ふたたび嗤う淑女

▼ふたたび嗤う淑女 / 中山七里(Kindle版)

またもや中山七里作品。
5年前に読んだ「嗤う淑女」の続編。ということは、あの悪女の中の悪女
蒲生美智留がまた降臨する、ということ。もぉ楽しみで、ゾクゾクしなが
ら読んだ。

今回も連作短編の体。
前作のラストで美智留が化けた野々宮恭子は、ライフプランナーとして登
場し、とある代議士の重要な関係者を次々とに嵌めて行く。今回のター
ゲットは女性だけでなく男性も含まれているが、全員が全員、名誉欲
にまみれたちょっとアレ系な人間ばかり。前作に比較すれば野々宮チー
ムの手法はやや拙い気がしないでも無いが、こういう人間なら引っかかる
だろう、と思わせてくれるあたりはさすがのテクニックである。

そして、氏得意の「どんでん返し」に、今回もまんまとやられた(^^;)。
実は物語の最初の段階で「こいつはアヤシイ」と思っていたのだが、話が
進むにつれ猜疑心を持っていたことを忘れてしまった。掌の上、という
言葉が非常にしっくり来る。やっぱり凄いな、この作家。

前作ほど悪意に満ちた内容では無いが、ラストの記述には思わずゾッとし、
そしてほくそ笑んだイヤミスマニアとしては上々のご馳走であった。

さすがは中山七里。
もし読むのであれば、コレだけではなく前作も一緒に読むと尚良い。
悪意に満ちた小説を読みたい人は、ぜひどうぞ!

総理にされた男

▼総理にされた男 / 中山七里(Kindle版)

中山七里作品。
氏にしては珍しく、ミステリー要素の殆ど無い政治エンターテインメント

設定はかなり強引(^^;)。
総理大臣のモノマネを得意技とする売れない役者が、急病で倒れた総理の
替え玉をやらされる、という物語。普通コレがバレない、というのはあり
得ない(^^;)のだが、まぁ小説ということでその辺りは突っ込まない方が
幸せだと思いますよ、ええ。

ただ、内容的にはかなり突っ込んだ政治モノ。
「政治」という世界の仕組みとその難しさ面白さが見事に解説されてお
り、ちょっとした入門書として使えそうな作品。何よりも単なる一般人が
ホンモノの首相よりもよっぽど首相らしくなっていく様がやたらと痛快
終盤にはちょっと泣ける場面まであり、エンタメとしての完成度はかなり
高い気がする。

作者の代名詞である“どんでん返し”こそ無いものの、読み応えはバッチリ。
中山七里の違った引き出しを見たい人はぜひ。コレは映像化して欲しいな
ぁ・・・。

BURN(下)

▼BURN(下) 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 / 内藤了(Kindle版)

内藤了藤堂比奈子シリーズ最終章下巻
いつも通り(^^;)、上巻のラストで思いっきりの煽りが入り、次の展開が
大いに気になっていたのだが、今回はすぐに続きが読める。すばらしい!

さすがにちょっとネタバレになるので、ここから先は注意!

これまで起こってきた数々の猟奇犯罪の黒幕が、ようやく正体を現す。
やっぱりとんでもないサイコなクソ野郎(^^;)、こういうヤツならああい
うことを平気でする、と納得出来るキャラを持ってきたのはさすが。

さらにガンさん率いる猟奇犯罪捜査班員たちの太い絆を再確認すると共に、
ヒロインの女刑事・藤堂比奈子と悲しき天才プロファイラー・中島保の恋
の行方など、気になっていた部分がすっかり処理されていたのに感心。
大団円、と表現して間違い無い。

2014年「ON」から10作に渡って続いた大河ドラマもこれにて完了。
おおよそで半年に1作、というペースにイライラさせられた時期もあった
が、僕のシリーズ全体評価はかなり高い。これで終わってしまうのは正直
寂しいが、今も続いているスピンオフシリーズで猟奇犯罪捜査班の面々と
再会出来るのを楽しみに待っている。

お見事でした。そして、お疲れ様でした!

BURN(上)

▼BURN(上) 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 / 内藤了(Kindle版)

内藤了藤堂比奈子シリーズ第十弾にして最終章
今回は初の上下巻本編完結ということで気合いの入った大長編となった。

今回のテーマは「解決」で良いと思う。
「ON」から続く多数の猟奇犯罪の繋がりがカッチリ整理され、張り続け
てきた伏線がほぼ完璧に処理された、シリーズモノの見本のような内容。
ここで終わってしまうのが惜しい、と思わせるのだから、やっぱり凄い
作品だった、ということ。

上巻のラストは、最後の急展開
この段階で僕はもう下巻を読んでいる(^^;)から、感想を書いてしまうと
しっかりネタバレしてしまうので、総合的なレビューは次枠にて。
なんにしても上下巻2冊、両方買っておくことをオススメします。

何度もかまされたこの処理「To Be Continue・・・」(^^;)。

優しい死神の飼い方

▼優しい死神の飼い方 / 知念実希人(Kindle版)

こないだ読んだ「黒猫の小夜曲」前作(^^;)、知念実希人作品。
またもや順番を間違えたことは既に書いているのだが、この作品を読み
終わった後に猛烈に後悔した。順番通り読むべきだった、と(^^;)。

こちらも後作(^^;)の「黒猫」同様、余計な一言が原因で地上に左遷・・・
いや、派遣されてしまった死神の物語。彼の肉体はゴールデンレトリー
バー。しかし、真冬夏毛のまま地上に送られ、死神なのにいきなり死
にそうになってしまう(^^;)。

こちらもファンタジックミステリーなのだが、「黒猫」よりも人間ド
ラマの風合いが強い。人との触れあいを描写するのであれば、一般的に
はやっぱり犬の方が好印象。恩人のために図らずも一生懸命になってし
犬・・・いや死神の様を、ほっこりした感じで眺めることが出来た。

・・・これもまた清々しい作品
読中に何度も昔一緒に暮らしていた犬の姿を思い出し、ホロッと来てし
まう自分が居た。世の犬好きなら、否が応でも気に入ってしまう作品な
気がする。

とにかく、この死神シリーズは絶対に順番通りに読んだ方がいい(^^;)。
両作品はほぼ「連作」であり、話の繋がりをキッチリ楽しむことが出来
るハズなので。失敗した人間が言うのだから、間違い無いかと。

そして、次の作品はどんな死神がどんな動物に変化するのか注目。
犬猫以外があったら本当に感心するな、きっと。