遺作「男の星座」

Kindle Unlimitedでこれまた興味深い作品を発見。
ほぼ1日1-8巻を読破してしまうほど凄まじかったのは、原作王・梶原一騎
先生の遺作である「男の星座」

作画は「プロレススーパースター列伝」でもコンビを組んだ原田久仁信
この二人のタッグというのは、我々の世代にとってのダイナミック・デュオ
であり、少年サンデーの発売日が待ちきれなかったあの時代を思い出す。

内容は梶原一騎の“自叙伝”に他ならず。
いろんなところでスーパーファンタジーを魅せてくれた梶センセだから、
内容が全て本当かどうかは正直なところ解らない(^^;)。しかし、本当かどう
かを詮索するのは正しく野暮、というもの。少なくとも男子であれば、ほぼ
全員がグッと来るストーリー。原田先生の臨場感溢れる絵がそれに拍車を掛
けているのだから、列伝世代はもう本当にたまらない気がする。

作家の自叙伝の筈なのに、描かれている世界はいわゆる任侠道
「タイガーマスク」「あしたのジョー」を生み出した男なのだから、それ
も大きく頷ける。梶センセの八方破れな生き様、とくとご覧あれ!

▼男の星座 1 / 作:梶原一騎、画:原田久仁信

バンクキャット

▼バンクキャット  / 菅原裕一(Kindle版)

個人的に3冊目となる東スポ官能小説大賞グランプリ作家菅原裕一作品。
表紙の猫が割とカワイイので大きく油断したのだが、この作品、とんでもなく
秀逸なミステリー。かなりのボリュームがあるのだが、本当にあっという間に
読了してしまった。

アイテムはハッキング医療。双方共にそれなりに専門分野に突っ込んだ風
内容であり、少なくとも僕のような素人が読むと圧倒的なリアリティが。そし
て、全く相容れない筈の2項目がバランス良く同居し、共に手に汗握る状況を
作っちゃっている。Unlimitedにしとくのは勿体無いわ、本当に。

何よりも凄いのは、若かりしころに恐ろしく非道い目に遭い、その後の人生を
正義感のカケラも無くただただ復讐に没頭するしかなかった主人公の最終的な
立ち位置。その辺りを注意しながら読むと、これまで全く無かったダークヒー
ローの形を理解出来ると思う。

敢えて難を言うのなら、オーラスをもう少しだけ整理して欲しかったかも。
しかし、これはもう非常に些細な問題。説得力抜群の口語体ミステリーを堪能
すべし!

ご来店は火曜日に

▼ご来店は火曜日に / 虎渓理紗(Kindle版)

Unlimitedサービス徘徊中に発見した作品。
おそらくインディーズ系の作家で、虎渓理紗という作家名で検索してもこの
1作しか出てこない。さてどんなもんか?という感じで軽く読んでみた。

「火曜日だけ開店している魔法使いの居る喫茶店」というアイデアは悪く無
い。つまり舞台設定・キャラ設定はそれなりに魅力的で、起きる事件もそこ
そこ興味深いのだが、如何せんエピソードが1つ、というのはちょっと足り
ていない気がする。ここで発表するのではなく、もう2〜3エピソード分の話
を作り、連作短編にした方が間違い無く良かったんじゃないかと。力尽きち
ゃったのかなぁ、1話で。そのあたりがかなり残念だったりする。

Amazonレビューでの酷評も頷ける。ミステリーとしても恋愛小説としても、
下手すればライトノベルとしても不完全なのは否めないが、上記の通り発想
は全然悪く無い。次回はもう少し長い小説にチャレンジして欲しい。
・・・なんならコレの続編でも構わないので。

KENDO

先月発売のG SPIRITS 42号
この本の人気連載に「ドクトル・ルチャのアリバ・メヒコ」という記事があり、
僕はコレを非常に楽しみにしている。毎回1人、伝説のルチャドールにスポット
を当て、彼らの全キャリアを追いかける、というスタイルなのだが、今回登場
したのは我々日本のファン莫大な思い入れを持つケンドー。思わず狂喜した。

いわゆる“お調子者”キャラでブレイクしたプロレスラーは彼が初めてかも。
会場に鳴り響く「ケンドー チャチャチャ」(チャの部分は手拍子)というコー
ルに対し、自ら反応し煽りを入れる、というのは、これまで日本のプロレス界
には無かった挙動。コレは結構な発明であり、ここから観客側に「応援する」
だけでなく、「参加する」、という意識が生まれたように思う。

『まったく予想外だったのは、私への声援だった。あんな凄いケンドーコール
はメキシコでも聞いたことがなかったからね。この国の人たちには、国境も偏
見もないと思ったよ。観たこともないドミニカ人の私をこんなに愛してくれた
ことに感動し、私はマスクの中で泣いていた。』(記事より引用)

正直、この一文を読んだところで目頭が熱くなった
もしかしたら、最初は僕らの悪ふざけだった「ケンドー チャチャチャ」に対し、
精一杯反応してくれたのは紛れもなくケンドー本人。打たれ弱さこそあったも
のの、凄まじい身体能力でとんでもない高さのトペを繰り出す勇気にも心を打
たれた。ケンドーがあの日に来日してくれなければ、僕らはずっとルチャに対
して偏見を持ったママだったと思う。ケンドーだから、我々は愛したのだ。

この連載に僕らのケンドーを登場させてくれたドクトル・ルチャこと清水勉
に最大級の感謝を。そして、60歳になっても未だ現役のケンドーなのだから、
また是非来日して欲しい。東京愚連隊あたりが呼んでくれると嬉しいんだけど。

▼Gスピリッツvol.42

昭和プロレス 迷宮入り事件の真相

▼昭和プロレス 迷宮入り事件の真相 / 井上譲二(監修)

なぁんとなく購入した元週刊ファイト編集長井上譲二氏が監修する書籍。
宝島社からリリースされている本なので、いわゆる“暴露系”に偏るのは解っ
ていたが、ソコはジョージ井上、なんとか上手くまとめてくれる、と思って
いたのだが・・・。

副題に「YouTube時代に出た最終結論」とあるが、だとするならその結論
はもう何年も前に出ていたことになる(^^;)。ちょっとディープなプロレス
ファンなら全員が知っていることの羅列に過ぎず、しかもそういう人たち
しか買わない本だと思うんだけどなぁ・・・。

読み物として面白かったのは、週刊ファイトのデータがなんとか生かされ
ている「アンドレ・ザ・ジャイアントを投げた男たちは本当か?」くらい。
あとはラッシャー木村のエピソードも少しグッと来たけど・・・。

ちょっと残念な出来。ジョージじゃなくて波々伯部さんに期待した方が
いいな、きっと。