コクーン

▼コクーン / 葉真中顕(Kindle版)

葉真中顕強化月間、今作はちょっと不思議なお話
構成は連作短編集で、内容はバブル期の日本で起こったあるカルト教団の
蛮行、それに翻弄された人々の物語、という感じ。多種多様な人物が登場
してくるのだが・・・。

着想のヒントは間違い無くあの教団が起こした地下鉄サリン事件だと思う
のだが、その「事実」巧妙に処理したファンタジー作品と言えなくも無
い。しかし、ファンタジーと言うにはひたすらに「重い」内容。

読み進めるうちに、各章を繋ぐ「線」がハッキリ色濃くなって行くタイプ。
それぞれの人生を歩いて来た筈の人たちが、過去に教団関係者と何らかの
関係を持っており、更に全員がある種のコンプレックスを抱えている、と
いうのが大きなポイント。

エピローグの書き方が本当に凄く、おそらく最後まで読んだ人たちを闇の
底に叩き落とすほどの効果。扇動的な表現はほぼ無く、淡々とした文章な
のだが、その「救いの無さ」に、どうしようもない恐怖まで感じてしまった。

強化月間は進行中だけど、一回休みを入れた方が良いかも(^^;)。
この作家の破壊力、ちょっと只事では無い感じなので。

W県警の悲劇

▼W県警の悲劇 / 葉真中顕(Kindle版)

期せずして強化月間驀進中葉真中顕作品。はやくも4作目
こちらは警察小説、全6篇から成る連作短編集。W県という架空の都市の
県警とそれに付随する各地の所轄警察署を舞台に繰り広げられるミステリ
ーで、各篇に細かくリンクが貼られており、長編小説並みの手応え。

この作家のアドバンテージは叙述トリックどんでん返し
どんでん返しの部分は、その分野の神様とされる中山七里にはやや及ば
ないが、そこに組み合わされる叙述トリックがこれまでの誰よりも優秀
今回は「欺されないぞ、暴いてやる!」という気概を以て読書に臨んだ
のだが、1〜4話までは完全にやられた。特に3話「ガサ入れの朝」に関
しては、もう反則だろ、と指摘したくなるくらいの巧妙さで、結局その
テクニックに舌を巻いた次第。

しかし、さすがに見破ったぞ、5話6話(^^;)。
ただ面白いことに、トリックが思った通りであったとしても、普段他の
作家に感じる「こんなもんかよ?」という悪態をつく気になれない
そうか、そういうことを考えるのか、というシンパシーまで生まれて来
ちゃってるらしいから、僕は本当にこの作家にハマっている

いやぁ、この強化月間はまだまだ続くなぁ、きっと。
今月中にリリース分を読み切ってしまいそうなのがちょっと怖いけど、
怯まずに進むつもり。さて次は・・・。

ロスト・ケア

▼ロスト・ケア / 葉真中顕(Kindle版)

早くも3本目となる葉真中顕作品。
「介護」を題材としたミステリー小説。犯罪者・検察官・被害者・民間
の介護企業担当がランダムに語り部を勤め、伏線の貼り方からその回収、
ストーリーの構成まで、全てに於いて非常に高いレベルでまとまってい
「傑作」、と最初に言い切っておく。

・・・凄い
いや、冗談ではなく、ここ最近で読んだ本の中では最強のインパクト
現状の社会情勢そのものを思いっきり考えさせられる内容で、あまりの
リアリティ本気の震えが来た程。この作品に凡百のホラー小説が束に
なっても叶わないくらいの「怖さ」があるのは、もしかしたらかなり近
い将来、自分がこういう世界に置かれる可能性がやたら高いから。そう
なった時に、自分がどうするか?の審判を迫られた気がする。

ここからちょっとネタバレなので注意。

何が怖かったのかと言うと、例えば自分が要介護認定となった、あるい
はなりそうな場合、やっぱりなんとかして自らの命を絶とうとしてしま
う気がすること。介護・・・いや、世話をしてくれるであろう何らかの身内
にかけてしまう迷惑を思えば、それだけで「ただ生きている」ことが
えられなくなる自信がある。

もっともっと怖いのが、自分がこの作品の真犯人と同じように、重度の
介護が必要な身内を持ってしまった時、どういう感情を持つのか?とい
うこと。この作品の冒頭から出てくるワード、「安全地帯」を確保出来
るか否か・・・。ソレを考えると・・・。

とにかく葉真中顕、完全に僕の心にを打ってくれた。
今のところ著作はそれ程多くなく、近いうちに全てを読み切ってしまう
のは確実。初めてかもしれない。「恐怖」に支配されるのは。

政治的に正しい警察小説

▼政治的に正しい警察小説 / 葉真中顕(Kindle版)

葉真中顕作品、さっそく2本目
全6編から成る短編集で、どれもテイストの違うバラエティに富んだ内容
ハードボイルドあり、ミステリーあり、ヒューマンドラマあり、と、読む
のが楽しい作品。

完全にツボだったのが後半の2本、「カレーの女神様」とタイトルロール
「政治的に正しい警察小説」。分類するならどちらもブラックユーモア
なのだが、双方が全く違うアプローチ。「カレー」は次々変わる語り部
ミスリードを誘う巧妙なモノで、「警察小説」に関しては小難しい概念
痛烈に皮肉ったハチャメチャな展開をハチャメチャなまま納める、という
力技を魅せている。共通するのは、読み終わった後にかなりゾッとする
というところだろうか。

いやぁ、この作家、思った以上に凄いかも。
ハードな「絶叫」を読んだ後だから、この本のシニカルさがやたら際立つ。
葉真中顕の引き出し、もう少しいろんな場所を開いてみたい気がする。

これは万人にオススメ短編集らしい短編集をお求めの方、ぜひ!

絶叫

▼絶叫 / 葉真中顕(Kindle版)

WOWOW・連続ドラマW、3月にオンエアされるドラマ原作がこの「絶叫」
尾野真千子安田顕という、かなり好きな役者陣がメインを張る、という
ことで大きく期待してるのだが、何故だかこれは先に原作を読んでおこう、
という気になった。葉真中顕作品は初読だが、以前からリコメンドにちょ
くちょく登場。いい機会だ、ということで。

・・・うわぁ、久々に来たぞ、コレ(^^;)という感じ。
いろんな意味で「重い」、そして「ヤバい」(^^;)。読後感はある種最悪
イヤミス好きの僕なら大好物となってもおかしく無いのだが、この作品の
リアリティはあまりに凄い。人間のイヤな部分をデフォルメして書いてい
るのではなく、本当に普通の人間が陥ってしまいそうな転落劇をただただ
淡々と記述する。その様のジワジワ感虫唾が走り、どうしても続けて読
むことが出来ない。それでも先が気になる、という恐ろしい本

人物描写の巧みさに目を奪われがちなのだが、それが秀逸な叙述トリック
を形成。読後に改めて考えると、知らぬ間に多方面に張られた伏線がほぼ
回収されていることに気付き、感嘆の溜息を漏らした。驚愕、とまでは言
わないが、ラストの落としどころはこちらの予想を大きく覆すモノ。
読むのにパワーが必要だが、非常に良く出来たミステリーだと思います。

これはドラマ版に期待しちゃうなぁ・・・。
我らの安田顕が、どう考えても雰囲気の違うキャラをどう演じるのか?が
非常に気になるし、逆にどう考えてもこのキャスティングしかねぇだろ、
というキャラに扮する尾野真千子の演技がもの凄く楽しみ。

・・・現在、別の短編集を鋭意読書中。ちょっとハマるかも、葉真中顕。