クリスマスを探偵と

▼クリスマスを探偵と / 伊坂幸太郎&マヌエーレ・フィオール

伊坂幸太郎著作としては初となる「絵本」
小説自体は2010年企画本にて発表されており、Kindleシングルでもリリ
ースされている有名な短編。何故に有名なのかというと、この作品が実質
伊坂幸太郎の初作品であるから。

というわけで、レベルの高いファンタジーであることは最初から知ってい
たのだが、これに差し込まれているマヌエーレ・フィオールイラスト
すばらしい。誤解を恐れずに言うのなら、タッチはゲームのレイトン教授
+寺田克也の良いとこ取り、といった雰囲気。初作から“らしさ”を醸し出
している伊坂幸太郎の文章と絶妙すぎるマッチング。完成度は異様に高い、
と思う。

ただ、問題なのは対象年齢・・・かなぁ(^^;)。
体裁は絵本だしすごく素敵なストーリーだから、子どもたちに是非読んで
欲しい!・・・と言いたいところだが、物語の入り口がちょっとアダルト過ぎ
(^^;)かもしれない。個人的にはR-10かなぁ・・・。

なのでこの絵本、小学校4年生になったら読むべし!
当然オトナの人たち、特に伊坂フリークの皆様は必読にして必携です。
・・・クリスマスにレビューすれば良かったな、コレ(^^;)。

アナログ

▼アナログ / ビートたけし(Kindle版)

発売当初から話題になり、年内に絶対読もうと思っていたビートたけし
書き下ろし小説。な、なんと、純愛路線恋愛小説だったりするから凄い。

インテリアデザイナーの青年が、行きつけの喫茶店で知り合った謎多き女性
に恋をする話。二人は強烈に惹かれ合っているにもかかわらず、名前以外の
お互いのパーソナル情報(メールアドレス、電話番号、LINEのID、そして名
字まで)を全く知らない。いや、敢えて知ろうとしない。毎週木曜日の夕方
に、この店に来れば会える・・・だけを頼りにしたなんとも頼りない恋愛模様
しかしデジタル全盛のこの時代に、あまりにアナログな関係は、逆にしっか
りとしたを作っていく・・・。

・・・なんともまぁ、気恥ずかしいくらいの恋愛小説(^^;)。
普段の僕なら絶対に手を出さないし、読んだとしても途中で止める可能性は
低くないジャンルの読み物なのだが、コレをたけし大先生が書いた、という
事実があまりに面白い

この作品、男女の間柄だけではなく、男同士の友情会社内の人間関係など
もある程度深く掘り下げられているのも凄い。破天荒で波瀾万丈な人生を歩
んで来た筈のたけしさんが、いわゆる市井の人間の内面を(おそらく)想像
だけで書いたモノに鋭く共感してしまうのだから、やっぱり天才。改めてそ
の才能に舌を巻いてしまった。

おそらく、どの世代の男女が読んでもそれなりにグッとくると思う。
こういう人が東京五輪のプロデューサーをやってくれればいいのになぁ・・・。

アマゾン大全2018

▼アマゾン大全2018

コンビニの雑誌棚で見掛け、思わず購入してしまったMOOK
Amazonで評判の良い商品を555種類集め、徹底的にレビュー。カテゴリーは
家電&デジタル・ホーム&キッチン・日用品・ビジネス&トラベル・アウトド
ア&カーグッズの5つに別れ、それぞれに絶妙「ちょっと気になるモノ」
多数掲載されている。

ハッキリと、楽しい(^^;)。
今や完全にAmazon依存症になっている僕には、まるで指南書のような内容。
特に家電&デジタルの分野にはパーソナルDJとか防水スピーカーとか、もう
意味無く欲しくなるものがいくつか発見出来ちゃうんだから凄い。

・・・しかしこの本、絶対に電子書籍には向かない(^^;)。
わりと厚めの束で、パラパラめくっているからこそヘンなモノとの出会いが
ある。さすがにiPadとかで読んでたら、そういう風にはならない気がする。

まぁとにかく、暇つぶしには最適。
特に普段の買い物の殆どをAmazonで済ませてしまう僕のような輩に対して
はちょっとした実用書。オススメです、コレ。で、気になったのは↓↓です!

 

花のさくら通り

▼花のさくら通り / 荻原浩(Kindle版)

萩原浩・ユニバーサル広告社シリーズ第三弾
前回、ヤクザ(がクライアント)仕事をなんとか振り切った零細広告制作
プロダクションユニバーサル広告社だが、秋葉原に事務所を維持すること
が困難となり、一応都内だけど過疎化すら感じられる“さくら通り商店街”
都落ち。家賃は安いが、条件はなんと「住み込み」引っ越しまで余儀なく
されたコピーライター杉山だが、ひょんなことから大家和菓子店3代目
から“さくら祭り”チラシ製作を依頼される。クライアントは同商店会だが、
そこは一癖も二癖もある頑固な爺たちが仕切る閉ざされまくった世界
これをなんとか打破しよう、と、ユニバーサルの個性豊かな面々が意地で
奮闘する・・・という感じ。

いやぁ、いいわ、コレ。
これまで読んだシリーズ3作の中では、とにかくピカイチの内容。
登場人物の悪役→善玉転向への流れ、いわゆるベビーターンの連続が妙に
心地よい。加えて「商店街のシャッター通り化」という問題は都下に限ら
ずどの地方でも悩ましい議題であるが故に、何故だか他人事だと思えない
おかげでリアリティは非常に高く、感じたままを言うのなら“手に汗握る”
展開。クライマックスの会議が決する場面では、思わず快哉を叫んでしま
った。

そして、この作品の舞台とやたら系統の似ている街で、これまた似たよう
な仕事(レベルは更に数段低いけど^^;)に従事する僕としては、個人的
共感度が半端ない高さ。途中から応援団(^^;)になってたかもしれない。

もちろん最後はハッピーエンド。同じような世界で仕事をしている僕から
すると、この部分にリアリティは一切感じない(^^;)のだが、まぁ、ソレは
ソレで良いのかも。非常に清涼感に溢れたお仕事物語だと思います。

年末にこのシリーズを読めて本当に良かった、と心から。
来年は頑張るぞ、オレも!

なかよし小鳩組

▼なかよし小鳩組 / 荻原浩(Kindle版)

萩原浩・ユニバーサル広告社シリーズ第二弾に当たる作品。
前回、ド田舎の村おこしを手掛け、やや成功しながらも(おそらく)金には
ならなかったユニバーサル広告社の次のクライアントは、なんと広域指定暴
力団、いわゆる「ヤクザ」である。それも、本気でコテコテの(^^;)。

まぁ、ファンタジーなんだろうなぁ、という気はする。
何十年か前なら、もしかしたら起こりうる状況かもしれないが、今のご時世
でこういう仕事をするのは本気の自殺行為。一度でも取引実績を作ってしま
ったら、もう二度と現世には戻ってこれないのだから。

だからこそ、このあり得そうで絶対にあり得ない状況が少しだけ羨ましい
何十年か前の僕だったら、もしかしたら飛びついて痛い目にあったかもしれ
ないし、もしかしたら良い意味でも悪い意味でも人生が変わっていたかもし
れない。読中、そんな妄想が飛び交った。

今回はそういう特異過ぎるクライアントとのやりとりの他、主人公のコピー
ライター・杉山と離婚した妻のもとで暮らす幼い一人娘との邂逅も描かれて
いる。派手な展開との落差でこの部分がかなり切ないのもポイントかもしれ
ない。

ユニバーサル広告社シリーズも今のところあと1作を残すのみ。
・・・まぁ、あと1作ある、ということはまだ潰れずに済んでいる筈で、ちょっ
とだけホッとする。この会社のその後、気になるなぁ・・・。