;)。
取り敢えずUnlimitedユーザはご一読を。もしかしたらハマるかも・・・。