久々にKindleストアのリコメンド購入。
舞台はおそらく首都圏近郊の巨大団地。そこに住む様々な人々の様々な「事情」
をミステリータッチで描く全10篇の短編集。もちろん、永嶋恵美作品は初。
現在は地名に「団地」が付いている場所が多々あり、その言葉の意味は昔と少し
違って来ていると思うのだが、ここで言う団地のイメージはもうすっごい昔から
ある“ザ・団地”的なもので相違無いと思う。具体的に言えば築30年前後・4階建
でエレベーター無し、全く同じデザインの建物が8つくらい並んでる感じ。
もう少し膨らませると、中庭には錆びたジャングルジムと砂場、1号棟の1Fには
聞いたことの無い名称の小さなスーパーマーケットが細々と営業を続け、店の前
のベンチでは買い物帰りの主婦たちがお喋りに高じている・・・というところか。
こうやって改めて考えると、ちょっと異様な場所だよな、団地って。
この作品はいろんなところの短編を集めて一冊にしたモノ。しかし、全話から
“同じ団地”のイメージを感じさせるテクニックは見事に尽きる。
この作品内で起きる“事件”は、実はどれもなんて事の無い日常な気がするのだが、
団地特有の人間関係をフィルタに入れた瞬間にサイコさが増す。さらに殆どの章
で結末を書かず、ラストに含みを持たせる手法が使われており、その先を想像す
ると薄ら寒くなるのだから、コレは効果抜群。
この作家さん、個人的にはかなりのテクニシャンだと思います、
欲を言うのなら、各物語に関連性を付けて貰えれば楽しかったな、と。
例えば、ある篇の主人公の親子が違う篇の主婦の井戸端会議で自殺してた、と
言うことが解る、みたいなモノ。それがあれば、もう手放しで褒めた気がする。
サイコ系の作品が好きで、さらに短編がお好みな人はぜひ。
僕は取り敢えず、永嶋恵美他作品を読んでます、現在は(^^;)。