引き続き柚月裕子作品。
主人公は家庭調査官補。家庭調査官補とは、裁判所職員である家裁調査官の
修習中の役職であり、通称「カンポちゃん」と呼ばれる職業。一般企業で言
うところの「本採用前研修中」期間を頑張る若者の物語である。
体裁は5篇から成る連作短編。
家庭裁判所に持ち込まれる事件は離婚調停などを行う家事事件担当と少年犯
罪を扱う少年事件担当の2つに大きく別れるらしいのだが、本作は最初の2篇
が少年事案、真ん中1篇で旧友との邂逅を挟み、後ろ2篇が家事事案を扱った
エピソード。事案を終える毎に人間的に成長していく主人公が清々しい。
これまで読んだ柚月裕子作品の中では、いちばん「おとなしい」印象。
しかし、ジワッとくる文体と、淡々としながらも綿密な構成はすばらしく、
この作家の本を読んで初めてホンワカとした気分になった。こういう作品も
書けるんだね、この作家。
今のところ電子書籍で読める柚月裕子作品はこれが最後。著作全読破を目指
すのであれば、文庫か単行本を当たるしか無いのだが、その殆どが宝島から
出版された作品。東野圭吾作品と宝島社より発売された本の電子書籍化は、
当分無理なんだろうなぁ、きっと。なんとかなんないのかなぁ、コレ(^^;)。