amazonのリコメンドから購入した作品。
知念実希人という作家は初めてだが、ちょっとだけ聞き覚えがあったので
調べてみたら、「崩れる脳を抱きしめて」で昨年の本屋大賞にノミネート
されていた人。昨年のノミネートは10作品うち5作品を読んでいるのだが、
どの作品も僕の中では高評価。これは期待出来る、と踏んで読書開始。
ジャンルで言えば連作短編の医療ミステリー。それも、美容整形というち
ょっとアレな分野を取り扱ったやや異色な作品。語り部は麻酔医師で大学
院生の朝霧明日香で、彼女がアルバイト勤務する美容形成外科を率いるの
が「天才」の異名を欲しいままにする美容外科医・柊貴之。ただし、金さ
え積めば顧客のどんな依頼にも応える、いわゆる悪徳医師(^^;)、という
構成。
意外や意外、思った以上にコメディでやや面食らった。抱腹絶倒とまでは
いかないが、前半から中盤にかけてのテンポの良い展開はなかなか見事。
しかし、後半のシリアスな展開は思いっきり重厚で、落としどころもかな
り秀逸。ラストは全く予想外、最後までしっかり騙されてしまったのだか
ら、ミステリーとしての完成度もかなり高い、と思う。
しかし、気になる点が2つほど。
いわゆる「笑い」でミスリードを誘う、という方式は決して嫌いでは無い
が、そのジャンルの権威である東川篤哉の作品群と比較すると、やや中途
半端な印象は否めず。もっと振り切っても良かったし、それが充分出来る
作家な気がする。もしかしたらシリーズになるかもしれないから、次作品
での吹っ切った展開を大いに期待。
もう1つは・・・。まぁ、完全に好みの問題なのだけど、ラノベっぽい表紙が
やっぱり苦手だなぁ、僕は(^^;)。売れるのかね、こういう表紙だと(^^;)。