フェイタル

#委ねる系


フェイタル / 横森理香(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Kindle Unlimitedリコメンドに登場した作品。
キャッチコピーの内容から、そこそこ気合いの入った官能系を期待していた。
横森理香なる作家はもちろん初めて。特に下調べもせず、先入観の無い状態で読ん
でんでみたのだが・・・。

全6篇からなる短編集
連作では無いが、全てに共通するのが“ワケアリの女性”主人公だ、ということ。
恋愛依存症夫婦逆転整形マニアなど、まぁクセの強い女性たちが登場し、そ
れぞれの独特な事情物語となる。それなりに興味深い事象もあるにはあったの
だが、この作品、致命的とも言える弱点が・・・。

僕が非常に苦手「オチを読者に委ねる」系なんだよ、コレ(^^;)。
そういうのが好きな人ももちろん居ると思うのだが、僕の場合一篇を読み終える
度に「ああ??」とか思ってしまう。文章のテンポはかなり良く、それなりの
クニシャンであるだけに、この中途半端さは非常に残念だった。

読後に調べてみると、どちらかと言えばエッセイに強い人らしい。
女性に寄り添った文章を書くことに定評があり、渋谷でコミュニティサロンを展
開、しかも“ベリーダンス健康法”講師だとか。いやまぁ、そういう人なら僕に
は合わないよなぁ、やっぱり(^^;)。さすがに他の作品を読むことは・・・無いだろ
うなぁ、きっと(^^;)。

戦争とプロレス

#Japanese Buzzsaw


戦争とプロレス / TAJIRI(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワールドフェイマスプロレスラーにして、“文豪”でもあるTAJIRIの著作。
サブタイトルは『プロレス深夜特急「それぞれの闘いの場所で」・篇』となって
いることからも解る通り、プロレス深夜特急シリーズ第二作である。

僕が前作の『プロレス深夜特急』を読んだのはホンの2ヶ月前だから、凄く良い
タイミングで続編を読めたことになる。前作同様、プロレスラー・TAJIRIが世界
を巡った“記録(ログ)”なのだが、前作と状況が違うのは、このログが残された
時期がコロナ禍、そしてウクライナとロシアの間で戦争が勃発した段階である、
ということ。おかげで軽妙な文体なのに妙に深い、という、これまで読んだこと
の無いタイプのエッセイに。

正直、コレはプロレス本の範疇に納まらない極上のエッセイ
いや、もしかしたらこれを自己啓発本と捉える人も多数出てくるのではないか?
という予測さえ生まれる。

そして、現在九州プロレスに定着しているTAJIRIを考えると、その生き方全く
ブレが無いことも理解出来る。プロレスラーとしてはもちろんだけど、人間とし
ても凄いんだよなぁ、この人・・・。

本当に、プロレスファン以外の人に是非読んで欲しい。この才能万人が知るべ
きすばらしいモノだと思うので。

能面検事の死闘

#無表情


能面検事の死闘 / 中山七里(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中山七里「能面検事シリーズ」3作目
いつリリースされたか定かでは無いのだけど、Unlimitedリコメンドに出て
来た、ということは、文庫化されてからかなり時間が経っている、ということ。
結局4年に一作読むペースになっちゃってるんだよなぁ、このシリーズ・・・。

今や大阪地検大エースとなった「能面」、一級検事の不破俊太郎が今回挑む
のは、無差別殺人事件からのテロ騒動。双方共に尋常では無いレベル醜悪な
事件であり、これを早期完全解決するために不破が送り込まれたワケだが、頻
発するテロ行為に巻き込まれる形で、不破自身が重傷を負ってしまう・・・といっ
た感じの内容。

テロリズム臨場感が凄まじく、シリーズの過去作品と比較してアクション感
3倍増し。この辺りの描写もしっかり解りやすく記述してしまう氏のテクニ
ックに感服するしか無い。お得意の“どんでん返し”に関しては、正直今回は
かった気がするが、それが気にならないレベルでおもしろかった

読書に困った時の中山七里、というジンクスは健在。
能面検事シリーズ全3作は現在全てUnlimited扱いになっているので、サブスク
利用の方はこのチャンスに是非。もちろん、普通に金払う価値もあります!

ONE PIECE 112

#WANTED!


ONE PIECE 112 / 尾田栄一郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワンピース・112巻、本日発売。
エルバフ篇序盤のハイライトに位置する重要な巻ではあるのだが、今回は各種
SNSで発売開始直後から話題になっているSBSをチェックしたかったので、日付
が変わった瞬間にコンビニで入手。

謎の種族『ドスンダダ族』正体や、ロジャー海賊団役職が判明したのも凄か
ったのだけど、個人的に呆気に取られたのは、ロックス海賊団メンバーとして
あのギル・バスターが名を連ねていたこと。ギルは短編集『WANTED!』に登場
した凄腕ながら卑怯ガンマン。ここに来てのこのリンク、妙にニヤッと出来る
ところがニクい。

今回も発売記念PVがすばらしかったので貼り付け。最近は新刊が出る度にコレ
があるのも楽しみなんだよなぁ、実は。

フジコの十ヶ条

#イヤミスの教祖 #原点


フジコの十ヶ条 / 真梨幸子(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真梨幸子新作は、彼女の原点である「殺人鬼フジコの衝動」シリーズ
「衝動」は、大きく言えば日本に“イヤミス”という概念定着させた大傑作
して大問題作。言ってしまえば、僕はこのシリーズで人生観が変わるくらいの
衝撃を受けたワケだが・・・。

今回の作品は、伝説の殺人鬼・フジコによる「少なくとも15人惨殺事件」が、
半ば都市伝説状態になった後に、それが原因でジワジワと大きくなっていく
新たな事件の顛末を追ったモノ。

『フジコの「十ヶ条」通りにすれば、誰もが成功し、幸せになれる』という
設定が、まぁまさしく都市伝説(^^;)。そもそもオリジナルのフジコが十カ条
を残すワケが無い、と思うのだが、その中身はまぁフジコが考えて実行してい
たのではないか?と信じ込ませてくれるから不思議。

それくらい僕はフジコに魅了されており、下手すれば“現実にフジコは存在す
る”と思い込んでいるフシがある(^^;)。おかげで説得力抜群で、この異様な
世界観にドップリと。フジコ以外にも他の真梨幸子作品のエッセンスが各所
に散りばめられており、幸子サマ信者狂喜するに違いない。無論、読後感
は本当にサイアクなのだけど、一周回ってむしろ清々しい気持ちにさせても
らった。

この作品、単体でもおもしろいと思うのだが、一応シリーズの前作、せめて
「衝動」だけは読んでおいた方がいいかもしれない。しかし、それが誰かの
新しい扉を開いてしまっても、僕は責任は取らない、ということで(^^;)。
・・・ああ、次が読みたい(^^;)。